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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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7話 領主代行ミルンのお仕事.9


 城塞都市ファンガーデンから、諜報員を殲滅しましょう第二弾を、継続中。

 ファンガーデンに、不法在住をしている精霊達に、他国の諜報員を捕まえて貰いましょう。

 その効果や如何に?


「なーんて、考えてる暇が無いの」


 精霊達にお願いしたのが、お昼前。

 そして今は、お昼過ぎ。

 それなのに、その短い間に、風に運ばれて来る、白目をむいた諜報員達。


「これは……見事に御座るなぁ」


「精霊達の、本気度を感じるの」


 精霊達のやり方は単純。

 風の精霊が、ファンガーデン内部の音を拾い、諜報員を特定して、花の精霊が、特殊な花粉を振り撒き、自白をさせて、石の精霊がそれらを気絶させての、牢屋へさようなら。


「他の精霊達も、力を最大限に発揮して、諜報員を潰して回ってるの」


「影以上の、隠密性で御座る」


「御座るでも敵わない?」


「精霊が本気で気配を消したら、影では対処出来ぬで御座るな。知らぬ間に隣に居て、いつの間にか倒されるので御座る」


 影の御座るでも対処不可能。

 それなら、ファンガーデンに隠れている諜報員なんて、精霊達の敵じゃ無いの。


「どうだい、俺達の働きぶりは?」


 炉の大精霊が来たの。

 凄く鼻高だけど、貴方は何をしてるの?


「炉は何もしないの?」


「俺は物を作る事は出来ても、ああして誰かを捕まえるなんて、出来ないさ」


「大精霊なのに?」


「大精霊だからこそだよ。それこそ、俺が力を使ったら、この都市全体が炉になっちゃうよ」


「……物騒な力なの」


 都市全体が炉に成ると言う事は、その中のモノ全てが、どう成るか分からないの。

 下手をしたら、一瞬で塵になる?

 それとも延々と焼かれる?

 考えたく無いの。


「これでも六属性の大精霊より、遥かに弱いからな。あいつらは加減を知らないから、下手にモノを頼むなよ」


「頼まないの。その大精霊も、ファンガーデンに居たりするの?」


「どいつかは居る筈だけど、姿を見せないな。バカンス気分なんだろうぜ」


 ファンガーデンは、精霊達の避暑地?

 世界樹が有るから、居心地良いのは分かるけど、居るなら挨拶ぐらいはしたいの。

 ついでに、住民票の登録もしたいの。

 不法滞在は許さない。


「この調子なら、他国の諜報員全てを捕らえて、良い感じに御仕置き出来るの」


「ミルン御嬢様……アレは不味いで御座る」


「どうしたの御座る? アレって……」


 御座るが空を見上げていた。

 その目線の先には────ウザ子が風の精霊に、見事に運ばれていた。


『止めるっすよおおおっ! ミルン御嬢様助けてえええ──っ!!』


「他国と自国の見分けが、付いてないの」


「影とあろう者が……馬鹿で御座るっ」


 チラッと炉の大精霊を見てみる。

 サッと目を逸らされたの。

 これを減点とすべきか、それともウザ子を責めるべきなのか、物凄く迷う。


「まっ、まぁ精霊達だって、間違う時ぐらいあるだろうし……許して下さいっ」


「謝るなら許すの。影にも良い訓練だし、あのウザ子は元居た場所に返すの」


「分かった。『シルフィネス、そいつを戻して来い。』これで大丈夫だろ」


『えっ、何処に向かってるすか! ミルン御嬢様ああああああ────』


 さらばウザ子なの。

 こっちには来なくて良いから、元居た場所でしっかりと、お仕事をするの。




 捕まえた諜報員の数、百四人。

 東の各国から来た者が、七十三名。

 連邦国の者が、二十七名。

 北の帝国の者が、三名。

 西のアルカディアスの者が、一名。


 因みに、領主館の地下三階にある、牢屋の部屋数が五十だから、普通に足りないの。


「アルカディアスと、帝国の諜報員には、手紙を持たせて帰って貰うの」


 アルカディアスの国王や、あのシャルネが、諜報員を送って来るとは思えない。間違い無く、シャルネママの仕業なの。

 帝国の諜報員達は、間違い無く戦が終わった事を知らない人達なの。だから、あの皇女宛の手紙を持たせて、そのままさようなら。


 問題は、東の小国と、連邦の奴等諜報員。


 幸い、見た限りでは、和土国の者が居ないので、ぶっちゃけ処分しても構わない。

 連邦国の諜報員達も、同じ扱いなの。


「一部屋に三人詰めれば、牢屋の数も問題無いし、徹底的に情報を吐かせるの」


「拙者も、お手伝いするで御座るよ」


「御座る有難う」


 領主代行のお仕事の隙間時間に、ストレス発散で、お尻叩きを毎日するの。


「これで俺達に、住まう許可をくれるんだよな」


「問題無いの。お手伝い感謝します!」


「定期的に見回る様にするからさ、捕まえたら、また持って来るぞ」


「それは有難いの。次からは報奨金を出します」


 それじゃあ今から、捕まえた諜報員達を牢屋にぶち込んで、一人一人お話を聞こう。


「棍棒を尻にぶっさすのっ」


「……楽しそうで御座るな」


「楽しく無いの。これがミルンの、お仕事です」


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