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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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7話 領主代行ミルンのお仕事.8



 精霊の話をするの。

 精霊達は、基本属性である、火、水、土、風の四属性と、光、闇の二属性が知られてるの。

 その他、以前のミユンの様に、属性を持たない精霊達も居るんだけど、種類が多過ぎて、把握されていないらしいの。

 今のミユンは、大地の精霊。

 地の妖精を統べる、上位の存在。


 精霊は、その種類は多いけど、数は少ない。

 お父さんを、精霊神と例えるなら、その下に属性ごとの大精霊が一人ずつ。その下に精霊達が居て、更に下に妖精達なの。


 妖精達はミルンには見えないけど、このファンガーデンのあちこちに、うじゃうじゃと居る気配がするの。

 この湖近辺にも、それこそ、ゴブの集落並みの数の妖精達が、好き勝手に暮らしている。

 時々、ミルンの尻尾に重みを感じるのは、妖精がぶら下がっているからなの。


 それを踏まえて、問題です。

 このファンガーデンに住まう精霊の数は、どれくらいでしょうか。

 因みに、現在のファンガーデンの人口は、二十五万人弱だと、役場の人が言っていたの。


「答えは……目の前にあるの」


「どうしたで御座るか?」


「現実逃避です。お父さんの真似っこなの」


「……理解は出来るで御座るが、現実から目を逸らすには、まだ若いで御座るよ」


「だって……これは予想外なの」


 屋台の犬人に扮して居た精霊に、他の精霊を集めて欲しいと、お願いした。

 お願いして、まだ数分も経っていない。

 経っていないのに……恐ろしい程の数の精霊達が、ミルンの周りに集まって来るの。


「正直言って怖いの」


「うむ……生きた心地がせぬで御座るな」


 数百体は居るの。

 こんなにも多くの精霊達が、ファンガーデンに住んで居たなんて……不法滞在者ばかりで、取り締まりの多さに、恐怖を感じるの。


「代表者は居る?」


 この数の精霊を纏める存在なんて、お父さん以外だと、大精霊しか居ない筈なの。


「それは俺だぞ」


「屋台の犬人モドキが、代表者?」


「モドキって……俺は、炉の大精霊。人種からしたら、無の大精霊の一体になるのか」


「炉? 火じゃ無くて?」


「火は四属性だろ。分かり易く言うと、火の大精霊の変異種みたいなもんだ」


 だから屋台で、工芸品を売ってるの?

 まさかその工芸品……大精霊が自ら作った、変な効果付きの工芸品?


「御座る、そのお店の物を没収するの」


「御意に御座る」


「何すんだよ!?」


 後でその工芸品を調べるの。

 変な効果が付いていたら、即倉庫行きです。


「不法就労は犯罪なの。ここに居る精霊達も、不法滞在者なの」


「っ、俺達に敵対する気か?」


「ここを作ったのは、お父さんであり、獣族達なの。後から勝手に来て、ルールを守らず住んでいるのは、貴方達……」


「ぐっ……でも世界樹が……」


「世界樹を復活させたのは、お父さんなの。その意味は分かる?」


「うぅ……」


 完全論破完了なの。

 ミユンだって、しっかり住民票を持ってるし、それを怠った精霊達が悪いの。


「と言う事で相談なの。このファンガーデンに紛れ込んだ、他国の諜報員を捕まえたら、目出たく精霊達は、"住民権"を得るの」


『住民権っ……今あの犬人、住民権をくれるって言ったぞ!』

『それが有れば、この場所に留まれるのか?』

『精霊神様の近くで暮らせる?』

『諜報員ってなあに?』

『ここの住民じゃ無い、怪しい奴等だ』


 黙って聞いていた精霊達が、ザワザワとし始めて、良い感じなの。


「……他国の間者を全員捕まえたら、俺達全員に、住まう許可をくれるのか?」


「この都市に被害を出さず、捕まえれる?」


「舐めるなよ。居心地の良いこの場所に、被害なんて出す訳無いだろ」


 少し煽り過ぎた?

 そう言えば、精霊のミユン一人で、和土国の兵士達を軽くあしらっていたの。

 その精霊が、凡そ数百体。

 その気になれば国なんて、簡単に滅ぼす事が出来るであろう、異常な戦力。


「ファンガーデンの、隠し戦力に出来るの」


「……陛下には言えぬで御座る。絶対に、見たいとか言い出して、来るで御座ろうて」


「女王に言ったら、御座るの事嫌いになるの」


「絶対に言わぬで御座る!!」


 これで口止めも出来たの。

 それじゃあ、この過剰戦力を使って、ファンガーデン内に潜む諜報員を、一人も残さず殲滅するの。


「それじゃあ炉の精霊さん。任せても良い?」


「分かった。直ぐ終わらせるから、住民権だけじゃ無くて、屋台開く許可もくれよ」


「構わないの。没収した品物も、変な効果が付いていなければ、ちゃんと返します」


「……約束だからな」


「約束じゃ無いの。契約なの」


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