表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

402/414

7話 領主代行ミルンのお仕事.3



「それではミルン御嬢様。拙者はあの親子の護衛途中故、また後で、御挨拶に行くで御座る」


「分かったの。御座る、また後で」


 むふふっ、御座るが来たの。

 少し前にウザ子が休暇だったから、いつかは来ると思っていたけど、別の影じゃなくてよかったの。

 御座るは話し易い影で、それ以外の影は、一癖も二癖もある影だから、御座る以外はお断りしたいの。


「今は観察しなきゃ……」


 あそこの男女が、何故怪しいか。

 簡単な話、小綺麗過ぎるの。

 新品のお洋服を、ワザと汚してるし。

 このファンガーデンに、移住を希望する者達は、何某らの理由で村を追われたり、口減しに追放された者や、戦から逃れて来た難民達が大半を占めるの。

 稀に、ただ住みたいからと言う理由で、ここまで来る人も居るけど、あの男女は違うの。

 話してる内容が、丸聞こえだから。


『北の戦から逃れる駄目に、ここ迄来たんだ』

『どうか私達に、ここに住まう許可を下さい』


 北から来たにしては、痩せて無いの。

 戦に行った本人としては、あの男女は北の人間では無く、東の国のどれかか、南の連邦からのお客様だと、判断します。


『あーっ、お二人は御夫婦ですか?』


『そうだ』

『見ての通り、夫婦よ』


『ふぅん……何故北からわざわざここに? 他にも、村や町は有ったでしょう』


『ここなら、実力に見合った仕事が有るって言う、噂を聞いたんだ』

『迫害の無い、良い都市だと言ってましたわ』


 流石役場の人間なの。

 しっかり内情を深掘りして、見極めてる。


『ここに来るまでに、どの村や町に泊まりましたか? 王都? ペルシコ村? ルネサ?』


『色んな町や村を通って来たからな……トルリカ村では、良くして貰ったな』

『そうね。宿屋の朝食なんて、美味しかったわ』


 ミルンの知らない村の名前なの。

 いつか色々見て回りたい。


『トルリカ村に行ったんですね。そこは僕の故郷で、宿屋も評判なんですよ。店主のバルドンは元気でしたか?』


『バルドン?……あっああ、あのゴツい爺さんか。元気だったよ』

『そうね、娘さんもお元気でしたわ』


『お元気でしたか。それは良かった……それでは、少しお待ち下さいね』


 受付の人が離れたの。

 上役の許可を、貰うのかな?


『ボソッ(ミルン御嬢様、他国の諜報員です。至急捕縛致しますので、御助力を)』


 ミルンのお耳に聞こえる程度の小声!?

 しっかり役場の人達にバレてたの。

 流石、ファンガーデンの役場の人……ミルンの変装を見破るなんて、お給金アップなの。


 片手を上にあげて、ハンドサインっ!!

 お父さん曰く、このハンドサインをした時は、必ず叫ばないといけないの。



「うぃいいいいいい────っ!!」



 そうしたら、役場に居る皆んなの視線が、一斉にミルンに集まるから、その瞬間を狙って確保されます。

 誰にって?

 受付カウンターに潜んでいる、肉食系オーガの、お姉さんになの。


『オトナシクシテクダサイネェ』

『やめっもがもがっ!?』

『なんっ、むうううううう──っ!?』


 他の人達には気付かれず、カウンターに引き摺り込まれて、捕獲完了なの。

 あとは、何事もなかった様に椅子に座って、受付の順番を待つ、ただの女の子に戻るの。




『はい、次の方どうぞーっ』


 ミルンの番が来たの。

 狙ったかの様に、さっきの受付さんなの。


「んしょっ……バレてた?」


「そりゃあバレますよ。ミルン様の尻尾の形を、皆んな覚えてますから」


「尻尾の形!? 恐ろしいの……」


「ここの者達は全員、ミルン御嬢様ファンクラブの面々ですからね。耳の形、尻尾の形、体型から体臭まで、一通り網羅しております」


 それはもう、ストーカーを遥かに超えた、異常者の集まりだと、ミルンは思うの。

 お給金アップは無しなの。

 だって怖いから。


「さっきの人達は?」


「裏で拘束してます。男の方は……オーガが好き放題しておりますが」


「殺してなければ良いの」


 交換条件で、人を喰わない、襲わない限り、それ以外は好きにして良いの。

 死ぬ思いは味わうけども、死にはしない。


「オーガの行為が終わったら、ミルンが持って帰るけど、問題無い?」


「問題御座いません。持ち帰り用の台車も御座いますし、オーガに運んで貰いましょうか?」


「それが良いの。言葉が分かるオーガだし、館でご飯を振る舞うの」


「それは羨ましいですね。ちゃんと返して下さいよ。彼女は役場の人気者ですからね」


「勿論なの」


 この役場の、護衛兼アイドルなの。

 ボンキュッボンの身体に、肌の色は違うけど、物凄く美人なの。

 人種、獣族問わず、あのオーガを狙っている男が沢山居るけど、枯れ果てる未来しか見えないから、皆んな尻込みしているの。


「コカトリスより臆病者」


「……察しないで下さいよ」


「当たって砕けるのっ」


「それ、男として……終わりますからね」


 裏から聞こえてた音が、止まったの。

 スッキリ顔で、オーガが歩いてくるの。

 お肌が艶々してる。


「フゥ……ゴチソウサマデジタ」


「お粗末さまなの。それじゃあ、二人の引き渡しをお願いするの」


「畏まりました。直ぐに準備致します」


 館に帰ったら、あの汚部屋に入れるの。

 しっかり吐かせて、対策しなきゃ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ