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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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7話 領主代行ミルンのお仕事.2



「お尻を叩くとおっ!」

 バチィンッ────『ぎゃあああっ!?』


「二つに割れてえっ!」

 バチィンッ────『のおおおおおおっ!?』


「真っ赤なレモモがあっ!」

 バチィンッ────『ああああああっ!?』


「ジューシーお肉ぅっ!」

 バチィンッ────『おおおおおおっ!?』


 腕が疲れて来たの。

 諜報員さんも、中々しぶとく耐えている。

 何をしてるのかって?

 拷問じゃ無いの。

 お父さん曰く、拷問は、被人道的だから、こうして優しく、背後関係を聞いてます。

 オークの柔軟な皮を、世界樹の枝に何重にも巻いた、治癒機能付きの棍棒なの。


「しなり具合も抜群で、鞭みたいな良い音がでるの。職人さん有難う」


 ギロンヌさんの作品。

 商業地区で鍛冶屋を営む、ファンガーデン随一の変態職人さんで、自分の身体を使って、日々研鑽に励んでるの。


「此奴らもしぶといのぅ。早う吐かねば、お尻が四つに割れてしまうのぢゃ」


「昨日の貴族が連れて来た?」


「どうぢゃろうの。東の小国からか、他の領地からか……いっその事、薬を飲ませるかや?」


「それは駄目なの。ゲロッぱお薬は、お父さんが禁止してるから、使えないの」


 ファンガーデンの領主館には、お父さんが考案した、秘密部屋が幾つも有る。

 この聴取部屋もその一つ。

 地下三階に、牢屋と尋問室。

 地下二階に、聴取部屋と軟禁部屋。

 地下一階に、実験室。

 他にも色々有るけども、全容を知るのは、ドゥシャとお父さんだけなの。


 何でこんな事をしているのか。

 話は、昨日の昼過ぎまで遡るの。




「貴族達、ようやく帰りましたね」


「本当なの。仕事の邪魔だから、このまま大人しく帰って欲しい」


「影さんに、見張りをして貰いますか?」


「影……ウザ子が来たら嫌なので、見張りは不要なの。必要になったら呼びます」


 ウザ子は、知らないうちに消えていたから、休暇が終わって、お仕事に戻ってる筈。

 御座るなら、ウェルカムなの。


 貴族の対応が終わったから、次は、都市内部の巡回業務兼気分転換です。

 こうして見て回るのも、領主代行の立派なお仕事の一つなの。アルテラが、不正な宗教勧誘をしてないかも、随時チェックなの。


「何で私の所ばかり、監査にくるのよ」


「ぼったくりのお店だからなの」


「これは正当なお布施なのよ。いくら貴女と言えども、手が出せないでしょ?」


「ファンガーデンでは、宗教の人でも税を納めて貰うの。収支報告書に記載の無い場合、課徴金を概算で算出して、請求しちゃうよ?」


 その場合の請求額は、金貨千枚なの。

 もし払わなかったら、アルテラ教ファンガーデン支部は、解体します。


「……本当に厄介ね」


「それはお互い様なの。るーるに則って、しっかりお金を収めるの」


「減税の処置は無いのかしら?」


「役場に申請書を、提出して下さいな」


「……分かったわよ」


 役場に減税申請書を、提出する女神なの。

 本当に住民になってるの。

 最早ただのおばさんなの。


「今……何か変な事、言わなかったかしら?」


「言ってないの。思っただけです」


 アルテラの額がピクピクしてたけど、気にせず巡回を続けるの。

 お次は役場の状況確認。

 しっかりお仕事をしているのか、こうして抜き打ちチェックをしないと、組織内部から腐って行くの。


 頭巾でお耳を隠して、マスクをして、少し汚い服を着込めば、移住希望者の一人なの。

 

 順番札を取って、待合席に座るの。

 そして、じっくりと観察する。

 特に注視すべきは、移住希望者の窓口。


 ファンガーデンでは、仮住民で数年過ごさなければ、正式な住民になれない。

 逆を言えば、仮住民になるだけならば、そこまで難しくは無いと言う事。

 各門の出入り口で、あの石に触れて、犯罪者で無い事は確認されるから、後は申請をして、面談で問題が無ければ、仮住民となる。


「ボソッ(諜報員が紛れ込むとしたら、ここなの)」


「ボソッ(成程で御座るな。ならば、あの者達など、怪しいで御座るよ)」


「御座るなの!?」


「ボソッ(静かにで御座るよ)」


 いつの間にか御座るが居たの。

 臭いも無かったし、びっくりした。


「何で御座る居る?」


「あの親子の護衛に御座る。魔神様より、連れて行く様お願いされましてな」


 あの親子?

 目に包帯をした、犬人族なの。

 御胸が大きくて、スタイル抜群で、間違い無くお父さんの好みなの。

 あとは、男の子?


「新しい住民?」


「左様で御座る。何やら、村に取り残されておった様で。ここが終わったら、リティナ殿の所で治療で御座るよ」


「ふーん。お父さんは帰って来たら、脛をひたすら殴打なの。下心が、透けて見えるの」


「それで、ミルン御嬢様。あの者達は、放置したままでも良いので御座るか?」


 そうだ、今は怪しい者の調査なの。


「受付中の男女……」


 何処にでも居そうな、仲の良い二人組。

 小綺麗な服に、安物の靴を履き、擦れた鞄を持っていて、パッと見た感じは、普通の人。


「御座るの言う通り、怪しさ満点なの」


「そうで御座ろう。あの感じですと、何処ぞの諜報員やも、知れませぬな」



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