2話 異世界のお約束
さて、俺こと小々波 流は、気付いたら森の中、良く分からない状況の中で、襲い来る豚野郎(漢)の魔の手から華麗に逃れ、川を下った先に居た犬耳っ子のミルンを見つけ自分の今居る場所を確認、今後どの様に動くかを考える為の拠点を手にするのであった。
2話 異世界のお約束
「流さん、流さんどうしたのですか?」
「んっ? 何だミルン?」
「いえ、急に上をみあげてじっとしてるので」
ミルンは何か残念な人を見る様な目で見つめてくるぞ残念な人は居ないよな?
「そう言えば飯食ってないなぁと思っててな」
夜食にするため菓子パンを買っていたのだがリュックはどこに──
「おっリュックも拾って来てくれてたのか」
──枕元にちゃんとありました。
「はい! 流さんを川からひっぱっていく時にそのリュック? は流さんの首に引っかかっていましたので、そのまま持って来ました」
首に引っかかっていたのかよ。なんだ、尻半分だして首にリュックって絶対自分では見たくないな。俺ならガン無視して放流するぞ。
「ありがとうな」
「いえ、お気になさらず」
うん、ミルンは凄く優しい犬耳っ子だ。
クキュルゥウウ
どこからか泣き声? 音がする?
「何の音だ?」
ボロ屋の中で響いていたのだが音が鳴る様な物なんて無いのに。辺りを見ても顔を真っ赤にしたミルンしか居ない。
「すみません流さん、川でお魚が獲れなかったので少し待っていて下さい! 森で何か食べ物獲って来ますのでっ」
ミルンのお腹の音だった。
まぁ分かってたけども。
顔を真っ赤にしたミルンが立ち上がり出て行こうとするので、リュックの中を漁り菓子パンを出した。
「あーちょっと待てミルンさんや。すまん、俺の所為でご飯獲る時間無かったんだな」
潰れた濡れパンになっていたが。
「ミルン、何か火を起こせる道具とかないか? あれば身体もだがこの濡れパンを温めてマシパンにできるのだけど?」
「パンですか!?」
凄いミルンが食いついて来たぞ。
「パンは村でも作っているらしいので時々遠くから良い匂いが風に乗って来るので!!」
めっちゃ尻尾が揺れている…。
あっ、でも直ぐにしゅんとなった。
「すみません流さん、火を起こせる道具が無いんです。獣族は魔法も使えないので火を出すことも…出来ません」
下を向いてしょんぼりしているミルン可愛いなと頭を撫でそうになる手を抑え、今聞いた内容を思い返す。
火起こしの道具が無い。
獣族は魔法が使えないから火が出せない。
魔法…魔法?
「魔法? あるのこの世界?」
ちょっと思い出せー何か忘れてないか?
流くんのちょっと悪い頭(自己分析済み)をフル回転させてー結構大事な事ーあーそうだよ! レベル! レベルアップって今じゃ無いタイミングでやたら煽ってきたあのアナウンス!
「なぁ、ミルンはステータスってー分かるか?」
「はい、基本的には他人が見る事はできないそうですが産まれた時から授かる神様からのプレゼントだそうですよ。流さん今までご自分のを見た事ないのですか?」
ミルンが不思議そうな顔で見て来るけどマジか! あるのかステータス。
良し、アレだな、最早異世界あるあるのステキパラメータが遂に俺にも見れるという事だな。
あぁ…この時、この瞬間を俺は一生忘れない。
腹減った…でも今はっ!!
「さあ来い! 俺の! ステータス!」
ビシッとポーズを決め、薄目で前をみる。
おぉっめっちゃ見える!見えるぞ俺のステータス!へーほーうん? うん、なぜに?
「村人基準より下ってどゆこと?」
小々波 流 35歳
レベル 3→4UP(楽しい経験値効果)
能力
STA 11 INT 25
VIT 11→12 AGI 60→65
DEX 54→56
(村人男性平均100とした値)
スキル
・身体強化(これで貴方もマッスルバディに)
・楽しい経験値
・空間収納(大人の本の隠し場所として)
・基本魔法(一人暮らしのお供に)
・ー 判別不能 ー
称号
・逃げ惑うニート
・崖からダイブするニート
・ケモナー(仮免許)
「あの、流さん」
「何だミルン?」
「別に口にださなくても見れるハズなんですけど…」
「…えっ?」
口にださずに…見れるの?
「先に言って欲しかった…かな」
犬耳幼女の目の前で、流に新たな黒歴史の1ページが追加された。