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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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6話 二人っきりの旅路.5



「と言う事が、昨日あったんだ」


「成程、だん…流様の、側室候補が増えたと……」


 昨日起きた出来事を、朝食がてら、ドゥシャさんに説明した。説明して直ぐに、不思議な事を言われたけど、何故に側室候補?


「領民になりませんかって言う、誘いなんだけど、何で側室の話に?」


「だん…流様。良くお考えになって下さい。その女性は、目が見えないお方ですね?」


「そうだな」


「その様な方を雇いたい。しかも、子供と一緒に住めると言う好条件」


「好条件と言うか、普通だろ?」


「私がその女性ならば、だん…流様のお言葉を、婚姻を結べと迫って来ているモノだと、邪推致します」


 それは邪推し過ぎだって。

 魅力的なケモ耳美女ではあったが、権力を振りかざして、子持ちの女性に手を出す程、俺は馬鹿じゃ無い。


「万が一、マリルさんが邪推してたら、ちゃんと説明するよ。誤解されたく無いからな」

 

「その方が宜しいかと。その女性が同意をした時点で、だん…流様に少なからず、好意を抱いている可能性が御座いますので」


「会って間も無い奴に好意? 無い無い」


「獣族ですので、有り得る話かと」


 直感や感覚で動くからか?

 ミルンを見る限り、確かに直感や感覚、その場のノリで動いてる節はあるけど、そこまで酷く無いだろ。


「兎に角だ、もしマリルさんがオーケー出したら、彼女らの護衛に、影さん呼んで欲しいんだけど、お願い出来るかな」


「……畏まりました。手の空いてる影を一人、ファンガーデン迄の護衛として、手配致します」


「有難う。流石に目の不自由な人を、ここに放置する訳にはいかんし、連邦に連れて行くなんて論外だからな」


「旅行に連れて行くと申されましたら、私はお城に帰っておりました」 


 何その、実家に帰らせて頂きます的な感じ。

 そんな事されたら、ミルンが間違い無く怒り出して、俺も家に帰れなくなるからね。


「この旅は、二人で行く約束してるからな。道中での何やかんやは、許して下さい」


「だん…流様の事は、僅かながら理解しておりますので、ご安心下さい」


 何をどう安心出来るのかな?

 

 御飯を食べて食休み後、村の出入口付近に馬車を止め、あの二人を待つ。

 来るのならしっかりと保護するし、来ないのなら、それがあの親子の決めた事なのだから、仕方が無いだろう。


 そんな事を思いつつも、体感で一時間近く待ってるのだが、まだ来ない。


「ファンガーデンに来るのなら、自分達を見捨てた仲間も居る訳だし……どうなのかね」


「だん…流様、そろそろ出発しませんと……」


「だよなぁ。流石に昼迄待つ訳にはいかないし、無理だったか」


 こんな時もあるだろう。

 会ったばかりの、見ず知らずの人間なのだから、信じれる訳無いか。

 馬車の御者席、ドゥシャさんの隣に座る。


「……世の中、そう都合良く行く訳ないか」


「そう言うモノで御座います」


 ゆっくりと、馬車が進み始めた。


 数ヶ月後、またこの村に来た時にでも、ファンガーデンに誘うべきだろうか。

 そう思っていたら、知覚に反応が有った。


『おーいっ! おっさーん!』


「ドゥシャさんっ、止めてくれ!」


「畏まりました」


 目が見えない事を、考慮すべきだったな。

 後ろを見ると、マルルがゆっくり、マリルを支えながら、歩いて来ていた。

 しかもその側に、何故か筋肉ハム耳まで居るのは、どう言う事だ?




「……何で筋肉ハム耳も居るんだ。あんた、あの宿の店主なんだろ?」


「あっしはただの雇われでさぁ。朝方、マリルとマルルが村を出るって言ったんで、それならあっしもと……」


 この筋肉ハム耳が居るなら、影さん呼ばなくても、護衛出来るんじゃね?

 いや駄目か……戦闘出来るか分からんし。


「流様。是非私達親子を、連れて行って下さい」

「おっさん……お願いします!」


「分かったと言いたいが、生憎と旅の途中だからな。護衛を付けるから、隣の領地まで行って、役場と言う場所でコレを渡してくれ」


「これは……旅には、同行出来ませのね」


「すまんな。マリルには、子供達の面倒を見て貰いたい。勿論、その目が治ってからだがな」


「お母さん目っ、治るのか!?」


「当たり前だ。それ前提で、雇うんだからな」


 マリルのお仕事は、影院長のサポート。

 孤児院から、保育園にグレードアップさせる為の、下準備だな。


「ふむ……魔神様。その御三方を護衛すれば、良いので御座るな」


 いつの間にか御座るが居たよ。

 ドゥシャさんが呼んだんだろうけど、しれっと現れるの止めてね?


「ああ。頼むよ……もしかして休暇中だった?」


「左様。ミルン御嬢様に、会いに行く途中で御座った故、丁度良い口実に御座る」


 なら気兼ね無く頼めるな。


「と言う訳だから、マリルとマルル二人共、この人について行ってくれ」


「流様……お帰りを、お待ちしております」

「待ってるからな」


「ああ。その頃には、目も治ってるだろうし、元気な姿を楽しみにしてるよ」


 何か色々と、スッキリしたな。

 これなら気兼ね無く、ドゥシャさんとの旅行も楽しめそうだ。


「ではだん…流様、出発致します」


 パシィッ────『ブルゥ、ブルゥ』

 

 ゆっくりと馬車が進む中、マリルとマルルは、じっとこっちを見ていた。

 何だろ……『帰りを待つ』って言ってたけど、そう言う意味じゃ無いよね?


「だん…流様」


「んっ? どうしたのドゥシャさん」


「側室の二人目は、子持ちで御座いますね」


「……何で確定したかの様に言うの?」


「帰ったら、分かる事に御座います」


 ファンガーデンに帰ったら分かる?

 物凄く、嫌な予感しか無い。

 違うよね?

 普通にケモ耳を、助けただけだよね?



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