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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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6話 二人っきりの旅路.3



「うぷっ……量多過ぎだろ、あの店」


 夕飯を食べて直ぐ、宿へと戻り、鍵を閉めてベッドへ寝転んだ。

 しっかり施錠をしておかないと、ドゥシャさんが突撃して来そうで怖いからな。


「ミルンの好物なだけあって、美味いのは良いんだけど、効果あり過ぎてヤバい……」


 食べ終わって直ぐに、宿へと戻った理由が、あの料理の効果の所為だ。

 何の効果か分からない?

 察して下さい。

 一服盛られた気分だぞ。


「ドゥシャさんは……自分の部屋だよな」


 もし動きが有れば、窓からこっそり抜け出して、村の外で寝るしか無い。

 簡易小屋があるから、問題無しだ。


「もう寝るか」


 このまま起きてたら、気が滅入りそうだ。

 一晩もすれば、この効果も治るだろ。


「……いや寝れんてっ!?」


 あんな精力剤の塊食べて、寝れる訳が無い。

 こんな時は、村を散策して、少しでも体を疲れさせなきゃな。


 ギィィィッ────「ついでに、酒でも呑むか」


 ドゥシャさんを誘うかどうかだが、ここは俺一人で村を見て回ろう。

 だって、今のドゥシャさん怖いもん。


 そんな感じで、村を散策中。

 夜中にも関わらず、結構な数の冒険者達が出歩いており、なんとも賑やかだ。


「……人ばっかだな」


 老若男女問わず、人ばっかり。

 ケモ耳の姿が一切見えず、何と言うか、少しだけ違和感を感じる。

 この村に来てから、ハム耳筋肉しか見ていない。


「地域差か? 南東は俺の領地じゃ無いし、何とも判断がつかないな」


 そんな事を考えつつも、周りを見ながら歩いていたら、誰かにぶつかった。

 正確には、脚に軽くぶつかって来た。


「痛っ、前見て歩けよ!」


「……ケモ耳だ」


「ああ!? 僕の顔見て馬鹿にしてんのか!」


 小さいケモ耳男子発見。

 見た感じ……ミルンと同い年くらいか?

 ケモ耳は犬族っぽいけど、ミルンと違って垂れてない、ピンっと立った耳だな。


「馬鹿にして無いぞ? 良いケモ耳だと思ってな。少し撫でても良いか?」


「ひぃっ!? 変態だっ、このおっさん変態だああああああ──っ!!」


 撫でようとしたら、逃げられた。

 しかも変態って……そういや、ミルンと最初に会った時も、撫でまくって威嚇されたな。


「今のケモ耳……」


 ちょっと後を付けてみるか。

 知覚使って、爆速で走ってるのは……これがさっきのケモ耳だな。

 村の外れに向かってる?

 なーんかこの村、きな臭くね。




 と言う事で、やって来ました村の外れ。

 村とは違って、小さなボロ屋ばかりで、懐かしのミルンの家を思い出すなぁ。


「ここに住んでるのは……二人か」


 さっきの犬人男子と、一体誰なのか。


「出て来たらどうだ。隠れても無駄だぞ」


 獣族は鼻が良いから、俺が追って来てるのを察知して、待ち伏せしてたんだろうけど、そんなん無意味だって。

 左前方の草村に、犬耳男子が隠れているの、知覚でハッキリ分かるんだよね。


 ガサッ────「……何で追って来た」


 何でケモ耳男子を追ったのか。

 ケモ耳男子が俺にぶつかった際、あの一瞬で、ダミーの財布を盗んだからだ

 アトゥナ並みの、手癖の悪さだよね。


「あの財布には、石貨一枚しか入れてないぞ」


「っ、僕を捕まえに来たのか!」


「捕まえても良いんだけど……何でこの場所に、二人しか居ないんだ?」


「……お前っ、何でそれを知ってる!!」


 聞き方間違ったな。

 四足体勢になってるって事は、本気モード。俺を殺る気満々って事だからな。


「分かるもんは仕方が無い。向かって来るのは良いんだが、お前に俺は倒せんぞ?」


「やってみなきゃ、分からないだろ!」


「来る気か……面倒だなぁ」


 威圧で黙らせようか。

 そう思った時、もう一人の気配が、ゆっくりと近付いて来た。


「……マルル、何をしているの」


「お母さんっ、変態が居るから来ちゃ駄目だ!」


「誰が変態だ。あぁ……成程なぁ」


 犬耳男子マルルが、お母さんと呼んだ獣族。

 確かに、耳がピンっと立ってて、尻尾の形もそっくりの親子だな。

 でも、これは中々に酷い。

 ボロ着のあちこちが裂け、白い肌に残る、生々しい傷痕が見えており、何よりもその、目を覆う布切れ。


「マルル、何をしているの」


「お母さんは離れてて!」


 これは、見逃す事は出来ないな。

 見逃せば、絶対後悔する事になる。


「貴女が、マルル君のお母様ですか?」


「はい、そうですが……貴方は?」


「失礼しました。俺は流と言います。そちらのマルル君が、俺の財布を拾って、届けてくれたので、その御礼に参りました」


「なっ、お前っ!?」


「マルルがそんな事を。人様の物を盗んでばかり居たこの子が……うぅっ、ようやく、分かってくれたのね」


 お母さん泣いちゃったよ。

 まぁ……我が子が盗みばっかりしてたら、そりゃ悲しくもなるわな。


「お前っ、どう言うつもりだ……」


「お前じゃ無くて流だ。少しだけ話を、聞かせて欲しいだけだよ。良かったら、家に案内してくれないか。御礼を渡そう」


「マルル、お客様を案内しなさい」


「お母っ……こっちだ……」


 さてさて、事情を聞きましょうかね。


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