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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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6話 二人っきりの旅路.1



 ミルン、ミユン、黒姫、お元気ですか?

 お父さんは今、ドゥシャさんと楽しく、連邦国家目指して、旅をしております。


 ミルン……ちゃんとアトゥナの言う事を聞いて、無茶な事してないか。

 ミユン……村長の所で、頑張っているか。

 黒姫……酒呑みまくって、腹壊してないか。

 

 ドゥシャさんと旅をして、お前達がどれ程大切な存在なのかを、再認識したよ。

 先ず謝るね、御免なさい。

 冒頭で説明した、楽しく旅をしていますって言うの、嘘なんだ。

 

 よく考えて欲しい。

 お父さん今まで、大人の女性と、旅をした事なんて、無いんだよ。


 そりゃあ、出発して直ぐは、良かったよ。

 連邦国家って、どんな所だろうとか、ゴブリン肉を食べるのって、本当なのかなとか、考える事があったからさ。

 でもね、一週間も話をしているとね、話す内容、無くなっちゃった。

 元引き籠りのニートが、美女と二人っきりで旅をするの、ハードル高過ぎだよね。

 ヘタレって?

 その通りですが、何か?


「だん…流様、また考え事ですか?」


「いんや、モノローグに浸ってただけ」


「モノ……?」


「すまん、今の言葉は忘れてくれ」


 この様に、通じる言葉と、通じない言葉があって、会話が噛み合わないんだ。

 因みにドゥシャさんには、この旅の間だけでも良いので、旦那様呼びを禁止してます。

 何でかって?

 遊びで行くのに、旦那様呼びのままだと、堅苦しくて、疲れるだろ。


「だん…流様。疲れているのでしたら、まだ早いですが、馬車を止めましょうか」


「大丈夫だ。ドゥシャさんこそ、ずっと御者してて疲れてないか? 一本道だし、手綱持つだけなら出来るぞ」


「問題御座いません。一月二月程度で御座いましたら、寝ずに働く事が出来ますので」


「お願いだから、毎日寝て下さい」


 横目で、ドゥシャさんの顔を見る。

 確かに、顔色は良く、肌荒れも無い。

 艶やかな長い黒髪を、三つ編みにして、胸元まで垂らしており、自然と視線が、その胸元へと誘導されてしまう。

 服装は勿論、メイド服では無い。

 薄手のシャツの上から、御山を隠し切れてない胸当てを付け、動き易い様に、ズボンを履いている。


「ボソッ(地味にエロスだな)」


「だん…流様、ドゥシャは耳が良う御座います」


「……聞かなかった事に!!」


「検討致します」


 ドゥシャさんや、一体何を検討するんだい。

 俺の失言を、忘れて下さい。


「このまま進むと、夜迄には村に着きますが、そこで宿を取りますか?」


「宿なぁ……簡易小屋の方が寝心地良いけど、試しに泊まってみるか」


「その方が宜しいかと。あのハーピィの羽毛布団に慣れてしまうと、恐ろしい事態になりそうですので」


「あの布団、一瞬で爆睡出来るからな」


 セーフアースの特産品?

 ハーピィ達の抜けた羽根を、お湯で洗って乾かして、上質な布袋の中に詰め込んだら、超高級羽毛布団の完成だ。

 コカトリスの羽毛布団より遥かに軽く、余計な熱を溜め込まず、一定の温度をキープする。


「偶に布団を変えないと、暗部の仕事が来た場合、辛くなりますので」


「そりゃそうか。そう言えば、セーフアースの向こうに渡った影さんから、何か報告来てる?」


「音沙汰無しで御座います。黒姫様も、送り届けただけで、それ以降呼び出しにも、応じませんので」


「ふーん。影さんの事だから、大丈夫だとは思うけど……少し心配だな」


 心配と言うか、不安だな。

 向こうに渡った影さんが、変な事してなきゃ良いんだけどね。


「にしても、知覚範囲内には魔物居るのに、こっち寄って来ないな」


「この付近であれば、穏やかな魔物ばかりですので、襲って来るのは稀で御座います」


「そうなの? どんな魔物なんだ?」


「耳の長い、臆病な魔物で御座います」


 耳の長い、臆病な魔物?

 小型の魔物なのか。


「だん…流様。丁度この道の先に、一匹だけ寝ておりますね」


「臆病なのに一匹だけって……成程、兎か」


 小さな兎が、道の先で目を閉じて居る。

 アレが魔物だなんて、にわかには信じられないな。小さなモフモフ動物じゃん。


 そう思っていた。

 

 皆んなは、遠近感って、分かるよね。

 近くのモノは大きく、遠いモノは小さく見える、ごくごく当たり前の感覚だ。

 

 馬車が進む度に、兎がデカくなって行く。

 それはもう見事な程に、デカい。

 どれ程のデカさだって?

 馬車並みだ。

 超巨大兎だ。


「……ドゥシャさん。アイツの横、通っても大丈夫なのか?」


「大丈夫で御座います。アレは、ゴブリンイーター。ゴブリン以外を襲わず、臆病で温厚な魔物で御座います」


「ミルンやミユンが見たら、普通に飼うとか、言い出しそうだな」


「番兎として、飼育している場所も御座います」


「番兎……」


 馬車をゆっくり進ませながら、巨大兎の隣を通る際、一瞬だけ、その赤い瞳と目が合ったけど、何事も無く通過出来た。


「……流石異世界。まだまだ知ら無い事が、沢山有るんだなぁ」


「番兎を飼われますか?」


「ファンガーデンには、必要無い」


 ケモ耳達が、山程居るからね。



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