間話 その頃ミユンは.2
野盗さん、いらっしゃいなの。
五人程、ゆっくりと歩いて来るけど、皆んなげっそり痩せてるの。
この見た目だと、帝国からの脱走兵?
若しくは、牢獄から脱出した犯罪者?
どちらにしても、逃さないの。
『お頭……あそこに餓鬼が居やすぜ』
『周りに、親が居ないか確認しろ。こんな場所に餓鬼一人で、居る訳無いからな』
『何だ? やけに土が、ふかふかしてんな』
『餓鬼でも売れば、良い金になりやす』
『見た事無い毛色してんな……緑?』
お話し声聞こえてるの。
せっかく耕した土の上を、何も考えずに突っ切って来る……少しお仕置きしなきゃ。
「五人も要らないから、二人だけ残すの」
こっちもゆっくり、歩いて行きます。
あっ、頭って呼ばれてる人と、目が合ったの。あの頭は、そこそこ強いの。
ファンガーデン兵の、予備隊並みなの。
ザッザッ────「どれにしようかなぁ」
ザッザッ────『テメェら、武器を構えろ』
ザッザッ────『えっ? 頭?』
ザッザッ────「頭は残すとして」
ザッ────『散開っ!!』
ザッ────「あと一人は、誰にしようかな」
やっぱり脱走兵なの。
頭の一言で、他の四人がミユンを囲む様に走り出して、連携の取れた動きなの。
「お嬢ちゃん……お前何者だ?」
「ミユンです! 元兵士さんが、こんな所まで来て、何のご用?」
「用も何も、食い物を探してるだけさ」
「あそこの拠点に、少しだけ有るけど、村長と私のだから、あげないよ?」
こうして、頭がミユンの気を引いて、後ろに回った仲間が、襲って来る算段なの。
お馬鹿さん。
ミユンが耕した土の上に、足を付けているのだから、気付かない訳が無いの。
「後ろの人は、要らないの」
ボゴッ────『えっ? ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──』
一人地中にさようなら。
しっかりと圧殺して、プチっと丸絞りです。
『何だ今のっ!?』
『新手の魔物かっ、気を付けろ!』
『ダグスっ!?』
「慌てるなっ! 地面に気を付けろ!」
流石頭なの、良く見てる。
でも、気を付けるだけじゃぁ、ミユンの攻撃は防げないの。
あとお二人、しっかりと養分行きです。
「今のは……お嬢ちゃんの仕業か?」
「そうなの。あと二人程、養分にするの」
「言葉を介する……魔物か」
「魔物と一緒にするなんて、失礼なの」
両サイドから、二人が同時に迫って来た。
お馬鹿さんなの。
同時に来ても、無意味なのに。
穴を避けても、足を根っこに掴まれて、地中でしっかり丸絞りなの。
ボゴッ────『なっ! お頭ああああああああぁぁぁぁぁぁ──」
ボゴッ────『ひぃっ、離れろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ──』
これで残るは二人なの。
頭と、まだ若い女盗賊なの。
「頭っ、皆んなが……」
「動くなよナズィ……何故俺達に、何もしない」
「する筈無いの。二人は残す予定だったから、死にたく無いなら、こっちに来るの」
若い女とこの頭なら、筋肉馬鹿村長の、良い手足になるの。
しっかり調教して、上下関係を叩き込むの。
逃げ出そうとすれば、養分行きです。
そう思いながら、拠点へと歩いて行く。
後ろの女が、手に持つナイフを構えたけど、頭がそれを抑えてるの。
良い判断です。
向かって来たら、手脚を折ってたの。
拠点の中へと、二人を誘い込み、座らせてから、食事を振る舞う。
村長が全く手を付けない、オークの睾丸焼きと、ミノさんの逸物焼きを作って、しっかり手を洗ってから、二人の前に出した。
「……何のつもりだ」
「頭っ、これって、アレだよな」
二人共戦々恐々としてるの。
痛む前に、食べないといけなかったから、消費するには、良いタイミングです。
「二人共食べないの?」
「……何故こんなモノが、ここに有る」
「パパが置いて行ったの。二人共痩せてるし、精が付くお肉なら、元気になるの」
「空腹時にコレを食うと……死ぬぞ」
「俺らを殺す気ならっ、さっさと殺せ!」
それは知らなかったの。
オークの睾丸焼きは、ミルンお姉ちゃんの大好物で、『生でもイケるの!!』って言う程、美味しい食材の筈。
ミノの逸物焼きは、マンネリ気味の貴族が、好んで食べる食材。食べた瞬間、一部の血行が良くなり、三日間は治らないと言われている、素晴らしい健康食なの。
「……食べないの?」
「死ぬぐらいなら食べるが、食べたら死ぬぞ」
「頭っ、こいつイカれてやがるっ!」
仕方無い。コレは、村長に無理矢理喰わせるとして、別のやつを振る舞うの。
捨てるなんて、勿体無い精神です。




