5話 婚前旅行?.2
今日も今日とて土地開発。
平地は出来たけど、米作りにはまだ早く、只今水路を整備しております。
ザクッザクッ────「穴掘り楽しいの!」
空間収納でやっても良かったんだけど、どうせなら楽しくやりたいからな。
穴掘りと言えばミルン。
穴掘りと言えば犬人族。
「何だろう……ここは楽園かな?」
ケモ耳ケモ尻尾を持つ者達が、一心不乱に穴を掘り掘り、穴を掘り掘り。
まるで何かに取り憑かれたかの如く、犬人達は、穴を掘り進めている。
「目が気持ち悪いのぢゃ」
「……黒姫は掘らないのか?」
「我が手伝ったら、ミルン達犬人族に、襲われてしまうのぢゃ。彼奴らは、穴を掘るのが楽しいらしいからのぅ」
「帰る前に、大衆浴場行くか」
あのまま領主館に入ろうモノなら、ドゥシャさんの顔が、般若になるからね。
「して、流れや。ドゥシャとの旅行に、いつ行くのか、決めたのかや?」
「何で黒姫が知ってんだよ……まだミルンにも、話して無いのに」
「我は地獄耳なのぢゃ。ファンガーデン内ならば、離れておっても聴こえるのぢゃ」
「……能力上がってないか?」
「正確には、戻って来ておるのぅ」
そう言えばこの黒姫、封印されて、力が弱ってるんだったな。
弱ったままで、リシュエルとタイマンしてたのに、今はそれ以上か。
「今は、全盛期の何割なんだ?」
「ふむ……ダラクと戦うた時で、七割ぢゃの。今ならば、リシュエルにも勝てるのぢゃ」
「言い切ったな。リシュエルの奴……少し前に、アナウンス鳴らしやがったけど、それ以降何も無いんだよなぁ」
「ならば気を付けるのぢゃ。彼奴は、何を考えてるのか、さっぱり読めぬからのぅ」
確かに。未だ分からない事が多過ぎるし、リシュエルの考え何て、読めないわ。
「それで、話を戻すが、ドゥシャとの旅行は、いつ行くのぢゃ?」
「腹を括らにゃなぁ」
独身貴族が……終わるのか。
居住区に建てた、ファンガーデン大衆浴場。
贅沢にも、遠い山から温泉を引き込み、住民カードを持っていれば、誰でも無料で利用出来る、俗に言う公共施設。
仮住民や、行商人、冒険者達でも、銅貨五枚で利用出来る、素晴らしい施設だ。
入浴のルールは、至って簡単。
身体を洗ってからの入浴。
タオルを湯に浸けない。
騒がない、走らない、喧嘩しない。
守らなかったら、全裸で外に放り出す。
「びば……温泉」
「ぽかぽかなのぉ」
「酒が欲しいのぢゃぁ」
因みにこの施設、混浴風呂も作ってある。
安心して下さい。
巻いてますから。
水着モドキ、着用必須の場所だから。
おっとそうだ。のんびりモードのうちに、ミルンに伝えておかないとな。
「ミルンさんや。近いうちに、ドゥシャさんと旅行に行くんだけど、お留守番出来るか?」
「行ってらっしゃいなのぉ」
「気持ち良いのぢゃぁ」
何か、反応がやけに軽いな。
いつものミルンなら、『ミルンも連れて行かないと、玉を握り潰すの』って、我儘言うのに。
「ちゃんと聞いてるか? ミルンはお留守番で、俺と半年以上、会えないんだぞ?」
「ドゥシャなら良いのぉ」
「ぷかぷか浮くのぢゃぁ」
この感じ、前から知っていたのか?
誰から聞いた……って、一人しか居ないな。
「黒姫か……」
「ミルンは、ミユンの帰りを待つの。帰って来たら、お父さんとドゥシャの、結婚式なの」
「ミルンさんや。結婚はまだ早いからな? 勝手に話を進めて、式場設営とか駄目だぞ?」
「……検討します!」
「何を検討するんだ? 駄目だからな?」
「……善処します!」
それは暗に、止めませんって、言ってる様なモノだからね。
「せめてドゥシャに、ちゃんと婚約指輪を、贈って下さいな」
「その知識を何処で?」
「ママが言ってたの」
「……旅行に行った先で、作って貰うよ」
「それが良いの。あと、シャルネの分も、しっかり準備しないと、襲われるの」
あいつの分も……国に帰ってから、全然姿見せないけど、ミユンのお気に入りだからな。
「分かった。準備しておくよ……ミルンには敵わないな、本当に……」
「ドゥシャはミルンの、お母さん候補なの」
「理解してるよ……ふぅ」
婚約指輪ねぇ。
マルマリの国なら、良い宝石見つかるか?
旅行ついでに、見繕うかね。




