5話 婚前旅行?.1
へいらっしゃい。
今日も新鮮なネタが、揃ってやすぜ。
先ずはこちらの、おっさんだ。
多少歳をくって、髪は白髪だらけですが、子綺麗なローブを身に纏って、偉そうに睨んでくる、気の強さがウリです。
それに、子綺麗なローブを剥ぎ取って、売り払えば、良い金になりやすぜ。
幾らだって?
そいつは後のお楽しみだ。
「急にどうしたんだぁ?」
「マルマリ様。大変心苦しいのですが、どうか旦那様に、お付き合い下さい」
「意味不明だぞぉ」
お次はコイツだ。
前髪の赤メッシュが映える、まつ毛バーンな不思議系無表情女。
皿を頂戴皿を頂戴と、まるで何処ぞの妖怪を彷彿とさせる言動を繰り返えしやすが、皿を与えたら、大人しくなる可能性が有りやすぜ。
さあさあ、今紹介したこの二人。なんと、競売方式での販売だ。
競り落とすなら、早い者勝ちだよ。
「最低価格は銅貨一枚から! 一体誰が、この二人を競り落とすのか!」
『儂ら安すぎであろうが!?』
『銅貨……一枚?』
「うわぁ。国の代表の価値が、銅貨一枚にされたぞぉ。容赦無いなぁ」
不法入国のタダ飯食らいだからな。銅貨じゃ無くて、石貨でも良いぐらいだ。
それに、安く設定すれば、コイツらのプライドも、へし折れるからな。
「それじゃ、銅貨一枚払うぞぉ」
「あっ、部屋代と飲食代は別料金だから、追加で金貨二万枚かかるぞ?」
「ぼったくりだぁ!?」
「後であの二人から、返して貰ったら良いじゃん。貸しを作れるチャンスだろ?」
「……確かになぁ」
『マルマリに借りなぞっ、願い下げだ!』
『マル…マリ…お願い』
外野がギャーギャー言ってるけど、迷惑料と、不法入国の保釈金として、一人頭十億ストールなら安いもんだろ?
「買うぞぉ!」
「毎度あり! ドゥシャさん宜しく!」
「畏まりました。直ぐに釈放致します」
金貨なら、別に他国のモノでも良いし、外貨を貯えておくのも、今後の為には必要だ。
そんなこんなで、貴賓室に戻って来て、正式な書面を交わし、二人の引渡しを完了した。
書面の内容は、以下の通り。
オーゲッツ・デルガの、領地立入不許可。
次に領内へ立入れば、即座に拘束し、禁固刑五十年の刑に処す。
十花忌・道理の、領地立入不許可。
次に領内へ立入れば、即座に拘束し、禁固刑五十年の刑に処す。
上記二人の返還に際し、アルマシロ国代表、マルマリ・オッツが、ファンガーデン領主、小々波・流に対して、金貨二万枚を、連邦国通貨にて支払う者とする。
「と言う事で、そこの二人は、俺の領地を出た瞬間から、二度と立入るなよ。次は本気で、冷や飯食わせるからな」
「っ、分かっておるわ」
「お皿…お土産…頂戴?」
「なぁ、マルマリ。この二人大丈夫か?」
「大丈夫だぞぉ。しっかり取り立てて、動けない様に、しておくからなぁ」
やっぱり、マルマリはマトモだな。
手土産も貰ったし、ここは一つ、お土産でも渡しておくか。
「えっと、『空間収納』内にっと。ほいマルマリ」
カチャッ────『お皿…私に?』
「お前にじゃ無い。マルマリにあげるんだ」
「おおっ、ハバノアの物より、立派なお皿だぁ。貰って良いのかぁ?」
「礼には礼をってヤツだ。近いうちに、そっち遊びに行くからさ、宜しくって意味も有るな」
「有難うなぁ。これならぁ、毒殺の心配が減るぞぉ」
イケメンも喜んでたけど、そんなに毒殺の可能性が有るのか? 連邦って結構、物騒な国の集まりなんだな。
「眠気堪えてぇ、来た甲斐が有るぞぉ」
「今日は泊まって行くか?」
「帰るぞぉ。仕事も有るし、この二人を、連れて行かないとだからなぁ」
「そうか。それじゃあ金貨の受け渡しは、冒険者ギルド間で宜しくな。ちゃんと払えよ?」
「払うぞぉ。証書に印も押したからなぁ」
それから直ぐに、マルマリとその他二人は、マッスルホースの馬車へと乗り込み、自国へ帰って行った。
「……嵐の様な日々だったな」
「左様で御座いますね」
「もぐら人、帰ったの?」
ミルンはずっと、お部屋でお勉強をしていたので、もぐら人を見れず、少しだけ残念なお顔をしている。
「タイミング悪かったな。またいつか、会える機会も有るだろ」
「見たかったの」
「残念で御座いましたね」
これで、心配事と言うか、意味の分からない事が解決したから、のんびり出来るな。
「それで旦那様」
「なんだドゥシャさん?」
「御旅行は、いつになさいましょう」
『マル…マリ。お皿…見せて?』
『御主ばかり良い目を見おってっ、皿を見せい!』
『嫌だぞぉ、僕の宝物だからなぁ』
『見る…だけ…駄目?』
『取りはせぬ! 見たいだけだぞ!』
『駄目だぞぉ。お前らは、欲に忠実だからなぁ』
『あの…スキル…何?』
『急にっ、違う話をするでないわ!』
『何も無いところからぁ、皿出たなぁ』
『スキルか、宝具か……魔王と言うだけはあるわ』
『お皿…隠してる?』
『分からないぞぉ』




