4話 連邦国へ御招待.3
朝から元気にコケコッコギャアアアッ!!
絞められたコカトリスの声です。
ファンガーデン全体にまで、叫び声を届ける、ヤバいコカトリスだな。
「……この感じは、一メートル大の奴か」
コカトリスは、基本三十センチ程の大きさで、尻尾以外は、普通の鶏と変わらない。
しかし時折、喰われてたまるかと言わんばかりに巨大化し、絞められそうになると、スキルを全開にして逃げようとする。
「養鶏場の従業員さんに、日々マジ感謝」
スキルを発動される前に、しっかりと絞め、今日も美味しい鶏肉モドキを、都市内部に流通させてくれるからね。
「朝の目覚めとしては、最悪だけど……」
コンコンッ────「失礼致します……起きて居られたのですね。おはよう御座います、旦那様。朝食の準備が整っておりますので、食堂へお越し下さい」
「おはようドゥシャさん。何か不機嫌?」
「少し驚いただけに御座います。それでは、失礼致します」
驚いたって何で?
俺、そんなにお寝坊さんじゃ無いぞ?
確かに毎日、ドゥシャさんに起こして貰っているけど、皆んなの朝が早いだけだ。
「……起こせなかったから、不機嫌なのか?」
気にし過ぎだな。
朝食食べたら、昨日捕まえたあの二人の様子でも、確認しに行くか。
ぼーっとしながら、食堂に到着。
既にミルンと黒姫が座っており、美味しそうに朝食を食べて……何か違う。
「お父様。おはよう御座います」
「……っ、どうしたミルン!?」
「どうしたと仰られても、朝の御挨拶を、したまでてすわ」
「ミルンっ、頭でもぶつけたか? 爆食いもしていないし、何処か悪いのか?」
「ドゥシャの教育の所為なのぢゃ。結構長い時間、教育をされておったのぅ」
黒姫が長い時間って言う程……マジか。
ミルンが朝食を食べているのに、全く咀嚼音が聞こえないし、喋り方もおかしい。
お洋服も、しっかりモーニングドレスを着用して、ミルンがミルンじゃ無いミルン。
「ドゥシャさん何処行ったの!?」
「ドゥシャメイド長なら、朝の会合に行ったぞ」
「おはようアトゥナ……ミルン戻して?」
「俺には無理だ。そんな事したら、ドゥシャメイド長に、怒られるからな」
そんな事したらって言うことは、戻す方法が有るって事だよな。
「なあミルン」
「どうかなさいまして、お父様?」
「その気持ち悪い喋り方止めたら」
「気持ち悪いだなんて、酷いですわお父様っ」
「今日の晩御飯は焼肉だぞ?」
「やきっ…にっ…く?」
「そうだ。美味しい美味しい焼肉だぞ?」
「焼じゅるっ肉……ミルンのお肉!!」
良しっ、いつものミルンだ!
ミルンの大好物を餌に、無理矢理させられている口調や態度を、元に戻したぜ。
「ドゥシャさん戻ったら、少し注意しないとな」
教育は構わないけど、強制は駄目だ。
幸いこのファンガーデンは、他領の貴族と、そこまで交流無いし、ミルンの口調を直す必要は無いからな。
「注意出来るのは、流だけなのぢゃ」
「教育怖いの。ドゥシャ怖いの。お肉は食べるの。お父さんお願いします!」
ミルンにトラウマ植え付け完了?
ドゥシャさん、やり過ぎだ。
ミルンに嫌われたら、ドゥシャさんの癒しである、可愛い尻尾が触れなくなるぞ。
「朝御飯食べたら、昨日の二人の様子見に行くけど、ミルンと黒姫も来るか?」
「行きますわ!」
「行く……のぢゃ!?」
ミルン、口調直ってないぞ?
ファンガーデン領主館、地下三階には、特殊な監禁部屋が存在する。
公には捕まえる事が出来ない者達を、こっそり捕まえて、ぶち込む為の監禁部屋。
"軟禁"では無く、"監禁"である。
「地下牢とも言うな」
「内緒のお部屋なの」
「秘密の部屋ぢゃな」
造りには、結構口を出した。
先ずは鉄格子。
そんなモノは、存在しない。
異世界風強化ガラスを製造し、通路から丸見えの状態にして、監視をし易くした。
縦二メートル、横二メートル、厚み三十センチの、極太強化ガラスだ。
表面に、魔石の粉を、炉で溶かしたモノを塗装したら、エグい程の強度となった。
ミルンの連打で、割れないんだ。
勿論、収監する為の出入口は存在するが、それも厚み、三十センチの鋼鉄製。
馬鹿みたいな重さだけど、ドゥシャさんや、今のアトゥナならば、開閉可能だ。
七畳ほどの広さに、水洗トイレ、簡易シャワー、小さなベッドと、この異世界の牢屋としては、高水準だろう。
牢屋マスターの俺が言うんだ、間違い無い。
「おはようさん。ハーピィ達の抜け毛で作った、羽毛布団の寝心地は、良かったか?」
『……儂をここから出せ。今ならば、この愚かな行為を許してやるぞ』
『寝心地良かった……』
「許すも何も、先触れも無く、俺の領地に侵入したのは、アンタだろ? それともアンタの国では、不法入国は犯罪で無いと?」
『チッ、儂を出せと言っておるのだ』
『不法入国は……犯罪』
「娘の方は、正直なのぢゃ」
「腹黒はお馬鹿なの」
ふむふむ、連邦でも、不法入国は犯罪と。
こう言う情報も、結構大事だからな。
答え易い情報を、先に聞く事によって、その後の質問も、答え易くなる……筈。
「何で俺に会いに来た?」
『昨日言っておっただろう。あのアーティファクトが、欲しかったのだ』
『お皿……頂戴』
「俺にやたらと、書状を送ってきたのは、お前らなのか?」
『書状なんぞ知らぬわ』
『返答……無かった』
スパムメールの送信者確定!!
普通に答えるって、意味分からん。
「あのすぱむの奴!」
「自ら来るとは、此奴は阿呆かや?」
考え無しなんだろうな。
若しくは、自分本位。
宛名も無く、送ればどうにかなると、本気で思ってるんだろう。
「それじゃあ、ここから本題だけど……どうやって、南の国境を越えた」
『貴様か十花忌……何故ここに居るのだ』
『丸見え……えっち』
『誰が貴様の様な小娘に欲情するか!!』
『温かい……お水?』
『温かいだと? このシャワー、お湯が出るのか!』
『お皿……貰いに来た』
『っ、じゃないわ! 何故貴様がここに……?』
『このガラス……割れない』
『確かに、見た事の無い牢ではあるが』
『眠たい……寝る』
「……あの若造より、厄介な奴だな御主」




