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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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4話 連邦国へ御招待.2



『アーティファクトがあああああああああああああああ────っ!?』


 と言うオーゲッツ・デルガの叫びを聞いて、ふと思い出した事。

 あのイケメンが、毒無効効果付きの皿を鑑定した際、アーティファクトと言っていた。

 

 古代の遺物、アーティファクト、歴史的遺産と、色々言われている物で、割れた皿でも、相当な値打ちモノらしい。

 そのお皿、山程有るんですけどね。


「ミルンさんや、次からは気を付けような?」


「分かったの。お皿から、絶対手を離さないの」


「違うだろ。食べ歩きを止めような?」


「検討します!」


 ミルンの賢いところ。

 まるでどこぞの政治家の様に、イエスかノーで答えず、検討や善処、時には何も答えずに、その場をやり過ごす。

 しかしこの場合は、悪手だぞミルンさん。


「ミルン御嬢様、少し此方へ」


「嫌なの! ドゥシャの目怖い!」


 ドゥシャさんが、近くに居るからな。

 お叱りを受けると良い。


「ミルン御嬢様っ、旦那様を離しなさい!」


 ギチギチッ────「離さないのっ」


「っ、強くなられましたね」


 ギチギチッ────「お父さん助けてっ」


 ドゥシャさんに連れて行かれまいと、必死になって、俺の服を掴んで離さないミルン。

 物凄く可愛いけど、それも悪手だ。


 ブチィッ────「破れたのっ!?」


 ドゥシャさんの引っ張る力と、ミルンの掴む力に、俺の安物の服が、耐えられる訳無いじゃないか。


「さあミルン御嬢様。お休み前にもう一度、しっかりと御作法のお勉強です」

「お父さん助けてええええええ────」


 ドゥシャに抱きかかえられ、ミルンはそのまま何処かへと、旅立って行った。

 お勉強部屋兼、お説教部屋だけどね。

 ミルンとミユンからしたら、そのお部屋は、立派な拷問部屋らしい。

 俺は入った事ないぞ。

 怖いからな。


「……儂、何を見せられとるんだ?」


「温かい日常の風景を貴方に」


「これが日常!?」


「と言うのは冗談で、狙いはあの皿か?」


「ぬぐっ……」


 全部思い出した。

 あのイケメンに、友好の証として、あの皿一枚プレゼントしたんだった。

 あの、皿くれ皿くれって書いてた書状も、こう言う事だったんだな。


「おーい、アトゥナさんやーい」


「何か用か、流のおっさん」


「台所から、皿一枚持って来てくれ」


「何で皿?」


「良いから良いから」


 近くで待機していたアトゥナに、台所に置いてある皿を、持って来て貰った。

 そしてそれを、オーゲッツ・デルガに、自慢する様に見せてみる。


「さっきのよりも大きい皿っ、一つの欠けも無く残っておるとは……何処で見つけた!」


「言う訳無いだろ?」


「くっ、であろうな。ならばこの皿、儂に譲ってはくれぬか。よもやあの若造に渡しておいて、儂に渡さぬなぞ、有り得ぬだろう?」

 

「幾らで買うよ」


「ぬっ、あの若造からは金を取らず、儂からは金を取ると申すか?」


「当たり前じゃん。あの時は、正式な手続きで集まったから、友好の証に渡しただけで、お前らは不法入国者だろ?」


 南の国境から先触れも無く、普通に俺の領内に入って来て、夜遅くに押しかけて来た。

 しかもその理由が、皿をくれ。

 ただの馬鹿なのか?


「待てっ……今流殿、お前"ら"と申したか?」


「一名捕縛済みだぞ。これってどう考えても、国際問題だよな」


「儂以外にも国境を……っ、彼奴、儂より先に、誰かを通しておったか」


「と言う事で、皿を買っても、持って帰る事は出来ないぞ。アンタは、牢屋行き確定だからな」


「待つのだ流殿! その様な事をすれば、我が連邦国との戦争になるぞ!」


「イケメン君と商談するから、戦争になんかならないって。ちゃんと高値で、イケメン君に引き渡すから、安心しろ」


「何を安心しろと────っ!?」


 そう言って、合図を出す。

 我が家のメイド達は、中々に優秀だからな。

 俺にダメージを与える事が出来る、御山が立派なアトゥナも居るし、オーゲッツの首を締めて、窒息完了だ。


「流のおっさん、こいつどうすんの?」


「地下牢に入れといてくれ。明日になったら、また話するから」


「分かった。牢に入れて見張っとく」


「宜しく!」


 アトゥナは強くなってから、睡眠欲と言うか、睡魔が襲って来なくなったそうだ。

 なので、夜通し見張りをしても、次の日も元気に働いている。

 羨ましい限りだよ。

 俺は睡魔が全開だから、そろそろ寝るか?


「……酒呑み直して、ゆっくり寝よ」


 あの小魚、まだ残ってたよな。




『ミルン御嬢様! ナイフの持ち方が違います!』

『武器と違うのっ』

『噛む時は音を出さない!』

『勝手に出るのっ』

『食べ歩きはお外のみ!』

『お父さんはしてるのぉぉぉっ』

『旦那様は旦那様! ミルン御嬢様はミルン御嬢様です! 悪いところを真似しない!』

『ドゥシャ怖いっ』


『こんな夜更けに、何をしとるのぢゃ』


『黒姫助けるのぉぉぉぉぉぉっ』

『黒姫様も、参加なさいますか?』


『……我は寝るのぢゃぁ』


『黒姫助けるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』

『ミルン御嬢様! フォークの置き方が違います!』


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