3話 突然の来訪者.4
「さてっ、こいつどうするか……」
「埋めたままなの!」
「また出とるのぢゃ」
やって来ました田園予定地。
さっきの書状の内容?
皿だった。
細断して捨てたわ!!
本気でセーフアースに行って、枕作りをしようかなとも思ったけど、そこはなんとか、堪える事が出来た。
やっぱりお米が最優先。
だからこそ、こうして南側に来た訳だけど、本当にコレ、どうしようか。
土を被せた筈なのに、顔が出てるんだ。
しっかり土を、押し固めた筈なのに、何で顔だけ出てるんだ。
そう言えばこいつ、連邦国の何とかって言ってた様な、言って無かった様な。
顔の近くまで寄って、その手前でしゃがみ込み、じっくりと眺めてみる。
黒目黒髪の、表情筋肉が動かない女性。
顔は違うのに、まるでシャルネを見ている様な、変な気分になってくるんですけど。
「生きてるか?」
「……生きてる」
「何で埋まってんだ?」
「埋まった……」
「いや、埋まった理由を聞いてるんだが?」
「……埋まったから」
うん。こいつ、シャルネと違うわ。
シャルネの奴は、表情筋は死んでいるけど、ああ見えて良く喋る。
支離滅裂な思考をしているが、話が出来る分、対応を間違えなければ、安全なんだ。
しかしこの埋まっている女は、表情筋に加えて、コミュニケーション能力も死んでいるという、ガチの根暗だ。
その癖、"何故埋まっているのか"と言う問いに対して、"埋まっているから"と返して来る、脳内宇宙根暗だ。
「お父さん! そいつ埋めるの!」
「もぅ……埋まってる」
「お前に聞いて無いの!」
「土…柔らかかった…落ちた」
「話が通じないっ!?」
本当にね。
何で埋まってるんだよ。
ミルンが本気で怒ったら、また顔の上から、土を被せられるぞ。
「流や」
「何だ黒姫?」
「早よ仕事をするのぢゃ」
「黒姫に言われんの……何か腹立つなぁ」
その通りだから、言い返さないけど。
んじゃ、作業再開しますかね。
埋まっている女性?
誰だそれ?
腰をあげようとしたら、背中に軽い衝撃。
どうやらミルンが、よじ登って来ている様だけど、重くなったなぁ。
「肩ぐるまぁーっ、完了なの!」
最近やってなかったからな。
やっぱりミルンを肩に乗せると、落ち着くんだけど……凄い重い。
ミルン太った?
いや、今までが細過ぎたのか。
「……行くか」
「いつものお父さんと反応違うの。なんで?」
「そんな事ない。ないったらない」
太った何て言ったら、ミルンが怒る。
今のミルンに、脳天を連打されたら、いくら防ステ高くても、馬鹿になってしまう。
今も馬鹿だって?
誰だ今馬鹿言った奴っ!!
「我も抱っこなのぢゃ!」
「黒姫は歩きなさい」
「黒姫は歩くの」
「何故なのぢゃっ!?」
流石に、この丸っとした重石まで腕に抱えたら、腰が砕けて死ぬ。
ミルンだけで、重量過多です。
しかも、黒姫の作業場所はここだろ。しっかりと土を柔らかくするんだ。
土を柔らかく……柔らかく?
「あの女が、埋まってる原因って……」
「お父さん。気付くの遅いの……」
「のぢゃっ?」
昨日の事を……良く思い出せ。
黒姫は、あのデブドラゴンの姿に成って、膝を付きながら、爪で大地を引っ掻いていた。
疲れた時は、座り込んだり寝そべったりと、せっかく柔らかくした土を、ロードローラーの如く、押し固めていた。
起き上がる時は、その立派な爪を大地にぶっ刺して、"よいしょっと"と、まるで、腰を痛めたサラリーマンの様な声を発し、腰をあげ、一息吐いていた。
その、大地にぶっ刺してした、立派な爪の大きさは、ミルンよりも大きく、立った俺の、首元辺りまでの大きさ。
「黒姫さんや」
「何ぢゃ?」
「影さん地獄決定な」
「何故ぢゃっ!?」
原因は、黒姫の大きな爪。
今日の伐採作業終わらせたら、あの女性を引っこ抜いて、黒姫に謝らせよう。
「面倒事は、嫌だな……」
「お父さん。早くお仕事するの」
「分かってるよ。『空間収納』」
さっさとこの作業終わらせて、帰ってのんびりと、お風呂に浸かろう。
ミルン像を眺めながら、酒を飲もう。




