3話 突然の来訪者.3
書状のお片付け終了。
皿は本当に、意味が分からない。
東からの書状で、破らなかったのは、二通。
一通は、和土国から。
どうやら、あの時呉服屋に渡したミルンの土が、大活躍しているとの事。
御礼の言葉に加えて、今度は傘音技が、ファンガーデンを視察したいとの内容だった。
「傘音技来る?」
「彼奴が来るのかや?」
「呼んでも良いけど、少し先だな」
もう一通は、ルノサイア国。
東南に位置し、和土国と同じ様に、精霊や妖精を崇めている国。
内容はいたってシンプル。
和土国への訪問に対する、抗議文だ。
「ドゥシャさん、この国知ってる?」
「存じております。何度も何度も、我が領内に間者を差し向けて来る、鬱陶しい国で御座います。構う必要は、無いかと……」
「東の国境ザル過ぎだろ。和土国とは仲良くしたいけど、ルノサイアは無視だな」
「あのコインのお国?」
「ミルン御嬢様。しーっ、で御座います」
「お口ちゃっくします!」
「何のこっちゃ……」
南からの書状は、皿を除いて十三通。
どうやら、あのイケメン君が、世界会議なるモノに出た事によって、ジアストールに対する態度が、緩くなった様だ。
「こんな書状……ルシィに送れっての」
「旦那様。このジアルトールで、今一番の脅威となる者は、旦那様で御座いますので」
「触るな危険ってか?」
んで、その書状の中身がコレだと。
『恒久的な和平の為の、会談の申し入れ』
『ファンガーデンとの、交易のご相談』
『晩餐会への御招待』
『連邦国への加入の推薦』
「などなどってな。似た様な文ばっかりだ」
「ファンガーデンを独立させ、旦那様ごと、取り込む算段かと存じます。旦那様は、王に成りたいですか?」
「うげぇ……王なんて無理だ。今でさえ、頭が痛いって言うのに。無茶過ぎるわ」
「ふふっ、左様で御座いますね。旦那様は、今の立場で良いかと存じます」
自由気ままに、好きな事を出来るからな。
何かあれば、ルシィに押し付けて、知らぬ存ぜぬを貫き通せる立場だ。
「あとは……あのスパムメールか」
「すぱむって、なあに?」
「全ての文が、皿をくれなのぢゃ」
「狂気を感じます」
お皿を下さいって言われたら、普通に商店に売ってますからね。
お買上げ、誠に有難う御座います。
領収書発行!!
宛名はしっかり記入しましょう!
マジで経費で、落ち無いからな。
「……嫌な記憶、思い出したな」
「お父さん。すぱむって、なあに?」
「迷惑な書状を、送られた側の事を考えずに、ひたすら送り続けて来るモノを、スパムって言うんだよ。悪質な悪戯だな」
「悪戯っ! ラカスなの!」
「アレは可愛い悪戯だな。スパムはもっと悪質で、下手し心が病む」
「病む前に殴るの!」
病む前に殴るの?
気合いを入魂するのかな?
ミルンに殴られたら、気合いが入る前に、意識失って、治療院送りだからね?
「ミルンさんや、意味分からんぞ?」
「殴れば、病んでる暇無いの」
「……先ずは、病んでる理由を、聞いてあげなさい。殴るのは、最後の手段だからな」
「お父さんしか、殴らないの」
そうかぁ……書状は俺宛だから、俺が病んでしまう前に、一撃入魂をすると。
「病む前の前辺りで、しっかり休むから、その拳を向けないでね」
「善処します! シュッシュッ──」
「イエスか、ノーかで、答えなさいっ」
「検討します! シュッシュッ──」
拳を打つ練習かな?
どう見ても、殴る気満々だよね?
コンコンッ────『コルルです。流さん宛に、書状が届いております』
「……嫌な予感しか、しないんですけど」
「旦那様。そのまま処分させましょうか?」
「御手紙読まないの?」
「燃やして捨てるのぢゃ」
こんな時は大体、また皿をくれって言う、スパムメールが届くんだよ。
メイド達だと、勝手に書状の内容を確認出来無いから、こうして持って来るしか、出来無いんだけど、正直言って読みたく無い。
コンコンッ────『流さん? コルルです』
「旦那様、如何致しましょう」
「コルル待ってるの」
「メイドは大変ぢゃのぅ」
読みたくは無いが、読むしか無い。
またあの皿だったら、即座に細断して、ゴミ箱に捨ててやるからな。
「……入ってくれ」
「失礼します。どうされたんですか?」
「コルル、そっとしておくの」
「疲れて居るだけなのぢゃ」
「旦那様は、疲れていらっしゃるのです」
ここ数日、休んで無いからね。
やっぱりあの場所で、作業進めるか。デスクワークしてたら、苛々溜まるわ。




