3話 突然の来訪者.2
「……ドゥシャさん。これ、何?」
「御手紙いっぱいなの」
「ひい、ふぅ、みぃ……数えるのが、馬鹿らしい数の文なのぢゃ」
領主館に戻って、セーフアースへ逃げる準備をしていたら、ドゥシャさんに引き止められ、執務室へと連行された。
そこに有ったのは、木箱にミチミチに敷き詰められた、書状の山。
「……東に在する各国からと、南の連邦国からも御座います。ヘラクレス様が、放置されておりました」
「こんな量……何処にあったんだ?」
「役所の隅っこで御座います」
「隅っこに放置って……」
村長……領主になるんだよね?
そんな奴が、他国からの書状を放置って、色々不味い状況になるぞ。
木箱に入っている書状の山から、無造作に取り出して、その中身を読んでみる。
「……うん?」
『我が国に来て、穀物などの栽培をされたし。褒美として────』
ビリビリッ────「ポイっとゴミ箱へ」
宛名が和州国だったわ。
安っぽい木の皮で、巫山戯た内容さようなら。
あの国は、ケモ耳に優しく無い国だから、二度と行くことは無い。
「んじゃ次は……これにするか」
『ラカス殿へ。拝啓、ますますの活躍との事、お慶び申し上げます。つきまして、十の月迄に御返済頂く予定の、銀貨の御返済が、確認出来ておりません。次の三の月迄に、御返済を頂かなければ、冒険者の資格を、剥奪致しますので、お早い御返済を、お願い致します。冒険者ギルド代表、ネリアニスより』
「督促状じゃん……しかもラカス宛」
「ラカスに渡す?」
「ミルンさんや。院長影さんに、渡して欲しい」
「お灸をめり込ませるの! 了解!」
────ドダダダダダダダダダッ!!
ミルン、楽しそうに爆走して行ったな。
ラカスの奴、真面目そうに斥候してたのに、何で冒険者ギルドに、借金してんの。
「御返済は、お早めにってか……次はコレか」
『お皿を下さい』
「……えっ、コレだけっ!?」
結構高そうな羊皮紙に、この一文。
宛名も何も無く、誰宛てなのかも記載無し。
ただの悪戯か?
「旦那様。その羊皮紙の印は、南の連邦国家のモノで御座います」
「連邦国家……あのイケメンの国か。あいつが送って来たにしては、やけにお馬鹿と言うか、この一文だけって……分からん」
「ノーザンはあくまでも、連邦国家の一つ。他の国から、送られて来た可能性も御座います」
連邦国家……一つの主権ってやつか。
確かあのイケメン、王様じゃ無くて、代表って言ってたもんな。
「……これは放置してっと、次だ次」
今考えても意味無いし、さっさと書状の山を読み切って、土地開発の続きだな。
「暇なのぢゃぁ。我も見ていいかや?」
「見ても面白いモノ無いぞ?」
「構わぬのぢゃ。不要な文が有れば、我が横に除けてやるのぢゃ」
「それで御座いましたら、僭越ながら、私もお手伝い致します」
ドゥシャさんと、黒姫が、手伝ってくれるのなら、時間はそんなにかからないか。
「お願いします」
「承りました」
「さっさと片付けるのぢゃっ!」
東に点在する、国々からの書状。
合計五十二通。
内、破ったのは五十通。
南の連邦国家からの書状。
合計二百十五通。
内、お皿と書かれていたのが、二百二通。
ラカスへの督促状。
五通。
スパムメールですか?
この電話やスマホが無い異世界で、二百通以上の書状を送って来るって、どれ程費用がかかると思ってるの?
なんで皿が欲しいの?
俺皿売りだと思われてるの?
あと、このラカスへの督促状。
商会からの督促状と、冒険者ギルドからの督促状に、道具屋、武器屋、飲食店と、ラカスの借金ヤバいよね。
合計借入金額、金貨二十三枚。
分かりやすく、二百三十万の借金だな。
「しかも、飲食店の督促状……ミルンの印付き」
ミルンの印鑑。
消費者金融を、裏で営むミルンの為に、ドゥシャさんが張り切って作った、ミルンのお顔が彫り込まれた印鑑。
手作業で精巧に彫られており、この異世界だけで無く、日本だったとしても、偽造する事は不可能だろう。
材料が特殊だからな。
ある男の、スポッと抜ける、角ですから!!
そのミルンの印の効力。
簡単な話だ。
ミルンが、取り立て屋に成ります。
「ミルンさんや。お山にポイは、駄目だぞ……」
「大丈夫なの。しっかり鉱山で、働かせるの」
いつの間にか、ミルンが帰っていた。
しっかりラカスへの督促状に目を通し、ニコニコ笑顔でそれを、ス──っと懐にしまった。
「……程々にな?」
「院長がブチ切れてたから、直ぐにラカスは捕まるの。鉱山で一月、休み無く働かせれば、借金なんて無くなるの!」
「……ご飯と休み時間は、与えてやれよ?」
「大丈夫なの。休みは無いけど、一日八時間労働で、三食無料で食べれます!」
ミルンさん、休み時間は?
鉱山に監査入ろうかなぁ。
何だか物凄く、不安になって来た。




