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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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2話 稲作は難しい.1



「あーっ、こし餡旨めぇ」


 朝から何やら、ミルンがご機嫌斜めだった。

 影さんも居たけど、何やってんのかね。

 そんな事を思いながら、ファンガーデン近辺の地図を見て、一人黙々お仕事中。


「やっぱり、城塞都市の中じゃ無理か……」


 何を考えているのかって?

 米を作る場所を考えているんだ。

 珍しい事に、執務室で俺一人。こうして真面目に、仕事してんだぞ。


「一人言はなれたもんっと」


 元々ファンガーデンは、稲作を前提とした作りになっていない。

 居住区の畑では、小麦に似た穀物と、芋をメインに、他には葉野菜を育てている。

 その直ぐ近くには、コカトリスの養鶏場まであるから、稲作するには場所が無い。


「やっぱ、拡張するしか無いな」


 村長の領地が、稲作に手を付けるには……爆速でやっても、数年は必要。

 それまで待っていられないし、和土国から仕入れるにしても、距離が離れ過ぎている。


「列車か飛行機か……」


 大量輸送手段が無いからね。

 ちまちまやってたら、お金にロケットが生えて、宇宙まで飛んでっちゃう。

 

「問題は、気候だな」

 

 このジアストール、全く寒暖差が無いの。

 帝国は、行けば行くほど肌寒くなっていたのに、この国は年中温暖。


 確か米作りは、春に苗を作って、夏本番前に田植えをして、秋を感じる前に収穫。後は、乾燥させてのあーだこーだだ。


「温暖でも育つけど、見た目と味に拘りたい」


 もちっと感と、ねっとり感は大事だ。

 カレーなら、少しパサついていても良いが、毎日食べるのなら、そこは妥協出来ない。

 

「稲作をやるのなら……南だな」


 アトゥナの居た村より先まで、俺の領地みたいだし、先に伐採進めとくか?

 城塞都市内の消費を考えたら、どれぐらいの広さが有れば、問題無いんだろ。


「思い出せーっ、確か……」


 十平方メートルで、年間通しての一人分の米が出来るんだったか。んで、ファンガーデンの人口は、二十万を超えてると。


「ドーム何千個分の広さだよ」


 勿論やるよ? 

 やりますとも。

 だって、米の為だからね。

 人口増えてるから、米作りに誰かを雇えば、働き口兼、お米が出来る!!


「うしっ、いっちょやりますか!」


 南の森を切り拓いて、更地にしてからじゃないと、何も出来無いからね。




「『空間収納』無双!!」


 いやーっ、便利便利。

 山削った時もそうだけど、保管場所と言うより、最早重機だよね。


「開拓チート乙っ、『空間収納!!』」


 ただ一つだけ、思う事が有るんだ。

 ドームうん千個分だからね。

 ただただ辛い。


「……口調は楽しそうなのに、顔死んでるぞ、流のおっさん」


 はい、アトゥナを道連れにしました。

 旅は道連れって言うからね。


「はははっ、こんなん顔死ぬって」

 

「怖っ!? 止めろよ気持ち悪い!」


 うんうん。アトゥナさんや、そんなん言われ慣れ過ぎて、四十五点。


「リティナに勝ってるのは、胸だけだな」


「急に何だよっ、胸を見るな!」


「アトゥナ。年齢的に範囲外だから、御免な?」


「流のおっさんがっ、領主とは思えないっ」


 そりゃあ、何ちゃって領主ですからね。

 何か問題が起きたら、即座に皆んなを連れて、セーフアースに高跳びするぞ。


「やっぱり一人より、誰かと居た方が楽しいな。『空間収納』っと……辛い」


「情緒不安定かよ!?」


「米の為とは言え、休んで無いからな。次休む時は、一年程姿を消すかもね!」


「ドゥシャメイド長と、旅行に行かないのか? 結構楽しみにしてたけど……」


「マジで?」


「うん。下着とか真剣に見てたし……」


 嫌な情報有難う。

 独身貴族の危機過ぎるっ。

 あんな悩殺バディに迫られたら、俺のミジンコ理性なんて、一瞬で飛んじゃうぞ。


「なぁアトゥナ」


「何だよ?」


「ドゥシャさんさ、何色の下着見てた?」


「真っ黒のだったぞ」


「俺の趣味にドンピシャっ!?」


 何で俺の好きな色を知ってんの?

 アレか? 俺って、プロファイリングでも、されてるのかな。

 

「暗部の長なだけあるなぁ」


「変な流のおっさんだな……俺見てるだけだから、暇なんだけどさ。何か手伝う事無いの?」


「アトゥナに出来る事? それなら、この棒使って、正方形に線を引いてくれ」


「流のおっさんが、くり抜いた大きさでか?」


「正解。胸を揺らさず、やってくれよ」


 ズリズリッ────「揺れるんだけど……」


 それだけデカけりゃ、揺れるか。目に毒過ぎるぞ、アトゥナさんや。



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