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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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1話 ゆっくりとのんびりと.1



 ミユンが帰って来ない。

 村長の所で、何かお手伝いをしている様だけど、もう一週間は経ってるの。


「お一人様のお布団……つまらなぁい」


 窓から、太陽さんが『起きなさい』して来るけど、今日は出たく無いのぉ。

 

「お布団ぐるぐる、丸めて籠る」


 正にお父さんなの。

 お父さんは今頃、ドゥシャに叩き起こされて、悲鳴をあげてるの。


 コンコンッ────『ミルンお嬢さまーっ、朝でっすよーっす』


 何故うざ子?

 そう言えば、ミウとメオが出て行ったんだった。村長の領地で働く為、護衛も付けずに行っちゃったの。


「今日はお昼まで出ない。ミユンも居ないし、お友達が減ったから」


 ラナスとコルルは、この時間だとお庭のお手入れだし、寝起きのお父さんに近付いたら、魔法発動しそうで危ないの。


「起きないと、ドゥシャ様に怒られるっすよ?」


 何故部屋の中にっ!?

 扉が開く音しなかったのにっ、やっぱり影は意味不明なのっ!!


「ほらミルン御嬢様っ、お布団をはなすっす!」


 ギチギチッ────「離さないのおおおっ」


 お布団が悲鳴をあげてるけど、もし千切れたら、うざ子の所為です。


「力強いっす! ミルン御嬢様っ、起きたら美味しい甘味が待ってるっすよ!」


 甘味……和土国で手に入れた、餡子?

 アレを朝から食べれるのは、今日は何か良い日なのかな?


 ギチギチッ────「こし餡?」


「何で影よりっ、力強いんですかっ!」


 ギチギチッ────「つぶ餡?」


「ぬうううっ、好きな方っすよっ!!」


「なら起きるの!」


「あっ────」

 ────ガシャンッ!!


 うざ子がお布団ごと、ミルンのお部屋に置いていた、ガラス細工に突っ込んだの。

 ドゥシャが丹精込めて作った、お花を飾る、綺麗な花瓶なの。


「ドゥシャに伝えるのっ」


「それは勘弁っす!?」


 このうざ子、無傷なの。

 と言うか、何でメイド服着てる?

 影なのに、お顔見えてるの。


「うざ子……鬼人(おにびと)?」


「そうっすよ? 可愛い角を持つ、超絶美人ナイスバディな鬼人族(おにびとぞく)っす!」


「何でメイド服着てる?」


「休暇っすよ! ミルン御嬢様と過ごしたくて、こうして遊びに来たっす!」


 休暇なのに、休んで無いの。

 正直この影より、御座るの方が良い。

 御座るなら、ここまでぐいぐい来ないし、良い距離感を理解してるから。


「……それなら、鬼ごっこするの。ミルンが鬼で、うざ子は逃げるの」


「良いっすよ!」


「それじゃあうざ子は逃げるの。十秒数えたら、追いかけます」


「ふふんっ、捕まらないっすよおおおっ!!」

 ────ズドドドドドッ!!


 凄い勢いで走って行ったの。

 さらばうざ子。

 ドゥシャにはしっかり、伝えておくの。


「んっ──っ、ぷはっ……甘味っ!!」


 背伸びをして、準備完了なの。

 お部屋を飛び出して、食堂へ走るの!!




「……何故ここに居る」


「あっ、ミリュンおひょうさまっ。んぐっ、ここの朝御飯、美味しいっす!」


 せっかく、何処か行ったと思ったのに、うざ子が優雅に朝食を食べてるの。

 鬼ごっこは?

 何故食堂に?


「意味が分からないのっ」


「どうしたっすか? お団子美味しいっすよ?」


「ドゥシャはどこ?」


「ドゥシャ様なら、さっき商会の会合に向かったっす! 戦後処理やら何やらで、結構苛々してたっすね」


 タイミングが悪いのっ!?

 このうざ子と二人きりは、地味に疲れます。


「ふわぁっ…おはようミルン……」


「お父さん!」


 お父さんが来たの!

 これならあのうざ子と、二人きりにならずに済むの!


「ん……知らない奴が居る? 誰?」


「アレは不審者なの。追い出すの」


「……不審者?」


 ファンガーデンなら、お父さんの方が上位者なの。いくら影と言えど、その命令なら無視出来ない筈なの。


「おはようっす魔神様!」


「……その言い方、影さん?」


「早速バレたの!?」


「メイド服姿で、何してんの?」


「ミルン御嬢様の御世話っす!」


「それは違うの」


 今さっき休暇で、遊びに来たって言ってたのに、しれっと嘘を吐いてるの。


「まぁ、良いか。ミルンも暇だろうし、相手してやってくれ」


「お父さん!?」


「了解っす! ミルン御嬢様の事、この惨影にお任せ下さいっす!」


 不吉過ぎる名前なの!?

 影にお名前があるのは、ビックリだけど、そのお名前は、誰が考えた?



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