表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

373/411

プロローグ② 連邦国家の腹黒達



 南の連邦国家。

 数多の小国が手を組み、議会議員制と言う、民衆によって選ばれた者達が、国の舵取りを行う、民主の国。

 その国々の中でも、最も力を持つ五カ国。

 その代表者達が、ノーザン中央に在るレストランへと集まり、会食と言う名の、腹の探り合いをしていた。



「お久しぶりですね、オーゲッツさん。中央から"わざわざ"御足労頂き、有難うございます」


 ノーザン国代表、『ハバノア・アスダオルタ』。

 最もジアストールと国境を接し、幾度もその進行を捌き、押し退けて来た、連邦国家にとっての『盾』となる国。



「ふんっ、若造が……お前には色々と、聞かねばならん事もあるでな」


 ジルトン国代表、『オーゲッツ・デルガ』。

 連邦国家内全ての、流通を担う国。

 中央に位置し、各国の軍を統治する他、何が、何処で、どれほど必要なのかを判断。即座に行動し、采配を行う正に『心臓部』。

 


「……ご飯食べたらぁ、帰って良い?」


 アルマシロ国代表『マルマリ・オッツ』。

 連邦国家の資金源である、地下資源の採掘国

 鉱石の産出量が異常な程多く、本来ならば、単一国家としてもやっていける、強国である。



「酒よ酒! ほらもっと持って来なさーい!」


 イヨワリ国代表『ノムーワ・シュヌ』。

 医療、薬学に精通した者達の国。

 しかし、大半の国民が酒呑みの為、夜に治療をお願いする場合は、酔っているので要注意。

 


「……シュヌ、煩い」


 ツキヨ国代表、『十花忌(とばない)道理(とおり)』。

 ツキヨ国は、東の国々と国境を接する国。

 入れ替わり差し代わりと、攻めて来る東の兵共を、時に集団で、時に単独で討ち滅ぼす、連邦国家にとっての『剣』である。




「年に一回。主要な国々の皆様と交流出来て、若輩者の僕としては、有難い事です」


「ふんっ、何が若輩者か。ここに居る誰よりも、その腹の内は黒かろうに」


「いやいや、僕なんてまだまだ。オーゲッツさんの足元にも及びませんよ」


 貸切のレストラン。

 そこで働く配膳係は、冷や汗を滲ませながら、料理を運んで行く。


「んかぁ──っ! この酒旨っ! ちょっと持って帰りたいから、銘柄教えてよ!」


「……連邦国の酒じゃ無い。何処の?」


 ノムーワと十花忌。その二人の視線が、配膳係を捉え、震え上がらせる。

 その瞳は、正に肉食獣が如し圧を放ち、答えねば間違い無く、解雇真っしぐらであろう。

 恐怖なのか、配膳係の股下に、若干の染みが滲んでいる。


「お二人共。そのお酒は、和土国の傘音技代表から頂いたものだよ。手土産に貰ったヤツだから、今回特別に出したんだ」


「和土国……東の国の一つ……」


「えーっ! じゃあ今呑んでるヤツだけって事? 隠してるんでしょ! 出しなさいよーっ!」


「貰ったのは二本だけだし、その内の一本を開けたんだ。勘弁して欲しいな?」


「ええいっ、御主ら煩いわ!!」


「眠いなぁ……帰って良いかぁ?」


 正に、混沌。

 誰も彼もが好きに言い放ち、この集まりのホストで在る、ハバノアですら加わり、全く話が進まない。


「あっ、そうそうもう一つ。ジアストールの魔王から、こんな物を貰ったんだ」


 そう言って取り出したのは、一枚の皿。

 白地の上に、見事な細かい紋様が彫られてはいるが、ただの皿である。


「皿では無いか?」

「皿よね?」

「……皿」

「眠い……んぁ?」


「流石マルマリ、気付いた様だね」


 マルマリは、ゆっくりと動き、テーブルに置かれた皿を手に取ると、じっくりとその皿を観察し始めた。


「これぇアーティファクトだぁ」


「アーティファクトだと?」


「そのお皿が?」


「……頂戴」


 マルマリの一言で、その場に居る者達の顔付きが一変。

 

「このアーティファクトの効果は、『毒無効』。このお皿が有るお陰で、毎日の食事が楽しいんだ。だから、通理ちゃんでも、これをあげる事は出来無いなぁ」


「毒無効っ、国宝級では無いか! それを魔王に貰っただとっ……」


「くれないなら何で見せたのよーっ!」


「……ケチ」


「眠いぞぉ。帰って良いかぁ?」


 そう、このハバノア。

 お皿を見せびらかす為に、割れない様わざわざ自分で梱包して、クッション性抜群のカバンに入れ、こうして持って来たのである。


「ふふん。これは、僕が"流さん"から貰った、友好の証だからね。これが欲しいのなら、"流さんが来た時"にでも、頼めば良いさ」


「ほぅ……その魔王は"流"と言うのか」


「ふーん、"流"と言うのねぇ」


「……"流"覚えた」


「もぅ帰るぞぉ」


 ハバノアは、調子に乗ると口を滑らす。

 連邦国家主要五カ国全てで、魔王の名前が周知されてしまった。


「さぁ、儂はもう帰るぞ」


「そうねぇ、やる事出来ちゃったわぁ」


「……帰る」


「私もぉ、帰るぞぉ」


 こうして、連邦国家主要五カ国の集まりは、何の議題も話す事なく、スピーディーに解散したのである。


「……えっ? 皆んな帰った!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ