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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
五章 異世界とは機械人形が居る世界

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プロローグ 歩き続けて影一人



 黒姫様、お元気でしょうか。

 他の影達は、どうでも良いですね。

 黒姫様の背に乗り、セーフアースから別大陸へと降り立った、影で御座います。


「あの陛下の事です。間違い無く影の事を、忘れられて居るのでしょう」


 帰ろうと思えば、帰れるのです。

 ミルン御嬢様や、ドゥシャ様。陛下の呼び出しに応じれば、あっと言う間にエイドノア大陸です。


 しかし、まだ帰る訳にはいきません。

 一度帰ってしまえば、また同じ日数をかけて、ここに来なければなりませんから。

 正直言って、それは面倒臭い。


 幸い、この大陸には川が多く存在し、魔物以外の動物も存在していたので、何とかこうして、調査を進める事が出来ています。


「やたらと魔物がっ」────ズシャッ!


「交戦的ではっ」────ブシュッ!


「有りますが……ふぅ」


 ここの魔物は、ジアストールでは見た事の無い姿を、しております。

 見た目は、そうですね……ドラゴンに似ているのですが、身体は小さく、その爪と牙だけが、やたらと鋭い。

 

「普通の冒険者ならば、対処は難しいでしょう」


 この魔物は、兎に角脚が速い。

 ミルン御嬢様程ではありませんが、ニアノールさんと、同じ程では無いでしょうか。


「この牙も、厄介ですね……」


 持っていた籠手を、易々と貫く程の強靭な顎の力と、鋭利な牙。

 そして、何やら怪しい爪。

 紫色をしていますので、毒なのでは?

 お陰で、この魔物が向かって来た際は、全ての攻撃を、避けねばなりません。

 

「今の所、遭遇した魔物は全て、影ならば楽に対処可能では御座いますが……」


 この大陸を調査して、色々と面白そうな物も見つけております。

 と言うか、そこら辺に転がっていますね。

 人工物らしき、遺跡です。

 しかも、何で出来ているのか、素材が全く分からないモノばかりです。

 

「鉄にしては脆く、しかし石では無い」


 神代の時代の遺跡でしょうか?

 それにしては、まだ形が残っているモノばかりで、何とも判断が難しい。


「長命種である私でも、まだまだ知らない事が多いですね」


 遺跡の中にも、知らない文字で書かれたモノが、山程有りましたから。

 書物が有れば、良いのですけど。

 流石に残ってはいませんね。


「あれは……まだ形が残っているのですか」


 少し離れた場所に、建物らしきモノを見つけました。結構な大きさで、上部がアーチ状になっていますね。


「あそこまで大きなモノが、朽ちずに残っているとは……気は抜けませんね」


 中に何が潜んでいるか、分かりませんから。

 



「さて、来たのは良いですが……」


 出入口が見当たらない。

 建物の周囲を、時間をかけて回りましたが、出入口が何処にも無い。


「周りモノは崩れ、形を保っていないのに、何故この建物だけ無事なのか」


 出入口が無い建物なんて、存在するのでしょうか。必ず何処かに、在る筈なのですが。

 出入口が無ければ、最悪この壁を壊して、内部の調査を、しなければなりません。


 壁に付いた埃を取り、再度確認して行く。

 地味な作業ですね。

 んっ? 何やら凹みが────『認証キーを、御提示下さい』

 

「っ、何者か!?」


 急に声が発せられ、建物から飛び退く。

 剣に手をかけ、周囲の気配を探りながら、声が発せられた壁を見詰める。


「何も……襲って来ない? 再度問う! 貴様は何者か!!」


 今の声……全く気配を感じなかった。

 この、暗部に身を置く影ですら、欺く程の手練れと言う事ですか。


「ここは一度、離れるべきか……っ」


 ゆっくりと、慎重に、声が発せられ壁へと、近付いて行く。

 

「……何も起きない?」


 周りには、魔物の気配すら感じられず、声を発したこの壁も、矢張りただの壁。


「確か、この辺りでしたね」


 凹みがあった場所を、再度触ってみる。


『認証キーを、御提示下さい』


「御主は何者だ」


『認証キーを、御提示下さい』


「認識キーとは一体何だ」


『認証キーを、御提示下さい』


「何か答えろ!」


『認証キーを、御提示下さい』


 話にならない。

 同じ言葉を繰り返すだけでっ、こちらの質問に、まったく応じません。


「っ、ふんっ!!」────バキィッ!!


 試しに殴り付けてみた。

 凹みが更に凹んだが、元々凹んでいたのだから、問題は無いでしょう。


『認証キーを、御提示下さい』


「くっ、何なのだお前はっ!?」


 全く手応えを感じない。

 しかも、まるで遊んでいるかの様に、この壁は同じ言葉を繰り返す。


「ふんっ!」────バキッ!


『認証キーを、御提示下さい』


「でやぁっ!」────ドンッ!


『認証キーを、御提示下さい』


「せいっ!!」────ギャリッ!!


『認証キーを、御提示下さい』


「ぐぬぬぬっ……」


 この者の弱点かと思い、凹みを更に更に凹ませたが、返ってくる言葉が変わらない。


「この近くを、拠点とするか……必ずや、御主の正体を暴いてやる」


 と言う事で、瓦礫の山をあーだこーだと組み合わせて、簡単な寝床を作りました。

 先に進むにしても、あの建物を調査しなければ、もやもやが残りますからね。


「認証キーとは、一体何なのでしょうか」



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