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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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間話 魔王ダラクの昔話.2



 私は今、和土国の東の端にポツンと存在する、悪魔族が住まう砦に来ている。

 その理由は、魔王からの呼び出しだ。


 この東の地で、多分私ではなかろうか、と言う仕事をしているが、まさか魔王にまで、知られているとは。


「っとまぁ、こんな感じやなぁ」


「ふむふむ……そのお話は、一体どれ程昔のお話なのでしょうか」


「どれ程前て、覚えてへんわ。姉やん攫った国滅ぼして、同胞集めて、同じスキル持つ奴を探して、忙しかったからなぁ……」


「成程。しかしどうしてまた、この様なお話を残そうと、思われたのですか?」


「……教訓と、あの白い翼を持つ者には、気を付けろって、教える為やなぁ」


 そう、私の仕事は、この東の地で、ありとあらゆる歴史を残す事。

 新しい国が出来ては、直ぐに消え行くこの東の地で、これ程無謀な仕事をするなど、私以外誰が居ようか。


「白い翼ですか……羽人族では、無いですよね」


「そやなぁ。羽人族と似とるけど……全くの別モンやろ。存在感が半端なかったからなぁ」


「それで、あそこに有るカケラが、お話にあったお姉様であると……粉々ですね」


「あの糞龍曰く、姉やんはもう居らんそうや。まぁ、そやろうとは、思うてたけど……」


「お姉様とは、逢えずじまいと……」


 中々に重たい話ですね。

 東の魔王の一人。

 元々は、お淑やかな緒方ですか。


「一度だけなぁ。それっぽいのと、話をした事があんねんよ」


「っ、そうなのですか?」


「忌々しいけど、あの糞龍が言うてた事な……ドンピシャやったわぁ」


「あのっ……先程から言っておられる、糞龍とは、誰なのでしょうか?」


「ウチをこんなんにした、化物やなぁ」


 この東の地にて、数体確認されている魔王の一体であり、そのスキルは災害級。

 田畑を腐らし、川を飲めぬ水と変え、幾つもの国を、滅ぼして来た魔王。


 その魔王の今の姿が、何と言うのか。

 片目が潰れ、両脚が無く、この様子を見る限り、恐らく身体の中も、ボロボロだろう。


「魔王が、化物と称する存在ですか……」


「そやで。手を出したらあかんモンに、手を出してしもうたからなぁ」


「……それは、聞いても宜しいので?」


「言う訳無いやろ。流石にこん話は、愚か過ぎて残したく無いねん」


 それは、少し残念ですね。

 魔王から話を聞けるなど、そうそう出来る事では無いので、頑張りたいのですが。


「ふぅ……あかんっ、ちと疲れたわ」


「お客人。申し訳無いが、ここ迄にして欲しい」


 ぐっ、まだ聞きたい事が沢山有るのにっ。


「そっ、そうですか。それでしたら、また何かお話が有れば、是非お呼び下さい」


「すまんなぁ。また頼むわ」


「お願い致します。それでは、失礼を……」


◇ ◇ ◇


「ダラク様。余り無茶を、なさらないで下さい」


「ははっ、すまんかったわ。流石にっ、まだ動くもんちゃうなぁ……」


「っ、あの薬さえ、もっとあればっ……」


 糞龍が渡して来た薬かぁ。

 ウチの千切れた腕治して、腰下まで治した不気味な薬やけど、何やろなぁアレ。

 あの糞龍。ジアストールの糞龍やろうけど、ホイホイとは寄こさへんやろうし。


「生きてるだけ、儲けモンや」


「必ずっ、手に入れます。ダラク様のお陰で、我々は助かったのですっ……」


「さよか。ほな、のんびり気長に待つわ」


「はいっ。必ずやっ」


 こん子らも、同じスキルを持つ者探すついでやったけど、気付いたら沢山集めてもうたわ。

 ウチらと同じ顔の所為で、酷い目におうてもうたのに、文句の一つも、言うてけえへん。


「ホンマに、悪い事したなぁ。すまんかった」


「ダラク様?」


「いや、自分らに謝ってんねんで?」


「なぜですか?」


「見た目の所為で、酷い目におうたやろ」


「見た目? 奴隷商に攫われるぐらい、可愛いですもんね」


「えっ? 何言うてんの?」


「気にしておりません。と言う事です」


 はぁぁぁ、何やこん子ら。

 昔のウチらより、根性あるんちゃうの。

 なぁ、姉やん。


「そう言えば、ダラク様のお姉様。お名前を聞いた事が、無いですね」


「んっ? 言ってへんかったっけ?」


「はい。一度もお聞きした事、無いですね」


「そやったか……リザナ、リザナ・オルカスって言うねん。ウチの大好きな、姉やんや」


 昔は良う、大きい胸に抱きついたりして、甘えとったなぁ。


『いつ迄甘えとるんじゃこんボケェッ!!』


「ひゃいっ!?」


「ダラク様、どうされました?」


「いや……何でもない……です」


「? おかしなダラク様ですね」


 今の声、姉やん? こん子、まさかな。



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