表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

370/417

間話 魔王ダラクの昔話.1



 むかーしむかし、とある東の端っこの村に、双子の姉妹が居りました。

 目付きは鋭いものの、とても美しい娘達。

 互いが互いを支え合い、戦続きの東の地で、懸命に生きておりました。


 その双子、顔や背丈は同じなのですが、それ以外は全くの真逆。


 一人は、見事なまでの絶壁で、気が弱く、周りからは、お淑やかと思われている娘。

 一人は、見事なまでの御山で、気が荒く、周りからは、触るな危険と言われている娘。


 いつもの様に働き、いつもの様にご飯を食べ、いつもの様に、お互いを想い合う。

 そんな頑張る姿を見て、村の人達も、その双子に負けじと、頑張って働きました。


 笑いが絶えない毎日。

 優しさで包まれた毎日。

 戦が絶えないこの東の地で、それでも二人で、幸せに暮らしていました。


 そんな娘達に、転機が訪れます。

 村を治める、とても偉いお方が、一人の娘を娶りたいと、村長の元を訪れていました。


 娘達には親が居らず、村の村長が、親代わりであった為です。

 多額の金子に目が眩み、その親代わりの村長は、頷いてしまいました。


 とても偉いお方が、娶りたいと言われた娘。

 立派な御山を持つ、姉の方です。


 勿論、その姉は断りました。

 村長の顔面を殴り付け、家を破壊し、そのお偉いお方にさえ、腹ぱんをしておりました。


 そのお偉いお方は、腹ぱんをされたにも関わらず、何故か喜び、その姉を部下に拘束させ、そのまま連れて行ってしまいました。


 妹は、何も出来ずに、見ている事しか、出来ませんでした。

 妹は、堪え切れずに、泣きだします。

 倒れている村長を、踏み付けながら、何日も、何日も、泣いておりました。

 気が付けば、村長は事切れておりました。


 妹は決心しました。

 攫われた姉を、絶対に助けると。

 村長の亡骸を、最後に蹴り上げ、その妹は、村を出て行きました。

 

 お淑やかと言われた娘はどこへやら。

 姉を追う旅の中で、妹はメキメキと、力を付けていきます。

 凡そ人とはかけ離れたチカラ。

 その娘を見たものは、必ず死を迎える。

 

 そしてとうとう、妹は到着しました。

 姉が居るであろうお城へと。

 向かって来るモノ共を蹴散らせながら、奥へ奥へと進んで行きます。


 大好きな姉に会える。

 あの時に、助けられずに御免なさいと、伝える事が出来る。

 そう思い、城の最奥へと、足を踏込み入れました。


 そこに居たのは────


 妹は、その姿を見て、泣いてしまいました。


 ぼろぼろになった、姉の姿。


 姉の目には、色が映っておらず、手足の腱が斬られ、身体のあちこちには、裂傷の痕が残り、あの気性の荒い、姉とは思えない姿。


 一時の油断。


 姉に近付こうとした時、妹の胸から、一本の槍が、突き抜けました。

 そして直ぐに、もう一本。

 更に追加で、もう一本。


 それでも、妹は倒れません。

 歯を食いしばり、ゆっくり、ゆっくりと、姉に向かって、歩いて行きます。

 

 そして、拳を握り締め、姉の顔面に向かって、その拳を振り抜きました。

 

 力の無い一撃。

 されど、想いのこもった一撃。

 妹は、姉の目の前に、倒れてしまいました。

 

 城の者達が、続々と集まって来ます。

 倒れている妹に、とどめを刺すべく、ゆっくりと迫って行きます。

 

 そして、一本の槍が、倒れている妹の胸に、突き立てられました。

 城の者達は、そこで安堵したのです。


 立てぬ筈の"姉"が、立っているにも関わらず、安堵してしまったのです。


 その姉は、一瞬にして、その場に居た全ての者を、粉々にしました。

 そして、倒れている妹に手を差し伸べ、そのチカラを行使します。


 そのチカラとは、『交換』。

 

 妹が得たスキルを取り込んで、自ら得たスキルを与える、固有のスキル。

 姉は、あの一瞬で、『魔王』と成ったのです。


 姉は直ぐ様、妹のスキルと、自らのスキルを交換しました。

 妹のスキルは、癒す者。

 姉のスキルは、獄雨。


 それを交換して、直ぐに妹を癒します。

 しかし、傷は塞がりましたが、肝心の心の臓が、全く動きません。

 何度も、何度も、スキルを行使しますが、動き出す気配が、全く無いのです。

 

 姉は、泣き叫びました。

 私の所為だ。

 私を助けようとしたからだと。

 声をあげて、泣き叫びました。


 そうして居ると、姉の目の前に、一人の白き翼を持つ者が、現れました。

 その者は言います。

 自らの心の臓を使えば、妹を助けられると。


 姉は懇願しました。

 妹を助けたい。

 妹の為ならば、何でもすると。

 

 白き翼を持つ者は、"笑み"を浮かべ、とある方法を、姉に教えました。

 

 自らの心の臓を抜き取り、妹の胸に突き刺し、癒しのスキルを発動させる。

 自らの空いた胸に、魔物の魔石を差し込み、癒しのスキルを発動させる。

 

 姉は、直ぐに行動に移しました。

 自らの心の臓を抉り取り、妹の胸へと突き刺し、癒しのスキルを発動させ、自らの胸には、白き翼を持つ者が渡して来た、真っ白な魔石を、差し込みました。


 少ししたら、妹の胸が上下して、小さい寝息が聞こえます。

 姉は喜びました。

 涙を流しながら、喜びました。


 白き翼を持つ者は、"笑み"を浮かべます。


 姉は、少しずつ、その姿を変えていきます。

 胸元から、徐々に、徐々に、先程差し込んだ魔石が、侵食していきます。


 そしてとうとう、身体全てが、魔石と化して、しまいました。


 


 妹は、目を覚ましました。

 死んだ筈なのにと、自らの体を確認します。

 受けた傷が一切無く、理解出来ません。

 

 しかし、理解出来なくとも、分かる事はあります。目の前に、魔石と化した、姉が居るのですから。


 その側には、白き翼を持つ者が居ました。

 その者は言います。


 この姉のカケラを、同じスキルを持つ者へ、取り込ませなさい。

 そうすれば、貴方の姉は、帰って来ます。

 そう言い残し、白き翼を持つ者は、その姿を消しました。


 妹は、理解しました。

 自らに宿るスキルが、消えていたから。

 姉の想いを、感じるから。



 姉を助ける為に来たのに、その姉に助けられ、姉をこの様な姿に、変えてしまった。


 妹は、そのスキルを、解放しました。


 東の地に、『魔王』として君臨する者。


 悪魔族、ダラク・アトゥナ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ