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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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間話 荒れ果てた地の再開発.3



 簡易小屋を建て、周囲の状況を確認した後、夕暮れが近付いて来たので、今日はここに泊まる事にした。

 その簡易小屋の中で、やたらと流君が、この地で育てろと推して来る作物。


「ふむ、これが和土国で手に入れた、"苗"であるか。これがあの、"米"になるのだな」


「そうそう。村長も一度、王都の城で食べた事あるだろ? どうせ一から畑作るなら、これ育ててみないか?」


「米であるか……ミルン君。この米とやらは、この地で育てるのに適しておるのかね?」


「うーん、雨がどれぐらい降るかなの。あの川が氾濫して、稲が水に沈んだら、せっかくのお米が台無しなの」


「雨であるか……あの川から水を引く訳であるから、水路作りもせねばならぬな」


 この米と言う食べ物。

 以前王城で食した際は、腹持ちが良く、中々に美味であったな。

 出来ればこの地で栽培して、パンや肉に並ぶ、主食としたいのだが……こればかりは、試行錯誤であるな。


「先ずは、その苗を育てる物達が、しっかりと暮らせる環境を整えねばな。流君、話はそれからであるぞ」


「分かってるって。でも、何を育てるのかの案としては、悪く無いだろ?」


「悪くは無いが、そもそも何故米なのかね? ムギでは駄目なのか?」


「分かってて聞いてるな村長。まぁ、誤魔化す気も無いけど。この米でも、保管さえしっかりしてれば、数年間は備蓄出来る」


「矢張りか。腹持ちが良い食材が、数年分備蓄出来るともなれば、芋も併せて育てておけば、飢餓対策になるか」


「芋は遠くで育てるの。近くで育てて病気になったら、一気におじゃんなの」


 作物連鎖であったか?

 ファンガーデンで、流君が言っておったな。

 ミユン君が住んでおる、ファンガーデンならばいざ知らず、この地では徹底して、作物の管理を行わねばならぬ。


「まぁまぁミユンさん。お米が出来たら、ファンガーデンに卸して貰うから、ここは力を貸しといて、安く買い叩こうぜ」


「と言う事なら、力を貸すの」


 この二人、抜け目ないのである。


「安く卸すのは、"ファンガーデンだけ"で良いのであるな?」


「そりゃそうだろ?」

「女王には、高く売り付けるの」


「あい分かった。それであれば、ミユン君の力を、貸して欲しいのである」


 ファンガーデンに安く卸したとしても、この広さの土地なのだ。ミユン君の力を借りれるのであれば、充分採算は取れるであろう。


「それなら、ミユンの管理する土地の広さで、対価のお米の価格を決めるの」


「っ、そう来たであるか……」


「村長は甘々なの。全部の土地を、ミユンが管理するのなら、寧ろ対価を要求するレベルの広さなの」


「……その対価とは、何かね?」


「取れたお米の五割を、ファンガーデンに無償提供なの。こんなの払える?」


「五割っ、無理であるな。税の事を考えれば、無償提供だと厳しいであろう」


「でしょ? 楽は出来ないの。アドバイスはサービスでしてあげるから、コツコツ頑張って、作物を育てるの」


 ミユン君は、中々の策士であるな。

 アドバイスはサービスであるか。

 有償とも、無償とも、言っておらぬな。


「それで、アドバイス料は幾らかね?」


「どうするパパ?」

「んーっ……村長付き合い長いし、お米の為だから、お金は要らんだろ?」


「と言う事なの。村長で遊ぶと楽しいの!」


「……勘弁して欲しいのであるっ」


 私は遊ばれておったのか。

 そう言えば、精霊とは長き時を生きる者。

 見た目に惑わされておったが、ミユン君の実際の年齢を、私は知らぬ。


「女の子に年齢は、聞いちゃ駄目だよ?」


 心を読まれたっ!?

 いや、私の言動や表情から、考えている事を予想したのであるな。


「……その様な事は聞かぬよ」


「んっ? ミユンってダラクより歳上じゃね?」

「パパ? しゃらっぷっ!」




 ゴンッゴンッ────『むにゃむにゃ…すぅ』


「むぅっ……」


 ゴンゴンッ────『があああっ…ごおおおっ…』


「ぬぅっ?」


 さっきから、この変な音は何かね。

 流君もミユン君も、ぐっすり寝ておるが、気になって眠れぬでは無いか。


 ゴンッゴンッ────「また……」

 

 この様な夜更けに、何なのだ?

 この音の所為で目が覚めて、寝るに寝れぬ。

 仕方無い、確認してみるのである。


 ギイイッ────「扉の先は、異常無しか」


 であるならば、裏?

 魔物であれば、即潰さねばな。

 足音を立てぬ様に、そっと……何だ有れは?

 

「あの川向こうに居た、昆虫型の魔物?」


 ゴンッゴンッ────『シシャアアアアッ』


「何故小屋に、突撃しておるのだ」


 ゴンッゴンッ────『(ガリッ)フシシシッ』


「ぬっ、欠けた木屑を喰っておるだとっ!?」


『シャッ!?』


 しまったっ、気付かれたかっ!

 小屋を削り喰う魔物なぞ、不気味過ぎて逃す訳にはいかぬぞっ。


 ドンッッッ────「一気に近付いてっ、殴るのであるっ!!」


 頭を狙い拳を振り抜く。

 一撃必殺。『パンッ』と弾ける音と共に、昆虫型の魔物の頭を、粉々にした。


「ふむ、この一体だけであるか……」


 しかし、この魔物は……魔石が無い? 魔物では無く、普通の虫なのであるか?

 この様な虫など、ジアストールでは見た事が無いし、何故小屋を喰っておったのだ。


「それにしても、大き過ぎであろう。ミユン君の頭程有るぞ……」


 これは、害虫対策をしっかりせねば、作物を育てる前に家が建たぬでは無いか。

 



『で、ミユンさんや。実際は何歳なんだ?』

『黙秘するのっ!』


『俺のお父さんと、知り合いだったから……』

『それ以上考えたらっ、シャルネを突撃させるのっ!』


『……頼むから、夜這いさせんの止めてね?』

『なら、年齢の事は言わないの。パパは失礼なの!』


『黒姫みたいに、大きくなれるのか?』

『あれは、黒姫が意味不明なの!』


『やっぱり黒姫だけなのか……黒姫と同い年?』

『あんなババアと一緒にしないでっ!!』


『黒姫さんや……ババアって、言われてるぞーい』



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