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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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間話 貧乏籤を引いた者達



 お父さん、お母さん、お元気でしょうか。

 私は今、帝国の首都サハロブで、何故か出向行政官として、働いています。


 門兵の下っ端だった私が、今や陛下の腹心となり、部下を持ち、あとは幸せな結婚だけ。

 そう思っていました。

 そう思っていたんです。

 はい。帝国の馬鹿が、ジアストールの領地に攻め込んで来て、戦が始まりした。


 頭が痛くなりました。

 陛下自ら、王都の軍を率いて砦まで向かい、愚か者共を叩きのめすと、やる気満々なのですから。


 兵達を招集し、食糧を積み込み、それこそ異常な速さで出陣しました。

 陛下がファンガーデンの軍を見て、その迅速な行動に悔しがり、感化されてしまった所為ですね。

 

 正直良い迷惑です。


 道中、あの流さんとお会いしましたが、あの人?も、陛下に並ぶ異常者です。


 何故マッスルホースと並走出来るのか。


 意味が分かりません。

 しかも、陛下と話をした後に、我々を置き去りにして、一瞬で遥か先まで爆走ですよ。

 異常者だらけのジアストールです。


 しかし、その異常が、日常なのでしょう。

 二月半かけて、北の砦に来てみれば、おかしな事だらけでしたから。

 

 傷を受けたと聞いていた、アッパー辺境伯が、獣族達に混ざって、砦の補修作業をしていたのです。

 しかも、ファンガーデンの兵達の指示に、従いながらですよ? 一兵士に従う、辺境伯とは?

 

 後から聞いた話では、少しでも体力を回復させる為に、アッパー辺境伯自らお願いして、従っていたとの事。

 アッパー辺境伯も、ファンガーデン色に、染まったのでしょう。そう納得する事にしました。


 それから半年が経ち、砦の補修が完了して、いざ帝国へ攻め入らんと会議をしていると、流さんより伝令が来ました。


『戦終わったから、ルシィ連れて、首都までさっさと来い。早く来ないと、帝国に移住しちゃうかもねっ! 小々波流より、愛を込めて』


 その文の何処に、愛があったのか。


 陛下は暗部を呼び出し、私の首根っこを掴み、キングマッスルホースに飛び乗って、鬼の様相で、帝国の首都まで駆け抜けました。


 寝るのは三日に一回。

 お手洗いは……書きたくありません。

 食事は、キングマッスルホースの上で、激しく揺られながら食べる。

 周りには、黒外套の暗部の集団。


 今から帝国に、突撃かます訳では、無いですよね?

 

 四ヶ月半かかる行程を、三月まで短縮できました。

 わーいわーい。

 その時だけは、笑顔を浮かべ、力を込めて、陛下の頭に拳骨を落としました。

 暗部達も、サムズアップしてましたね。

 

 それが間違いだったのでしょう。


 首都サハロブに到着するなり、陛下と、帝国の皇女の間で、終戦宣言がなされ、調印式が執り行われました。


『帝国領土の一部を、ジアストールに割譲する』

『国宝を数点、ジアストールに進呈する』

『物の輸出入の税を、五年間免除とする』

『出向行政官として、ラナ・セルブ・ヴァリオルを、着任させる』


 ジアストール側の勝利ですね。

 陛下は何も、していませんが。

 しかも、最後の文面。

 私に何の相談も無く、知らない間に、出向行政官ですよ?

 しかも、私に家名何て無かったのに、勝手に家名を決められて、『はい着任!!』


 誰ですか? ラナ・セルブ・ヴァリオルって?

 はい私です。

 流さんには、貞操帯さんって、言われてましたね。

 門兵だと、アレが無いと襲われますから。

 男だらけでしたし。

 

 そんなこんなで、帝国の民達の為に、こうして粉骨砕身働いて居るのですが、兎に角量が膨大なんです。

 帝国の領土は、ジアストールの十倍以上。

 と言う事は、仕事量も十倍以上。

 帝国の文官達は、軒並みあの世に旅立った様なので、生き残っていた地方の文化を掻き集め、少しずつ復興を、前に進めています。


 ファンガーデンの兵達は、知らない間に消えていました。

 流さんも、『じゃっ、あと宜しくー』とだけ言うと、そのまま外に行かれました。

 はい、丸投げですね。


 しかし、陛下も流さんも帰りましたが、一人だけ残らされている方が居ます。ファンガーデンの表の代表である、ヘラクレス・ヴァント様ですね。


 本人は、『ミウとメオが待っているのである!』と、帰る事を切望していましたが、陛下からの命と、皇女からの要望で、『割譲される地を治める、領主』とされた様です。


 ご愁傷様です。

 その割譲された地が、辺境となる訳ですから、仕事量は、私の比では御座いません。


 今頃は、割譲された地で、あれやこれやと頑張っているのでしょう。もしかしたら、流さん達が手伝っているのかも知れません。


 こちらの方も、手伝って欲しいモノです。


 お父さん、お母さん。

 アレやコレやと愚痴を書きましたが、私は元気に働いています。

 落ち着いたら、また手紙を書きます。

 ラナ・セルブより。



 追伸、陛下からの贈り物が届いたら、一度床に投げ捨ててから、貰って下さい。



 

 貧乏籤を引かされた二名


 戦で荒れ果てた新領地の開拓。

 ヘラクレス・ヴァント


 戦後処理出向行政官

 ラナ・セルブ・ヴァリオル


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