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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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不完全燃焼の終わり方



 ドルジアヌ帝国の首都、サハロブに到着するのに要した時は、凡そ六ヶ月。

 国境から、少数精鋭で出発したのにもかかわらず、それ程の月日がかかってしまった。


 途中の町や村などで、亡くなった者の埋葬や、野良グールの対応に追われて、進行速度が上がらなかった所為である。


 これがもし、大部隊で移動していたら、更に時間を要しただろう。


 そして現在、エグル宮殿とやらを調査中。


 門は無かったのかって?

 痩せ細った帝国兵が、何の抵抗もせず、すんなり開門しやがったぞ?


 首都だけあって、ぱっと見は小綺麗な町並みだったけど、ふと裏通りを覗くと、腐臭漂う死体の山。

 リティナ曰く、餓死者が多いらしい。

 内戦ばっかりバカスカしてたから、食料難に陥り、首都ですらこの有様。


 正しく、不毛な争いってやつだ。


 何も生み出さず、何も得るモノも無く、ただ消費するだけの、愚かな争い。


「一番の被害者は、巻き込まれた国民だな」


 その愚か者を潰しに来たんだけど、どこを探しても、見つからない。

 姫さんが教えてくれた、最奥の隠し部屋に、生活していたであろう痕跡はあったが、朕野郎の姿が見当たらなかった。


「んで、死体はコレ一つだけと。誰だこいつ?」


「知らぬな。ケネラ皇女よ、この者に見覚えは無いかね?」


「……御座います。この者の名は、アルバリル。アルバリル・モノ。北の魔王の、一人ですわ」


 この死体が魔王?

 北の魔王って、確か二体居るんだよな。

 あのオカマは、汚い花火にしたから良しとして、最後の一人が……こいつ?


「何で魔王が死んでんだよ……」


「ここで何か有ったのであるか。争った痕跡も無く、ただ死んでおるなど……異常であるな」


 異常過ぎるんだよなぁ。

 あの朕野郎も、まだ見つかって無いし。

 アレスさんとマロンが、血眼になって、宮殿内を探してるけど、この感じだと……。


 キュッキュッ────『朕朕どこなのーっ!』


 キュッキュッ────『あっち探すのっ!』


 ここの石畳、グリップ効き過ぎだな。

 ミルンとミユンの革靴が、スポーツシューズみたいに音だしてるじゃん。


「あの朕野郎、国放置して逃げやがったな」


「逃げる場所など有るのかね?」


「帝国は広いんだろ? 何処ぞで隠れて、何かしようと企んでるとか?」


「兵も居らぬのにか?」


 ぐっ……だよなぁ。

 魔王も消えて、動かす兵は居らず、帝国自体がいつ終わってもおかしく無い中で、何が出来んだよって話か。



『何処だあああ──っ!! サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ──っ!!』


『天使様! 彼方を探しましょうっ!』


 

 アレスさんガチで怖いな。

 マロンも物騒なモノ付けて、見つけたら本気で殺る気満々じゃん。



 キュッキュッ────『お父さーん! どこ探しても、朕朕居ないのー!』


 キュッキュッ────『パパーっ! ミルンお姉ちゃんの言葉が汚いのーっ!』


 

 やっぱ、見つから無いか。

 これはアレだ。

 物凄く嫌な、後の読め無い終わり方だ。


「こんだけ探しても、見つから無いんだ。これ以上は、時間の無駄だな」

 

「うむ。国境に伝令を送り、ケネラ皇女との会談でもって、終戦とすべきであろう。ケネラ皇女も、それで良いであろうか?」


「勿論で御座います。何卒、我が帝国に、御助力賜りますこと、伏してお願い申し上げます」


「だってさ村長」


「流君の方が、私より上位者であるからな。絶対に逃がさぬぞ?」


 おぉーっ、村長が切り返し上手くなってる。

 ちょっとだけ感動もんだ。


「んじゃ、ルシィ来るまでに、少しは明るくしとこうかね。姫さんとお付きの人も手伝え」


「何をなさるのですか?」

「勿論、お手伝い致しますが」


 この首都を、多少マシにする。

 今この都市に、最低限必要な事は何か。


「五十名の隊員全員で、炊き出しの準備をする。材料は、『空間収納』っと。山程あるから、多少は持つだろ?」


 ────ズゴオオオオオンッッッ!!

 

 あっ、肉や魚で、部屋埋まった。

 まぁ冷えた場所だし、ここなら良い感じで、長持ちするだろ。


「流君……何故ここで出すのかねっ!?」


「「おお……神よっ」」


「また姫さんとお付きの人が……それされんの嫌だって言ってんのに。地味に怖いんだよ」


「お肉がいっぱいなの!?」

「パパ何するの?」


「丁度良いところに。ミルン! ミユン! 宮殿内の隊員を宮殿前に集めて、救護所の設営と、炊き出しの準備を頼む!」


「かしこまっ!」

「りょっ!」


「えっ、今二人共端折った?」


 別に良いんだけど、ドゥシャさんの前でそれやったら、多分物凄く怒られるぞ。

 気を付けてくれよ、二人共。




『姿を現せえええ──っ!! サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ──っ!!』


『天使様! 彼方を探しましょうっ!』




 それじゃあ俺は、あの二人をどうにかして、全力で止め無いとね。

 あの感じ……止まるのだろうか。



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