パッと見ただのエロ悪魔.1
ミルンと別れた二日目の朝。
テントから出て、陽の光を浴びていたら、遠くからミルンの声と共に、土煙が迫って来た。
ズドドドドッ────『ただいまなのーっ!』
色々とスッキリしたんだろう。
それはもう、尻尾の振り具合が凄いのなんのって。ニアノールさんが目で追い切れない程、振りまくってますから。
何事も無く帰って来てくれて、安心したよ。
本気でほっとした。
万が一ミルンに何か有れば……考えただけで、ゾッとするわ。
今は馬車の中で、軽く報告を受けている。
御座る影さんに、元気っ子影さん。
ミルンにミユンが引っ付いて、後は……知らない巨乳が居るんですけど?
「……んで、この巨乳は誰だ?」
「何でだよ!?」
「お父さん、コレがアトゥナなの」
「お胸に何詰めたの?」
「ミルンさんや、嘘はいけないぞ?」
青の瞳に褐色肌、白髪の目付きが悪いと言う特徴は合ってるけどもだ。アトゥナはリティナと同じ、立派な無い乳娘の代表じゃないか。
「こんな立派な御山は無かっただろ? 服もぴちぴちで、立派な翼が有って……エロ悪魔?」
「殴るぞ流のおっさんっ……」
「アトゥナに欲情したら、玉捥ぎ取るよ?」
「パパの悪い性癖なの」
「その言い方……マジでアトゥナなの?」
「俺以外何なんだよっ!」
「えっ、だからエロ悪魔?」
「だれがエロ悪魔だ──っ!!」
スパーンッッッ────「痛っ!?」
えっ!?
今のアトゥナの一撃っ、頭に受けたら、普通に痛いんですけど!?
「お父さんにダメージ通ったの!」
「アトゥナ何したの?」
「ほぉ、これは凄いで御座るなぁ」
「実験成功っすね!」
「痛ってぇ……実験って何やってんのっ。久々に脛以外で、痛み感じたわ」
「ふーん。ダラクに半殺しにされた後、変なモン飲まされて、マジカルなパワーが乳に集まり、巨乳に成ったと言う事か」
「マジカルって何だよ……」
「お父さん、意味不明なの」
「パパは時々、頭が可笑しくなるの。ミルンお姉ちゃんの玉殴りで、正常に戻すの」
「ミユンさんや、これが正常なんだよ?」
何飲まされたのかは分からんけど、後でリティナに診て貰うか。
「それで、黒姫はダラクとやり合ってるから、まだ戻って来ないと」
「そうなの、黒姫本気で怒ってた」
「魔龍の強さの一端を見たで御座るよ」
「死ぬかと思ったっす」
黒姫とダラク。
一対一だけど、どうだろうなぁ。
ミルンは、黒姫が怒ってたって言うけど、この場所まで余波が無いと言う事は、死なない様に加減してるのか。
「手は抜かないと思うけど……」
アレで結構、優しいからな。
本気で怒っているとは言え、殺す殺さないは黒姫判断だし、大丈夫だろうか?
「……戦ってる黒姫が決める事だな」
「そうなの。アトゥナを取り返して、ミルンも一発殴ったから、後は黒姫に任せるの」
「流石ミルンさん、良く分かってんね。それじゃあ一旦馬車止めて、ご飯がてら、リティナにアトゥナの状態を診て貰うか」
「ご飯食べるっ、お肉を所望します!」
「ミユンは豚肉の気分なの!」
「はいよ、豚肉さんね。アトゥナと影さん達はリクエスト無いの? 影さん達には世話になったし、アトゥナも食いたいだろ?」
「拙者達は殆ど、力になれて居らぬで御座る。ですので、御遠『ミルン様と同じやつがいいっす!』……影、貴様っ!」
「良いじゃ無いっすかぁー! お腹すいたっす! 影はお堅いっすねーっ」
どっちも影だから、言い争っても影影影影。
頭が混乱するんだよなぁ。
「いやいや、同行して貰ったし。そんな気にしなくていいぞ、御座る影さん」
「ござっ……それでは有難く…」
「ぷぷぷーっ、御座る影っすかぁ?」
「影っ、覚えているで御座るっ」
狭い馬車内で喧嘩するなっての。
本当に、濃い影達だよ。
コンコンッ────「行軍を止めてくれ」
御者側の板を叩き、指示をす。
『了解! ぜんたーい、止まれえええっ!!』
それじゃあ、お昼の時間だな。
「ミルン、ミユン、お昼の準備を手伝ってくれ!」
「あいあいさーっ!」
「よーっ、そろ!」
この二人……どんどん変な言葉、使う様になって来たな。
一体誰が教えたのか。
「頼むから、汚い言葉は使うなよ……」
流の願い虚しく、既にミルンは、汚い言葉を連発済。
『そう言えば魔神様。少しミルン御嬢様の言葉の件で、ご相談したい事が……』
『御座る黙るの!?』
『ミルン御嬢様、どうしたっすか?』




