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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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悪と断ずる事なかれ



 矢張り空は気持ち良いのぅ。

 遮るモノが無く、ただ思うがままに、真っ直ぐに進む事が出来る。


「星々も、一層近く見えるのじゃぁ」


 玩具を蹴って、それを追いかけ、また蹴って。この様な遊びは、壊れ難い玩具があるからであろうの。


「……もう叫ばぬかや?」


 ボゴォッ────『っっっかぁっ』


 血反吐も出ぬ程、搾り尽くしたかのぅ。

 両腕から、血も噴き出しておらぬし、いつ死んでもおかしく無いのじゃ。


「和土国に、入ったばかりじゃと言うのに。今死なれては、困るのじゃ」


 ドズンッ────『っっっっはっ』


 よしよし、まだ息はしておるの。

 ここからじゃと……狙えるじゃろうか?


「ダラクや。今から、御主の住処に蹴り飛ばす故、上手く耐えてみせよ」



 神級魔法────『ジャイアント・ブロウ』

 神級魔法────『カインドネス・ブロウ』



 二つの神級魔法を展開して、鱗に覆われた右脚に練り込んでいく。

 地上でこの魔法を使っていたなら、たった一踏みで、帝国領土が割れていたであろう。

 

「光栄に思うが良いぞ。神をも穿つこの一撃、受けるのは御主で二人目じゃっ!!」


 黒姫オリジナルの、名も無き魔法。

 その魔法を宿した右脚が、音を置き去りにする速さでもって、ダラクの腹部に突き刺さる。



 ────ボシュッッッ────────



「ははっ、もう見えなくなりおったのじゃ。うむうむ、七割程なら、こんなものかのぅ」


 さてと、狙い通りに当たったかの?

 ダラクの奴も、生きて居れば良いのじゃが。


 


「ふむ、ここかや?」


 和土国の最東端に在る、小さな砦。

 その小さな砦の中央には、巨大な穴が穿たれ、その周囲には、リティナやアトゥナと良く似た者達が、忙しなく動いている。


「……リティナだらけ、アトゥナだらけ……」


 正直少しだけ気持ち悪い。

 違うのじゃ。

 本気で気持ち悪いのじゃ。

 同じ顔が……いち、に、さん、無理じゃ。数えると、頭がどうにか成りそうなのじゃ。


 ゆっくりと、穴の中へ降りて行く。

 何やら怒鳴り声が向けられたが、その怒りはダラクにこそ向けるべきじゃな。


「手を出す相手を、間違えたのじゃ……あそこが底かや」


 静かに足を付け周囲を確認。

 岩をくり抜いた、見事な作りとなっており、その中央に────銀色に輝く、人型の魔石が佇んでいた。

 

「くくっ、くはははははっ! 見事っ! 見事ではないかダラクやっ!」


 人型の魔石の側に、上半身のみと成ったダラクがいた。呼吸も浅く、今にも死にそうな身でありながら、力強い眼差しを向けてくる。


「力を振り絞ってかや? よもや、この魔石にぶつからず、御主も生きておるとはなぁ」


「や……ろ」


「止めろと申すか? そちらが手を出して来なければ、アトゥナを傷付けねば、この様な事にはならなかったのじゃがな?」

 

「………ぃっ」


「謝られても困るのぉ。この様なモノが有る限り、御主は諦めぬじゃろ?」

 

 人型の魔石に触れ、ゆっくりと内部を確認。

 少しだけ肩をすくめた。


「……これはただの抜け殻なのじゃ。力だけは残っておるが、大半がアトゥナに渡ったのぅ。ふう……馬鹿らしいっ!!」


 軽く力を込め────パッアアアンッ!!

 人型の魔石を、粉々に砕いた。

 

「ぁ……ぁぁぁぁぁっ…」


「御主の姉はここに居らぬわっ! それすらも分からずに、我等に牙を向けるなぞっ、この馬鹿者がっ!!」


 恐らく、リティナとアトゥナの母に意思を宿し、戻る事無く、そのまま亡くなったのじゃろうて。



 コンッ────『ダラク様から離れろっ!』


 

 ぬっ、何じゃ……石ころ?


 

 コンッ────『ダラク様に何をした!』



 この者らは、悪魔族の子かや?

 リティナとアトゥナを縮めたかの様な、物凄く生意気そうな童なのじゃ。


『皆んなーっ! ダラク様がっ、早く来てくれえええっ!』


『くそっ、何だこれは、ダラク様!?』


『貴様がやったのかっ、像がっ、無い……?』


 何やら面倒になってきたのぅ。

 このダラク、何気に良い統治しとるのかや?

 このままここに居ると、リティナとアトゥナの集団に囲まれるのじゃ。


「ダラクよ、御主の姉はもう居らぬ」


「…………っ」


「この者達に免じて、命だけは助けてやるのじゃ。二度と、リティナやアトゥナに手を出すのでないぞ。姉の娘なのじゃろ……馬鹿者っ」


『ダラク様から離れろっ、このっ!』


 我、悪者になってるのかや?

 小娘が的確に、ローキックを入れてくるのじゃけど……とんだ貧乏くじなのじゃ。


 これはアレじゃな。東の国々を観光して、のんびり帰るとするかや。


「小娘、ダラクにコレを飲ませよ。ある程度まで、身体が再生するじゃろうよ」


『何だよっ、こんな物っ────』

 

「割ったらダラクは死ぬのじゃ」


『っ……治るのか…糞っ、ダラク様!!』


 さてっ、瓦礫に紛れて帰るのぢゃぁ。

 このサイズなら、小回りが効いて、見つかり難いぢゃろうて。


『っ、あの者は何処へ行った!?』

『ダラク様を安全な場所へ! 急げーっ!』

『探せ! ダラク様の敵であるぞ!!』




「のーぢゃぁ。久々にスッキリしたのぢゃぁ。どこから帰ろうかのぅ……和土国で、酒でも呑んで帰るとするのぢゃぁ」


 ミルンとミユンも居らぬし、影も居らぬから、ツケとやらで呑み放題出来るのぢゃぁ。



 

 和土国に到着後の黒姫


 「のっ…のぢゃああああああっ!?」


 一軒目、『黒姫様お断り』

 二軒目、『ぷにっと黒姫お断り』

 三軒目、『駄龍黒姫お断り』

 四軒目、『龍出禁』

 五軒目、『この顔見たら、傘音技まで』

 六軒目、『黒姫見つけ次第、尻を刺せ』

 七軒目、『黒姫様は甘酒なら許可』

 八軒目、『呑んだ瞬間影送り』

 『他店も守るべし。ミルンより、怒りを込めて』


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