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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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無知のダラク



「っ、全員アレを止めるのじゃ!?」


 何故彼奴がアレを知っておるのじゃっ!?

 アレは禁忌中の禁忌っ!

 神の中でもっ、高位の存在しか知らぬ筈じゃぞ!


「姉やんのカケラ、器に入れたらどうなると思う?」

『────っんく』



「ええ夜やで、姉やん」



「くっ、アトゥナを上手く盾にしおってっ!」


『あっ』


「アトゥナっ!」


『ああっ』


「ミルン離れよっ! 巻き込まれるのじゃ!」


『あああっ』


「っ、ミルン御嬢様、御免っ!」

「離すの影!? アトゥナが!」


『あああああああああああああああああああああああああああ────っ!?』


「これはやばいっす!?」



 神域魔法────『腐樹泥落』



「ここでその魔法を放つかやっ!?」


 寝惚けて放つ魔法としてはっ、最悪じゃぞこの馬鹿者がっ!?


「ダークネスオブディストラクション!!」


「黒姫っ! だめええええっ!」

「伏せるで御座るっ!?」

「逃げ場ないっすよおおおおおおおっ!?」



 『腐樹泥落』────魔法の範囲に存在するモノ全てを腐らせ、大地へと引き摺り込んでいく、広範囲殲滅魔法。



 その魔法の発動間際、黒き炎がその魔法を包み込み、一瞬にして燃やし尽くした。

 その余波がダラクとアトゥナを襲い、砂埃と共に、衝撃波を撒き散らす。



「黒姫さん何やってんすか! 危ないっすよ!」


「範囲は固定しているのじゃ! 気を抜くで無いぞ影!」



 視界を覆う砂埃が、ゆっくりと散っていき、そこには────何事も無かったかの様に、平然と立っているアトゥナと、衝撃を受け、ぼろぼろになったダラクが居た。



「アトゥナの傷が癒えておる……再生スキルを持っておるかや……」


「アトゥナ! 無事だったの!」


「下手に動くで無いぞミルン! 今刺激すればっ、また魔法を使われるのじゃ!」


「この威圧っ、魔王で御座るか…」



 本来、魔物しか宿すことが無いとされるモノ、魔石。

 魔物が魔物である為の、力の根源であり、身体を動かす為の、心臓でもある。


 人種、獣族、他種族共に、それを宿す者は限られており、俗に言う半魔と言われるモノ達しか、確認されていない。


 魔神である流ですら、魔石を有さない。

 しかし、方法は無くは無い。



 禁忌魔法『魔石化』────自らの全てを魔石と化し、それを取り込んだモノに、自らを移す。神域でも禁忌とされる魔法。



「悪魔族が、全員似ておる訳じゃな。愚かな事をしたもんじゃ」


「アトゥナ…何か見た目が変わってるの」


 今し方、ダラクがアトゥナに呑ませたモノ。

 恐らくは、魔石化した者のカケラ。

 しかし、カケラだけじゃと……全ての力、意識の移動は、出来ない筈じゃが。



「ボソッ(ミルン。我が合図したら、アトゥナを担いで、この場から離脱なのじゃ)」


「ボソッ(アトゥナどうしたの。さっき魔法発動しようとしてたけど、近付いて良いの?)」


「ボソッ(アレはただのお漏らしじゃ。流も時々、寝起きで豪炎使おうとするじゃろ。あれと同じなのじゃっ)」


「ボソッ(アトゥナがお漏らしなのっ!?)」

「ボソッ(えっ…今のがお漏らしっすか!?)」

「ボソッ(普通に死ぬで御座るよ?)」

 


「何ごちゃごちゃ言うとるんや。カケラと言えども、魔王のカケラ。これなら、姉やんの意識ぐらいは、戻るやろぉ……」


 半端な知識で、この魔法を使いおったのか。

 矢張り、愚かとしか言えぬよ、ダラク。


「ダラク。矢張りお主は、その魔法の全てを、知らぬようじゃな」


「なんやっ、どういう事や」


 一体誰が、どうやって、どう言った理由でこの魔法を教えたのか知らぬが、この魔法には、大きな欠点があるのじゃ。



「……うぇ? 何…何これ?」



「姉やん、起きたんかっ……ウチや、ウチの事分かるか、姉やん?」

 

「えっ、姉やん? 手脚治ってるし、顔が痛く無い? えっ?」


「姉……やん?」


 意識が戻った────『今じゃっ!!』


 影二人が、呆然と立ったままのアトゥナに肉薄し、両脇を抱えて逃走。


 ミルンは、ダラクの眼前に一瞬で移動して、拳を握り、ダラクの顔面に向かって、全力パンチ!! を撃ち込んだ後、尻尾を振って逃走。


 ダラクは────『ぶふっ!?』

 油断していたのだろう。

 ミルンの全力パンチを、何の防御も無しに顔面で受け、そのまま転がって行く。



「ダラクや。禁忌に手を出し、アトゥナを変質させた罪。御主は、我の手で消してやるのじゃ……」

 




 アトゥナの救出に成功!!

 影二人がアトゥナを運ぶ中、ミルンのお目々は、アトゥナのとある場所ばかり見詰めている!!

 アトゥナは一体、どの様な姿に成っているのか!

 ミルンの視線の意味するところは?


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