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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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アトゥナ救出部隊





「お父さんの許可を貰ったの! 影達来るのおおおおおお────っ!!」


 ミルンが叫んだ。

 それはもう高らかに、天に向かって叫んだ。

 両手を上げ、まるでそこに、元気◯を集めんとせん勢いで。

 しかし……何も起きない?


「……影さん達、来てないよな?」


「むぅ……居ないのである」


「ミルンお姉ちゃん失敗した?」


「かっ、かか影は来んで良いのじゃ!」



 周囲を見ても、正に影も形もない。

 ミルンが両手を上げ、尻尾をピンっとしたまま、固まってる。

 少しずつ尻尾が下がってきた。

 シュンっとなった。


「影来るのおぉぉぉっ……」


 若干涙目になっちゃったよ。

 でも、これでミルンは、アトゥナを追う事が出来なくなったな。


「影さん来ないから、追う事は出来ないぞ」


「何で影来ない……」

「きっとお昼寝中なの。また呼べば来るの」


 影さんが昼寝?

 それはそれで見てみたい気もするけど、来れないのなら一安心だ。


『影にも色々有るで御座るが故に、モグモグ。和土国で置いて行かれた時は、モグモグ、びっくりしたで御座るなぁ』


「それは仕方無いだろ? 元々、黒姫を呼ぶつもりじゃ無かったし、向こうにも戦力置いとかないと、ダラクを抑えれないと思ったんだから」


 黒姫とダラクを、こっちに呼んじゃったから、こんな事になったんだよなぁ。

 これも、俺のミスだ。


『あー、死ぬかと思ったっす。ゴブリンの養殖場とかっ、連邦はヤバいっすねー』


「報告書にあったゴブって、養殖されてたのか? ゲテモノ喰いにも程が有るぞ……」


『持って帰ろうとしたら見つかって、危うく戦闘になるとこっすよ。セーフっす!』


 持って帰ろうとすんなよ。

 アレか……ルシィに喰わせる為に、持って帰って来ようとしたのか。

 

「流君……」


「どうした村長? そんな変なモノを見る目してさ。何かあったか?」


「後ろに居るでは無いか」


「何がだよ……後ろ?」


 村長に言われ、後ろを振り返ると、和装影さんがご飯をモグモグと食べ、黒外套の影さんが地面に寝そべっている。


「んだよ、ただの影さんじゃん」


「うむ、影殿であるな」


「んんっ? ……影さん?」


「……そうであるな」


「影さんじゃん!?」

「影来たのおおお────っ!!」


 ミルンガッツポーズしちゃったよ!?

 いつの間に背後に来たの! 何か呑気にご飯食べてるし!?


「ふぅ…食べたで御座るっと。ミルン御嬢様の呼び掛けに、この影、馳せ参じまして御座る」


「他の影は来てないっすね? 陛下が動いてるから、その護衛っすかねぇ。来たっすよーミルン御嬢様!」


 コレまた……中身が濃過ぎる影が来たなぁ。

 御座る影さんと、元気っ娘影さん。この二人混ぜても、大丈夫なのか?


「濃ゆい影が来たの。ミルンお姉ちゃんが、少しだけ心配なの」


「ミユンさんや、口に出してはいけないよ?」


「濃ゆい影でも影は影なの。お父さん……コレでミルンが動けるの。保存食下さいな」


「っ……無茶な事はしないと、約束出来るか? 影さん達の言う事聞いて、勝手に突っ込んだりしないか?」


「しないの。アトゥナを助けたら、全速力で逃走するの。最悪、御座るかうざ子を生贄にして、時間稼ぎで逃げるの」


 御座るにうざ子って……確かにあの元気っ娘の影さんは、若干うざったらしいけど。


「状況は分からぬが、御安心召されよ魔神様。ミルン御嬢様をお護りする事こそ、ミルン御嬢様親衛隊の務めに御座る。ミルン御嬢様には、傷一つ付けぬで御座るよ」


「そうっす! 何を安心するのか、いまいち分からないっすけど、ミルン御嬢様はお護りするっすよ!」


 この二人、ミルン親衛隊の影さんだったのか……どうりで濃い訳だわ。

 止める事は、出来そうに無いなぁ。

 仕方無い。


「ミルン!」


「はい!」


「領主として命令する。ミルン、黒姫の両名にっ……アトゥナ救出を命じる!!」


「了解なの!」


「のぢゃっ!? 影も一緒なのかや!?」


「大丈夫っすよ黒姫様! 私らは、黒姫ファンクラブの影じゃ無いので、安心するっす!」


 そんなファンクラブあるの?

 それじゃあ、いつも黒姫を玩具にしてる影さん達が、ファンクラブの面々か。


「ボソッ(帰ったら確認して、黒姫をその影さんの群れに、投げ入れよう)」


「今流何言うたのぢゃ!? ボソッと何か言ってたのぢゃ! 悪い事考えておるのぢゃ!!」


「そんな事考えてないぞ。ライオンの群れに兎を入れたら、どうなるのかなって……少し考えてただけだ」


「嘘なのぢゃ!? 悪い顔してるのぢゃ!」


 へいへい、悪い顔ですよっと。

 そんじゃあさっさと、行動開始しますかね。




「アトゥナ救出隊! 出動なのっ!」


「……頼むぞ影さん。ミルンが我儘言って、ダラクに突進しない様、見張っててくれ」


「承知で御座る。敵将の首っ! この影が見事っ、打ち取って見せましょうぞっ!」


「ダラクって誰っすか? 取り敢えずぶっ飛ばせば良いっすよね?」



 不安しか、無いんですけど?




「なぁ……ニア」

「どうかされましたかぁ?」


「何かあそこ、人数増えてへん?」

「あらぁ……影さんですねぇ」


「ウチら完全に、蚊帳の外やん」

「あそこに行ったらぁ、巻き込まれますよぉ」


「それは、嫌やな……」

「ヘラクレス様もぉ、黙ったままですねぇ」


「ヘラクレスの奴、ようやっとるわ」

「どうやらぁ、ミルンさんが動く様ですねぇ」


「流にーちゃんよう許したな……だから影呼んだんか?」

「逃げたダラクも真っ青ですよぉ」


「……そやろうな。ジアストールの暗部に追われるや何て、ゾッとするわ」

「黒姫さんも行くっぽいのでぇ、小国なら簡単にぃ、落とせますよねぇ」


「……この部隊て、化物だらけやな……」

「そうですねぇ」



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