帝国内地をぶらり旅.3
馬車の中が混沌となったので、村長と入れ替わりました。
あの姫さん?
無理無理。俺と話す気全く無いもん。
村長を生贄に、自由を召喚!!
「外は気持ちいいなぁ……」
「お馬さん、はいよー」
「良い肉質なの。絶対美味しいお肉なの!」
「はいはい二人共。お馬さんの上で、暴れちゃ駄目だぞ」
はい。村長の乗ってたマッスルホースを、パクりました。
中々頭の良いマッスルホースで、俺が乗り馴れてない事を分かってか、歩くスピードがゆっくりなんだよ。
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「良質お肉を下さいなー」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「馬肉のユッケが食べたいのー」
ミルンとミユンのエグい歌。
ずっと聞いてると、何か肉が食べたくなって来るんだよなぁ。
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「後バラフタエゴバラロースー」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「タテガミこりこり美味しいなー」
ミルンさんや。マッスルホースを食いたい事が、良く分かる歌だね。
マッスルホース、若干震えてるし。
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「今日のご飯は何なんだー」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「それはお前のブリスケだー」(じゅるっ)
『ブルゥッ……ヒヒッ!?』
ミルンの涎、マッスルホースの首に垂れてるよ……こりゃ怖いわ。
おっ、ニアノールさん近付いて来る。
リティナを後ろに乗せて、珍しい光景だぞ。
「なんや、凄い歌聞こえんな。マッスルホース怯えとるやん」
「他のマッスルホース達もぉ、震えちゃってますよぉ。もう少し、声を抑えて下さぁい」
「んな事言われても、暇だからな。ミルンとミユン楽しそうだし、許してくれよ」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「リティナのお馬が見て来るのー」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「色白お肉が美味しそうー」(じゅるりっ)
「やめいミルン!? ウチのマッスルホースを食おうとすな!」
草原から森に入って、ずっと同じ風景だからな。ミルン、ミユン共に、飽きてるんだろ。
「リティナ煩いの。お馬さんを食べる訳無いの」
「嘘こけっ! 涎垂れまくりやんけっ!」
「涎は仕方無いの。お馬さんが、美味しそうなのが悪いっ」
「美味しそう言うとるやんっ!?」
あれだよね。関西弁っぽいリティナが、突っ込みを入れるだけで、若干漫才風になるよね。突っ込み役は大事だよなぁ。
「流にーちゃん! ちゃんとミルン教育せーや! 全然貴族の娘とちゃうやん!」
こっちに矛先向けて来やがった。
ミルンはこれでも、充分御淑やかになったんだけどな。
「リティナ。ミルンは、貴族の娘じゃ無い。俺の娘だぞ?」
「んな事分かっとるわっ!? ほんまっっっ、変わらんやっちゃなぁあああっ!!」
「リティナに変わらない、安心を……」
「安心出来るかぁあああっ!!」
「リティナ様。少し落ち着きましょうねぇ」
何かの広告の言葉だったかな? リティナには不評の様だ。面白い程顔真っ赤にして、オラオラしながら怒ってるわ。
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「なでなでお身体気持ち良いー」
「ぱっからぱっからお馬さーん」
「外モモ内モモ美味しいのー」
「あかんっっっ、ウチまでっ、馬肉食いたくなって来たやんっ!?」
「お昼に食べますかぁ?」
「食べへんよ!?」
良い感じに洗脳されてんじゃん。
和土国でお琴習った所為か、音程が良い感じなんだよなぁ。
国境を越えて三日。ようやく村らしきモノが見えて来た。
斥候で犬人を数名向かわせたけど、はてさて、敵さんは居るのかね。
「目立つ訳にはいかないから、羽人を飛ばせれないのが痛いよなぁ」
「お父さん、ミルンは行かなくても良いの?」
「行かなくても良いよ。ミルン行って敵さん居たら、問答無用で襲うだろ?」
「そんな事は……しないの!」
「ミルンお姉ちゃん、嘘は駄目なの」
「嘘じゃ無いの! 少しパンチするだけなの!」
「それ襲ってるよね?」
望遠鏡で見る限りだと、普通の村っぽいんだけど……人居るのか?
「知覚の範囲を広げるか……やめとこ。ここは斥候待ちだな」
現状、魔物だけに気を付ける。
半径一キロに集中して、襲って来そうな魔物が居たら、セーフアースに御案内。
「魔物すら居ないんだけどな」
「お父さんがまた、独り言なの」
「諦めるの。パパは中々成長しないの」
「……泣いて良いかい?」
娘達の言葉が、胸に刺さるんだけど?
しかも、上手い具合に、抉り込む様に突き刺して来るよね。
「お父さん、斥候戻って来るの」
「何か……青いお顔になってる?」
「あー、嫌な予感しかしないんだけど……」
何事も無く、首都に行きたいもんだ。




