帝国内地をぶらり旅.1
ミルンに真っ二つにされそうになった日から、三日が経った。
その間帝国からの侵攻は無く、何と言うか、あのオカマ魔王を汚い花火に変えてから、本当に暇なんです。
「ルシィの奴もまだ来ないし、俺がここに来た意味って無いんじゃね?」
「馬鹿な事を申すな流君。あの場に君が居なければ、リティナ殿やニアノール殿、他の者達が危険に晒されていたであろう」
「そうか? あの魔王なら、ニアノールさんでも、細切れ肉に出来たと思うんだけど……」
ぶっちゃけ、超がつくほど弱かったし。
俺の頭掴んで、一体何がしたかったのかも分からんし。見た目がアレなだけの、ネタ魔王だったな。
「魔王ダラクの方が、強そうだわなぁ」
「……あのリティナ殿と、似ておる魔王かね」
「そうそう、『腐臭姫』って字名の魔王だな。結構ヤバめの奴だから、黒姫引っ付けて、見張らせてるんだ」
「あの者…それ程の魔王か」
「それ程の魔王だな。俺と黒姫なら対処出来るけど、腐食耐性無い奴なら……一瞬で溶けて、御陀仏だろうさ」
俺だって、何で無事なのかが分からん。
ミユンの言い方だと、相性がどうのこうのじゃ無くて、魔王の上位互換である『魔神』だから、耐えられたっぽいんだよな。
「万が一、魔王ダラクが仕掛けてきたら……全部隊、盾や防具を傘にして、出来るだけ早く逃げる事。これを徹底しておいてくれ」
「何故傘にするのだ。接近して、溶かすのでは無いのかね?」
「恐らくだけど、広範囲スキルがあるな。ダラクに会った時、上空に紫雲浮かんでたし……予想通りなら、酸の雨が降ってくる」
「酸の雨? 酸とは一体何なのだ?」
「……村長、酸を知らないのか?」
そういや、硫酸とか塩酸とか、この世界で見た事無いな。
酸を知らないとなると……ダラクのスキル、どう説明したもんかね。
「溶岩みたいに溶ける……かな?」
「ふむっ。酸とは、溶岩の事であったか」
「違う違うっ。あくまで例えだ。触ると溶けるってところは一緒だけど、全くの別物だ」
「よく分からぬな。取り敢えず、紫雲が出た瞬間に、逃げれば良いのだな?」
「ああ、それで良い」
全力で範囲外まで逃げれば、死傷者を出さずに済む……だろうか?
「ルシィ遅いし、どうすっかなぁ……」
「いつもの流君なら、陛下を待たずに進軍するだろうに……どうしたのかね? 何か気になる事でもあるのか?」
「気になる事と言うか……折角和土国でのんびりしてたのに、働きなく無いなぁって、思ってるだけ……」
和土国のお座敷遊びもしとらんし、何で俺…こんなに働いてるんだろう。
やっぱ貴族位なんてモノ、貰うんじゃ無かったかな……返上すれば良いのか?
「そうか……返上すれば良いんだ!!」(バンッ)
おっと、勢いで机叩いちゃった。
この歳になっても身体が勝手に動くなんて、俺もまだまだ若いって証拠だな。
「待ちたまえ流君っ! 今何を考えておる! 返上とはっ、まさか……それは止めるのだ!?」
「えっ、村長俺の考えてる事分かるの?」
「働きたく無いからっ、貴族位を捨てようとしておるのだろう! それはならぬぞ!」
「わーお、村長鋭いねっ!」(両手指差しポーズ)
「君はっ、ジアストールに保護されておるのだぞ!? それが無ければっ、身分の保証が一切されぬ、ただの『危険人物』では無いか!」
「俺が危険? 人畜無害なおっさんだぞ?」
「どの口が言うっ!?」
「この口ですが?」
まったく、村長には困ったもんだ。俺が危険人物だなんて、そんな訳ないのに。
「怒るなよ村長。そんな事よりも、これからマジでどうするよ? 朕野郎潰しに行くか?」
「ふぅ……それは、陛下を待った方が良く無いかね? 帝国に攻めるとなれば、人員が足りぬ。帝国の地は広大であるからな」
「そんなに広いのか? どんくらい?」
「ジアストールの十倍以上であるぞ」
じゅっ……ジアストールって、本当に小国だったんだなぁ。
朕野郎共が内乱起こしてなきゃ、大国の物量ブッパで、こっちが負けるじゃん。
「朕野郎って、馬鹿なんだな……」
「そうであるな。大馬鹿者である」
「そんな馬鹿に、時間与えて良いのか?」
「ぬっ……どう言う事かね?」
いつの時代も、一番恐ろしいのが、権力を持った馬鹿者だ。
自分を馬鹿だと認識せず、ただ思った事を軽はずみに実行して、周りを不幸に貶める。
「馬鹿って奴は、何をするか分からんぞ?」
「……流君。ブーメランを、知っておるかね?」
「村長。俺は馬鹿じゃ無い。自由なだけだ」
「流君。自覚したまえ」
めっ、目がマジだ。
村長本気で、俺の事を馬鹿と思ってやがる。
ちょっと酷くないですか?
「ファンガーデンに…帰ろうかな…」
「帰す訳なかろう。せめて、この戦が終わるまでは、部隊を率いて貰わねばな」
「面倒臭いっ、村長やりゃ良いじゃん」
「私では、この部隊を扱い切れぬ。何もかもが特殊過ぎるのだ」
「ふーん。特殊ねぇ……」
そういや、特殊部隊作って無かったなぁ。
試しに作ってみるか?
「流君……頼むから、変な事だけはしてくれるなよ。顔に出ておるぞ……」
「変な事じゃないぞ?」
「……不安しか無いのであるが?」
流 脳内特殊部隊
斥候 犬耳 ミルン 『玉潰すの!』
前衛 筋肉村長 ヘラクレス 『限界突破っ!』
前衛 猫耳メイド ニアノール 『斬りますよぉ?』
中衛 聖女 リティナ 『なんでやねんっ!』
中衛 精霊 ミユン 『むちゅむちゅ?』
後衛 元影 アレス 『なんだ?』
後衛 養女 マロン 『天使様のご指示です』
遊衛 魔龍 黒姫 『臭いのぢゃ!』
遊衛 腐臭姫 ダラク 『おどれもやろが!』




