ミルンとミユンは混ぜるな危険.3
「お腹空いた……ようやく終わったの」
「ミルンお姉ちゃん、お疲れ様なの」
本当に疲れたの。
ルトリアも、補給部隊員も、こんなのを毎日してるなんて、感謝しかないの。
ゴギュルルッ────「ご飯の時間なの」
オーク、コカトリス、煮干しのスープも、隊員達がお代わりをして、全然残って無いの。
「……お父さんを、起こすしかない」
「ミユンも行くの! パパを一発で起こすの!」
「寝起きのお父さんは厄介なの。寝惚けて変な魔法発動させる前に、必ず意識をハッキリさせなきゃなの」
起こすなら、確実に起こすの。
下手な起こし方だと、本当に危ないの。
前に領主館で、メイド見習いの子がお父さんを起こそうとして、寝惚けたお父さんに、危うく豪炎をぶつけらそうになったの。
「ドゥシャが止めなかったら、領主館が無くなっていたの……」
「ミルンお姉ちゃんっ、テントに行くの!」
「分かったの。もうお腹ぺこぺこなの」
お父さん、すんなり起きて欲しいの。
お父さんが寝ているテントに到着。
このテント、内側から閉める仕組みで、一度閉めると、外側から開けられない様になっているの。
「厄介なテントなの……」
「ミルンお姉ちゃんの魔法なら、微塵斬りに出来る強度なの。斬らないの?」
「ミユンは知らないの。このテント、よく分からない素材で出来てて、ミルンの魔法を上手く霧散させるの」
「パパの変な知識で作った?」
「可能性はあるの。だから、魔法じゃ無くて、力尽くでこじ開けるっ」
その為の特性斧なの。
お父さんのトラウマを刺激する、豚野郎特製の大きな斧っ!
「ミユン、準備は良い?」
「いつでも来いなの!」
「行くの! せーのっ、『斬っ!!』」
────ズバアアアンッ!!
テントを『縦』にカチ割ったの。
これなら、お父さんにダメージが入って、しっかり目が覚める筈。
「斬れ味悪いの。流石オークの斧……」
「ミルンお姉ちゃん、パパは?」
「忘れる所だった。お父さーん? 晩御飯下さいなー」
おかしい……流石のお父さんも、テントがこうなったら、目が覚める筈。
中には────『なぁ…ミルンさんや?』
ちゃんと居たの。
良い感じに斧を避けたみたいで、横に寝転がりながら、万歳三唱してる。
「ミルンさんや? 俺に何か恨みでもあるの? 後少し、気付くの遅れてたら……俺、パッカーンって割れてたよね?」
「冗談は性格だけにして欲しいです。お父さんが、こんな斬撃程度で死ぬ訳無いの」
「パパなら、若干皮膚が裂けるだけで、別に死にはしない威力だったの」
「……俺今、褒められてるの? 貶されてるの? ねえ、どっちなの?」
お父さんが、面倒臭いモードになってる。
ここはアレなの。
普通に無視して、ご飯を貰うの。
「ご飯下さいな! まだ食べてないの!」
「ミユンにも下さいな!」
「話逸らされた……と言うか、もう日が落ちてたのか。俺も腹減ったし、アルカディアスのお魚と、和土国のお醤油で、煮物でも作るか?」
「お魚の煮物!? いっぱい下さいな!」
「平べったいお魚が良いの!」
「平べったいお魚? カレイの煮付けか、良いなそれ。直ぐ作るから少し待っててな」
流石ミユンなの。お魚の煮物と聞いて、直ぐにお魚の種類を指定したの。
平べったいお魚は、骨は面倒だけど、煮付けにすると味が染みて、白米に良く合うの。
「お父さん! 白米も下さいな!」
「ミユンも白米食べたいの!」
「白米か……和土国で大量に買ってるし、今回は特別だぞ。研究用に幾らか、残さなきゃならないからな」
「分かってるの。足りない分は、お魚沢山たべるの!」
「稲なんて、ミユンにかかれば豊作間違い無しなの。ファンガーデンに帰ったら、唸る程作ってあげるの」
「唸る程って……まぁお米なら、ちゃんとした温度管理すれば、数年は保つからな。作る分には問題ないか」
後はのんびり待つだけ。
お父さんは、性格は色々あれだけど、作るご飯はとても美味しいの。
「お魚楽しみ!」
「ミルンお姉ちゃんに同意っ!」
いっぱい働いたから、いっぱいご飯をお腹に入れるの!
ここの隊員達には悪いけど、新鮮なお魚は、ミルンとミユンのモノだから、分けてあげられません。
「あんっ? ミルンやないか。流にーちゃん何処おるかしらんか?」
「リティナ? 今向こうで、ミルンとミユンのご飯を作ってるの」
「マジか、丁度ええやん。ウチも食いそびれてな、一緒に食ってええか?」
「……白米は駄目なの。お魚なら良いの」
まだ白米は少ないから、たとえリティナと言えども、あげるわけにはいかないの。
「怖い目すんなやぁ。白米?は要らんよ、お魚だけで充分や。ニアとアトゥナも呼んでええ?」
人が増えるのっ……その二人なら、別に問題ないの。
「大丈夫なの……」
「ミルンお姉ちゃん……白米護るのに必死過ぎなの。お家に帰ったら、嫌でも毎日食べれる様になるの」
「ミユン。それはそれ、これはこれなの」
「二人して、何の話しとるんや?」
白米の話です。
お米は貴重だから、分けてあげられないの。
危うく流が真っ二つ♪
実際に当たってたら、どうなっていたのか……




