ミルンとミユンは混ぜるな危険.1
晩御飯の準備なの。
補給部隊の面々が、天幕の下に調理器具を並べて、色々やってるけど、それを全力お手伝いします!
「お仕事下さいな!」
「ミユンにも下さいな!」
『おっ…ミルン御嬢様、ミユン御嬢様。そのぉ、お二人に頼める仕事わぁ……』
何か嫌がられてるの。何で?
ミルンはお料理のお手伝いがしたいの!
摘み食いはしないの!
味見するだけなの!
『(うぅっ…圧が凄い)……ルトリア様に、許可をとって頂ければっ』
「分かったの。ルトリア何処に居る?」
「ミルンお姉ちゃん。あそこでルトリアが、炊き出しの準備をしているの」
あんな所で準備してるの。魔法小隊の隊長なのに、意外としっかりやってるの。
ルトリアに許可を貰って、さっさと晩御飯の準備をしないと、お腹が空いて来たの。
「ルトリア──!」
「お胸の人──!」
「──? ミルンさん、ミユンさん。今どちらか、変な事を言ってませんでしたか?」
「「言ってないの」」
「……それで、何の御用でしょうか?」
「お仕事下さいな!」
「ミユンにも下さいな!」
ルトリアとは、知らない仲じゃないの。
アルテラ教に寄付金も納めてるし、私が真面目な事を知っている、立派なお胸の人なの。
「仕事ですか……」
「そうなの。あそこの補給部隊の人に聞いたら、ルトリアの許可が、必要って言われたの」
「だから許可を貰いに来たの。ミルンお姉ちゃんだけだと不安だし、ミユンにも下さいな」
「(あの隊員……)申し訳御座いませんが、私では許可が出せません。領主様か、領主代行の許可が必要になります」
さっきあそこの人に聞いて来たのに、ルトリアは許可が出せないの?
「あの男、嘘吐いた?」
「嘘吐きは、舌を引っこ抜くの」
『ひっ!?』
ミルン達の視線を感じて、震えてるけど、震える程ミルン達は怖く無いの。
舌を引っこ抜いて、リティナに治療させてを繰り返すだけなの。
「「だから優しいの」」
「やめて下さい二人共! 彼は命令系統を順守しただけで、何も悪くは御座いません」
そうなの?
確かに、この場所で一番偉そうなのは、ルトリアみたいなの。
でもルトリアには許可が出せない…なんで?
「不思議ルールなの」
「お手伝いするのに、許可が必要なのは何で?」
「お二人の御立場を御考え下さい……」
「ここは戦場なの。使える者は何でも使うが、お父さんの教えなの」
「パパなら『お手伝い?良いんじゃね』って絶対言うの。暇だから手伝うの」
「流さん…教育間違ってませんか…」
お父さんの教育は、一割ぐらいなら参考になるの。他は変な知識?だから、あまり参考にならないの。
「と言う事で、お手伝いするの」
「お芋の皮剥きでも、お肉の解体でも、何でもするの」
「……分かりましたわ。それならば、あそこの干物を、お湯で煮込んで下さい」
干物を煮込む?
あれは……アルカディアスのお魚なの。
成程! 出汁の素なの!
「分かったの! 出汁をいっぱい取るの!」
「寸胴鍋が沢山あるの。ミユンも頑張って、旨い出汁をもちゅもちゅするの!」
「もちゅもちゅは駄目ですよ!? ミルンさんとミユンさんが摘み食いしたら、兵達の食料が消えてしまいます!」
流石のミルンでも、数千人分のお食事は食べれないの。何か誤解されてる……何で?
「ミルンお姉ちゃんの、日頃の行いの所為なの」
「失礼なの。美味しくご飯を頂いて、残さず食べているだけ」
「それじゃあお願いしますね」
「任せて! ミルンの腕前お見せするの!」
「じっくり煮込むの! 出汁取るの!」
寸胴鍋を、石と石の間に置いて、樽から大量のお水を入れる。
煮干しと言われる小魚の干物を、大量にぶち込み、火をつけて、灰汁が浮かんできたら、お玉で掬ってポイ。
「お野菜もぶち込むの!」
「ミルンお姉ちゃん、コレも入れるの」
「なあにそれ? コカトリスの骨?」
「絶対旨い出汁が取れるの。前にパパが、『鶏ガラ豚骨味噌醤油』って、変な呪文唱えてたの」
絶対旨い奴なの。
それを入れるなら……別の寸胴鍋で煮込んで、後で合体させるの。
「あの寸胴鍋使うの。一瞬に煮込むより、後で味の調整をしながら混ぜるの」
「分かったの! ついでにオークの骨も煮込んでみるの!」
「沸騰しないように、火加減にも気を付けないと駄目なの」
「了解!」
良い香りがお鼻を刺激するの…じゅるりっ。
でも、これはただの出汁だから、飲んでもお腹は膨れない。
「ミユン。オークの骨と一緒に、お野菜とお肉も一緒に煮込むの。お肉が柔らかくなって、食べやすくなる筈なの」
「入れてみます!」
じっくりコトコト、美味しい出汁を完璧に作るの!!




