間話 アトゥナとミユンの和土国内での過ごし方
ご飯時には、見ない事をオススメします。
う◯ちのお話です。
◯んちのお話なんです。
俺は何を見ているのだろうか。
広大な畑を背に、今目の前で行われ様としている狂った行為に、理解が追いつかない。
「さあ! 力一杯捻り出すの!!」
『ブッブモォ……』
「諦めちゃ駄目なの! 早く出すの!」
『…モォ…ブモォ…』
「牛さんなら出来る! 諦めちゃ駄目なの!」
『……モォ(チラッ)』
こっちを見ても、俺は何も出来ないぞ。
二足歩行型の魔物、『ミノタウロス』が、助けを求める様に、こっちをチラチラ見て来る。
この異常な状況の原因は、流のおっさんが消えて直ぐ、一度城へと戻る際に、ミユン御嬢様がとあるモノを見つけてしまった事にある。
ミノタウロスの牛舎。
ミノタウロスは本来、とても危険な魔物であり、他種族を力で捩じ伏せ、交配し、子を孕ませる化物である。
しかし和土国では、どうやってなのかそのミノタウロスを従え、荷車を運ばせたり、他の家畜の世話をさせたりと、立派な労働力として活用されている。
そのミノタウロスの牛舎を見て、ミユン御嬢様は駆け出し、中を覗いたと思ったら、『うんちっ、うんちが一杯有るの!』叫びだし、そのまま牛舎内へ突入した。
俺は不安になったので後をつけ、牛舎内に入ると────見てしまった。
嬉々として、ミノタウロスの糞を集める、ミユン御嬢様の姿を。
しかも素手。
素手でミノタウロスの糞を掴み、籠の様な物に詰め込んでいる。
牛舎内で寛いでいたミノタウロス達も、ミユン御嬢様の姿を見て後退りしている。
それ程凄い笑顔なんだ。ミノタウロスがドン引きする程に、凄い笑顔なんだ。
俺は急ぎ傘音技さんの元へ向かい、事情を説明して直ぐ、一頭のミノタウロスを貰った。
だって、ミユン御嬢様が牛舎から動かないし、このままだと、ミユン御嬢様が糞塗れで色々ヤバい。
そんで、貰ったミノタウロスを連れ、ミユン御嬢様に引き合わせて直ぐ畑へ直行。
ミノタウロスの地獄が始まった。
毎日毎日休ませている畑に、毎日毎日立派な糞尿を捻り出す。
魔物とは言え、体調によっては出ない日もあるが、お構い無しにミユン御嬢様は急かす。
それが、今目の前にある狂った光景です。
便座に座るが如く、ミノタウロスが地面に向けて、尻を突き出しているんだ。
俺は一体、誰に語りかけてるのだろうか。
「もっと雑草食べるの! 食べたら自然と出てくるの! ほらっ、食べるのおおお!」
『ブモォォォッ、ブモシュッモッシュッッッ、ブロロロロロロ────ッ!?』
耐え切れずまた吐いたっ!?
助けないと、またミノタウロスが、ストレスで便秘になっちゃうぞ!
「ミユン御嬢様っ! 何度も言ってますけど、無理矢理食わせたら駄目ですって」
「お残しは駄目なの! 雑草まだまだ沢山あるし、食い切らないとうんち出ないの!」
「御嬢様がうんちうんち言わないで下さいよ! お残しは駄目ですけど、量が異常過ぎるんですよ量が!」
『ブモォォォッ(コクコク)』
んっ? 今ミノタウロス、俺の言った事理解したの? そんな訳無いよね、魔物だし。
「ミルンお姉ちゃんなら食い尽くすの。魔物ならもっと沢山、食べれる筈なの」
「ミルン御嬢様が異常なだけですって! こんな山になってる雑草っ、ミノタウロス五十体居ても食い切れないですよ!」
「大丈夫なの。食べた瞬間尻から出せば、永遠に捻り出せるの」
『ブモォッ!? ブモッブモッ(フリフリ)』
ミノタウロス…頭を左右に振ってるなぁ。
言葉理解してるじゃん。
流石傘音技さんから貰ったミノタウロス。頭良いんだなぁ。
「我儘言うと、今日の晩御飯にするの」
『ブモッ!? モシュ…モシュ…モプッッッ』
「下手な拷問よりヤバいっ。食うか食われるかって、ミユン御嬢様……流のおっさんの影響受け過ぎですよ」
「魔物は魔物なの。雑草一杯食べさせて、肥え太ったらお肉なの」
『モォォォッグスッ……モシュ…モシュ…』
ミノタウロスが泣いたっ!?
魔物が泣くところなんて見た事無いんだけどっ、仕方無いなぁあああっ!
「あと何体か貰って来ますから、取り敢えず食べさせる量を減らしましょう!」
『ブモッ!? モォッ!(キラキラ)』
「……あと五体持って来てくれたら、少し雑草減らしてあげるの」
「五体ですね、分かりました。そこのミノタウロス……後少しだけ、頑張れよ」
『ブモォォォッ!!』
頑張れって言ったけど、尻から糞尿出しまくってるだけなんだよなぁ
「と言う事で、あと五体……必要なんです」
お城の傘音技さんの部屋にて、先の内容を相談。何で俺、糞尿云々を相談してるんだろ。
「……ミユン様の願いとあらば、何体でも差し上げれますが……食べるのでは無くて、まさか肥料の為とは思いませんでしたわ」
「何か、すみません……」
「謝る事は無いですわ。ミユン様がなされている事は、この和土国にとって益となる事。アトゥナさん。知らせて頂いて、有難う御座います」
万事解決。
ミノタウロスを新たに十体確保して、最初のミノタウロスと引き合わせた。
最初のミノタウロスは、泣いて喜び、ミユン御嬢様も上機嫌で、これなら上手く行くだろう。そう思った。
そう、思っていたんだ。
「整列なの! 零番から十番まで、点呼! 『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、点呼良しなのっ!」
畑の端から、等間隔でミノタウロスが並び、ミユン御嬢様の命令で行われる点呼。
俺は……心の奥底から、願った。
「全員尻を突き出すの!!」
流のおっさんが、早く迎えに来てくれる事を。
「全力でぇえええ……捻り出すのおおおっ!!」
和土国の空に、ミノタウロス達の鳴き声がこだました。
次回はドゥシャのお話です。
真面目なドゥシャのお話です。




