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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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間話 アトゥナとミユンの和土国内での過ごし方


 ご飯時には、見ない事をオススメします。

 う◯ちのお話です。

 ◯んちのお話なんです。



 俺は何を見ているのだろうか。

 広大な畑を背に、今目の前で行われ様としている狂った行為に、理解が追いつかない。


「さあ! 力一杯捻り出すの!!」

『ブッブモォ……』

「諦めちゃ駄目なの! 早く出すの!」

『…モォ…ブモォ…』

「牛さんなら出来る! 諦めちゃ駄目なの!」

『……モォ(チラッ)』


 こっちを見ても、俺は何も出来ないぞ。

 二足歩行型の魔物、『ミノタウロス』が、助けを求める様に、こっちをチラチラ見て来る。

 

 この異常な状況の原因は、流のおっさんが消えて直ぐ、一度城へと戻る際に、ミユン御嬢様がとあるモノを見つけてしまった事にある。


 ミノタウロスの牛舎。

 ミノタウロスは本来、とても危険な魔物であり、他種族を力で捩じ伏せ、交配し、子を孕ませる化物である。

 しかし和土国では、どうやってなのかそのミノタウロスを従え、荷車を運ばせたり、他の家畜の世話をさせたりと、立派な労働力として活用されている。


 そのミノタウロスの牛舎を見て、ミユン御嬢様は駆け出し、中を覗いたと思ったら、『うんちっ、うんちが一杯有るの!』叫びだし、そのまま牛舎内へ突入した。


 俺は不安になったので後をつけ、牛舎内に入ると────見てしまった。

 嬉々として、ミノタウロスの糞を集める、ミユン御嬢様の姿を。

 しかも素手。

 素手でミノタウロスの糞を掴み、籠の様な物に詰め込んでいる。

 

 牛舎内で寛いでいたミノタウロス達も、ミユン御嬢様の姿を見て後退りしている。

 それ程凄い笑顔なんだ。ミノタウロスがドン引きする程に、凄い笑顔なんだ。


 俺は急ぎ傘音技さんの元へ向かい、事情を説明して直ぐ、一頭のミノタウロスを貰った。


 だって、ミユン御嬢様が牛舎から動かないし、このままだと、ミユン御嬢様が糞塗れで色々ヤバい。


 そんで、貰ったミノタウロスを連れ、ミユン御嬢様に引き合わせて直ぐ畑へ直行。


 ミノタウロスの地獄が始まった。


 毎日毎日休ませている畑に、毎日毎日立派な糞尿を捻り出す。

 魔物とは言え、体調によっては出ない日もあるが、お構い無しにミユン御嬢様は急かす。


 それが、今目の前にある狂った光景です。

 便座に座るが如く、ミノタウロスが地面に向けて、尻を突き出しているんだ。

 俺は一体、誰に語りかけてるのだろうか。


「もっと雑草食べるの! 食べたら自然と出てくるの! ほらっ、食べるのおおお!」

『ブモォォォッ、ブモシュッモッシュッッッ、ブロロロロロロ────ッ!?』


 耐え切れずまた吐いたっ!?

 助けないと、またミノタウロスが、ストレスで便秘になっちゃうぞ!


「ミユン御嬢様っ! 何度も言ってますけど、無理矢理食わせたら駄目ですって」


「お残しは駄目なの! 雑草まだまだ沢山あるし、食い切らないとうんち出ないの!」


「御嬢様がうんちうんち言わないで下さいよ! お残しは駄目ですけど、量が異常過ぎるんですよ量が!」


『ブモォォォッ(コクコク)』


 んっ? 今ミノタウロス、俺の言った事理解したの? そんな訳無いよね、魔物だし。

 

「ミルンお姉ちゃんなら食い尽くすの。魔物ならもっと沢山、食べれる筈なの」


「ミルン御嬢様が異常なだけですって! こんな山になってる雑草っ、ミノタウロス五十体居ても食い切れないですよ!」


「大丈夫なの。食べた瞬間尻から出せば、永遠に捻り出せるの」


『ブモォッ!? ブモッブモッ(フリフリ)』


 ミノタウロス…頭を左右に振ってるなぁ。

 言葉理解してるじゃん。

 流石傘音技さんから貰ったミノタウロス。頭良いんだなぁ。


「我儘言うと、今日の晩御飯にするの」


『ブモッ!? モシュ…モシュ…モプッッッ』


「下手な拷問よりヤバいっ。食うか食われるかって、ミユン御嬢様……流のおっさんの影響受け過ぎですよ」


「魔物は魔物なの。雑草一杯食べさせて、肥え太ったらお肉なの」


『モォォォッグスッ……モシュ…モシュ…』


 ミノタウロスが泣いたっ!?

 魔物が泣くところなんて見た事無いんだけどっ、仕方無いなぁあああっ!


「あと何体か貰って来ますから、取り敢えず食べさせる量を減らしましょう!」


『ブモッ!? モォッ!(キラキラ)』


「……あと五体持って来てくれたら、少し雑草減らしてあげるの」


「五体ですね、分かりました。そこのミノタウロス……後少しだけ、頑張れよ」


『ブモォォォッ!!』


 頑張れって言ったけど、尻から糞尿出しまくってるだけなんだよなぁ

 



「と言う事で、あと五体……必要なんです」


 お城の傘音技さんの部屋にて、先の内容を相談。何で俺、糞尿云々を相談してるんだろ。


「……ミユン様の願いとあらば、何体でも差し上げれますが……食べるのでは無くて、まさか肥料の為とは思いませんでしたわ」


「何か、すみません……」


「謝る事は無いですわ。ミユン様がなされている事は、この和土国にとって益となる事。アトゥナさん。知らせて頂いて、有難う御座います」


 万事解決。

 ミノタウロスを新たに十体確保して、最初のミノタウロスと引き合わせた。

 最初のミノタウロスは、泣いて喜び、ミユン御嬢様も上機嫌で、これなら上手く行くだろう。そう思った。

 そう、思っていたんだ。


「整列なの! 零番から十番まで、点呼! 『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、『モォッ』、点呼良しなのっ!」


 畑の端から、等間隔でミノタウロスが並び、ミユン御嬢様の命令で行われる点呼。

 俺は……心の奥底から、願った。


「全員尻を突き出すの!!」


 流のおっさんが、早く迎えに来てくれる事を。


「全力でぇえええ……捻り出すのおおおっ!!」



 和土国の空に、ミノタウロス達の鳴き声がこだました。




 次回はドゥシャのお話です。

 真面目なドゥシャのお話です。

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