間話 黒姫の和土国内での過ごし方
のぢゃっ?
ミルンは一体何をしてるのぢゃ?
デカい肉団子に追われているようぢゃが、脂肪分過多で足が遅くて、ミルンに遊ばれておるのぢゃ。
「余所見とはええ度胸やなぁ化物……(コッ)」
「余所見をしてても、お主には負けはせぬのぢゃ。(コッ)ほれっ、駒が無くのうたの」
「ボーンなんかくれたるわっ(コッ)」
此奴弱過ぎるのぢゃ。
何も考えず、先も読まずに打っとるだけぢゃと、何千年経っても我には勝てぬのぢゃ。
「ほれ、王が逃げれぬのぢゃ(コンッ)」
「何でやねんっ! イカサマしとるやろ化物!」
やっぱり、何も考えておらぬの。
傘根技から暇潰しにと渡された盤遊戯ぢゃが、この魔王とは相性が悪い様ぢゃな。
「この遊戯でどうイカサマをするのぢゃ? 少しは考えてモノを言うのぢゃ」
「っ、なら次はコレや! コレなら決まり事が少うて分かりやすいからな!」
表裏と違う色をしており、マスに順に置いて、相手の色を挟んだら、ひっくり返して自分の色にする遊戯。
うむっ、魔王の奴考えずにやると、全部のマスが我色に染まるのぢゃ。
「して魔王よ、何故悪魔族を集めておるのぢゃ(パチッ)」
「……今それを聞くんやな(パチッ)」
「ここに居るのは我等だけぢゃし、何なら力尽くで、聞いても良いのぢゃがの(パチッ)」
「言う訳無いやろ、アホちゃうか(パチッ)」
「ふむ……国作りにしては、些か雑味を感じるし、されとて単なる善意とは、到底思えないのぢゃがなぁ(パチッ)」
「何が言いたいんや(パチッ)」
「何某らノ儀式……(パチッ)」
「……(パチッ)」
ふむぅ…黙りおったのぢゃ。
遥か昔から、色んな魔王を見て来た我としては、此奴は間違い無く『悪』なのぢゃ。
目的の為なら手段を選ばぬ、ある意味で流と同じタイプぢゃの。
確か少し前に、アトゥナが『姉やんの娘』と言っておったな。それに、アトゥナに姉が居るとも言っておった。
「リティナ、オルカス(パチッ)」
「チッ……何で化物が、あの子の名前知っとんのや(パチッ)。今何処におんねん」
「さてのぅ、何処かには居るぢゃろうが。やけに食い付きがいいのぢゃなぁ(パチッ)」
死んだ姉の為に、何かをしようとしておる?
若しくは姉の話が嘘?
それとも他に理由があるのかや?
「化物に名前知られとるとか、あの子が可哀想やな(パチッ)」
知られとると言うか、ジアストールでは、誰もが知っておる聖女なのぢゃがな。どうやらこの魔王、情報収集能力は皆無のようぢゃ。
「そんな所に置いたら、角ゲットぢゃぁ(パチッ)」
「あっ…まだ他んとこがあるからええねん!(パチッ)」
「ほれ。また角ゲットぢゃぁ(パチッ)」
「イカサマや! 絶対イカサマしとるやろ!(パチッ)」
いやいや、お主が間抜けなだけなのぢゃ。
此奴はあれぢゃな。考えんと突き進む、一番厄介な魔王なのぢゃ。
我や流には脅威とならぬが、普通の者ならば正しく魔王。
「ふむふむ、どう見ても我の勝ちなのぢゃ。お主弱いのぅ(パチッ)」
「チッ、止めや止め止め。幾らやってもウチ勝たれへんやん、おもろないわぁー」
「我は面白いのぢゃ。お主が弱過ぎて、どうやれば勝てるのかを考えんで済むからのぅ。良い暇潰しなのぢゃぁ」
「ほんまっ、ええ性格しとるで化物……」
さてと、そろそろ腹が減って来たのぢゃ。
何か食おうかのぅ。
「魔王や、食事処へついて来るのぢゃ。お主と行動せねば、流に怒られるからのぅ」
「めんどくさいなぁ……今日は何の飯や」
「行って見てから決めるのぢゃ。城の飯は美味いのぢゃが、若干冷めておるからのぅ。飯は外で食うに限るのぢゃ」
城から出て少し歩く。
何か有れば直ぐ、首を引き千切れる様に、魔王ダラクの肩に乗り、進む方向を指示する。
側から見たら、ただの肩車なのぢゃ。
「道が違うのぢゃ。あっちなのぢゃ(グギッ)」
「痛っ、首を捻んなやっ! ほんまタチの悪い化物やで。魔王たるこんダラクを、マッスルホース代わりかいな」
マッスルホースより遅いのぢゃ。
しかもこの魔王、方向音痴なのぢゃ。
こうして、(ゴキッ)進む先を指示してやらねば、いつまで経っても食事処に着けぬのぢゃ。
「ウチや無かったら、首の骨折れとるで」
「流ならば道を間違えぬのぢゃ。ほれ、ここを右なのぢゃ(グギギッ)」
「力込めんなやっ! 口で説明せい口で!」
「先程口で説明したのに、逆方向に行こうとしたでは無いかや。ぢゃから、仕方無く(グギッ)こうして(ボリッ)指示しているのぢゃぁ」
「……楽しんでへんかおどれ?」
「楽しく無い訳が無いのぢゃぁ。いつも流の肩にミルンが乗っておるから、偶には我も楽しみたいのぢゃ(グリグリ)」
「ここいら一帯、溶かし尽くしたろか……」
「そんな事をしようモノなら、一瞬で首を引っこ抜くのぢゃ。今の我なら、このぷにぷにボディでも、それぐらい昼飯前なのぢゃ(ギリッ)」
少し前、リシュエルとやりおうてから、結構力が戻ってきておるかなのぅ。全盛期と比べて、七割と言ったところなのぢゃ。
「頭締め付けんなやっ! 冗談や冗談っ、そないな事せえへんわ!」
「下手な冗談は、命を縮めるぞぇ。何もせぬなら危害は加えぬし、大人しくする事ぢゃな(グギギギッ)」
「こっ、コレは危害加えとんのんっ、ちゃうんかっ」
こんなモノ、危害の内には入らぬのぢゃ。
腕の一本二本、足の一本二本を斬り取っておる訳ぢゃ無いのだからのぅ。
「あそこぢゃな。良い匂いが漂って来ておるわ」
「ウチの喰うもんあらへんからなぁ」
そう言えばこの魔王、人喰いぢゃったな。
普通の飯の方が美味いと言うのに、何とも残念な魔王なのぢゃ。
東の魔王ダラクのーご飯の食べ方!
一、人種や獣族をスキルで溶かします!
二、溶けたモノを器に入れます!
三、一気に飲み干します!
※器が無ければ、ダイレクトで啜ります。
※普通の食事も食べれます。が、溶かして食べる為、お店から注意を受けて出禁になります。




