間話 ミルンの和土国内での過ごし方.1
和土国にて、流に呼ばれる前のお話です。
お父さんが帝国へ向かってから、和土国代表傘根技の所でお世話になった。
せっかくお琴を習ったのに、お父さんに聞いて貰えず、少しだけ帝国に弄っとしたけども、直ぐにお父さんが呼んでくれると信じて、色々とお勉強しながら待っていた。
それなのに……「遅いの」
一日待っても、二日待っても呼ばれない。
『国境は遠いの、一日二日じゃ着かないの』
ミユンに聞いたら、そう答えられた。
魔神であるお父さんならば、意味不明理解不能な速度でもって、国境まで飛んで行くと思っていたの。
「暇暇なの……」
お城の中を、ぷらぷらとお散歩。
そうして居ると、禿げ頭の中心に、髪を細長くして乗せた人達が、恭しく頭を下げて来る。
髷と言う髪型らしい。
「掴んで引っ張りたい衝動にかられるの」
一人だけ、我慢出来ずに引っ張って……正確には引き千切っちゃって、傘根技に物凄く怒られたの。
引き千切られた人は、傘根技の指示で要職に任命され、泣く泣く桂を装着して働いてる。
それにより和土国城内でのミルンは、近寄ると髷を千切る、危険獣族扱いなの。
すれ違う際は、『目線を合わせず頭を下げて、髷を気にしてませんアピールをする様に!』とのおふれが出てるらしい。
髷を気にしていたら、狙われる。
そう思われたみたい。
「気にしてなくても引っ張りたいの」
それにしても、このお着物は可愛いけど、少し動き辛いの。
お腹をギュッとされて、重ね着に重ね着を重ねて、何枚羽織らせるのか。
「全力で走ると、破れちゃうの……すんすん」
良い匂い……厨房?
先の角部屋から、良い匂いが漂って来る。
そぉーっと中を確認。
『魚のアラここに置いとくよ』
『味噌が残りわずかだね。誰か、味噌蔵のとこ行って、貰って来ておくれ』
『あの人ら来てから大忙しだぁ』
『ちげぇねぇや。何でも、精霊様と、ミルン様ってのが、結構な量を召し上がるらしいぞ』
『有難てぇ話だな』
『おうよ。料理人冥利に尽きるってもんだぁ』
悪口言ってないの。
皆んな笑顔で、ご飯作ってくれてるの。
こっそりこそこそ中へと侵入。
お漬物の石をどかして、その上に座り、じっと固まり観察するの。
『そう言えば、あの魔王捕まったらしいね』
『あぁ聞いた聞いた。何でも、流様のペットにやられたって話だね』
黒姫ペット扱い……間違ってないの。
『すげぇやな。あの魔王には、土を駄目にされて苦しい思いをさせられたぁで、首斬るだけじゃぁ収まらんなぁ』
『んでもぉ、他所から悪魔族さぁ引き取って、良い暮らしをさせてるみたいだぁ。悪って程悪じゃねぇんじゃねぇか?』
『ならぁ、土を殺す必要は無かよな。話し合いでやれば済む事じゃけん。そやけどあん魔王は攻めてきおったぁ』
魔王のお話なの。
ダラクって言う魔王、リティナやアトゥナに似てて、変な感じなの。
悪魔族はお顔が似過ぎていて、一瞬誰が誰だが分からなくなります。
匂いを嗅ぐと分かるけど、面倒臭いの。
『誰か、大根の漬物取っておくれ』
『あいよーっと……何だぁこの嬢ちゃんは? 着物さ来てぇ、どうした嬢ちゃん?』
ミルンはお漬物の石なの。
喋らないし動かないの。
『動かねぇ……人形かぁ? まぁ良いか。漬物取らせてなぁ、よいしょっ……うごっかねぇっ!』
ミルンは重く無いの。
こっそりと足の指を、お漬物の入った陶器に引っ掛けてるの。
『どうした?』
『こん人形がっ、重くて動かせねぇだっ!』
『お前さんはひ弱だねぇ。退きなよ、俺が退かせるからさ』
『はんっ、やってみろやってみろ。俺さ無理だったのに、おめぇに出来る訳なか』
『こんな小さな人形、簡単にっっっ重!?』
ミルンは重く無いの。
重たいのはお漬物の陶器なの。
次重たいって言った人は、全力で頭の毛を毟り取る。
『しゃあねぇ。二人で持つぞ』
『それしかねぇだ。いくぞぉ!』
『『ふんさっ!? 重っ!?』』
「二人の毛を毟り取るのっ!!」
丁度ミルンを持ち上げて、二人の頭に手が届く、最高のシチュエーションなの。
「ムゴムゴ…お肉美味しい」
さっきの厨房で、ミルンを重いと言った人の髪を、毟り取ろうと手を伸ばしたら、お肉くれたので許してあげました。
そう言えば、黒姫は何処だろう。
魔王ダラクを見張ってるとは言え、あの黒姫が大人しくしている訳が無い。
「隠れてお酒を呑んでいたら、お父さんに報告して影の刑に処すの」
強強黒姫の唯一の弱点。
影達による、着せ替え黒姫ラブラブ地獄。
黒姫が力を取り戻す前に、影達によって仕込まれた、最悪のトラウマさん。
「ちゃんと目視で確認するの」
確認ヨシッ!(キリっと)
これ大事です。
ちゃんと確認して、罪を確定させないと、冤罪は駄目なの。
「黒姫は何処に居るのかなぁ……」




