予想外の出来事
魔王の玉を使った打ち上げ花火が、空を彩る訳が無い。
ただの黒い爆炎だな。
「ふっ、汚い花火だぜ…」
「ふんっ!! (ゴッ)……本当に硬いのである」
「何で今、頭殴ったんだ村長? 身体は痛くなくてもだ、心は痛いんだぞ……」
「相変わらず意味の分からぬ魔法をっ、周りを良く見よ馬鹿者っ」
周り? んーとっ、腰を抜かした奴等が多くて、砦の上部が余波で崩れかけてる?
「被害ゼロじゃん。問題無しだろ?」
「兵達が怯えてっ、国境の砦が崩れかけており、しかもあの中に、まだ兵が居るのだぞ……誰が助けに行くのだ?」
「それは村長に任せる! これは領主命令な。俺寝てなくて…ふあぁふっ、少し寝る!」
マジな睡魔で苛々してるんだ。
今横になったら、十秒で寝れる自信があるぞ。
「魔神様、お見事で御座いました」
「私の獲物……」
んっ、村長の隣に居た人じゃん。
「えーっと……(なあ村長、この二人誰だ?)」
「流君が良く知る者だな。院長殿と同じと言えば、分かるであろう」
院長……影さんっ? この人が?
「何してんのこんな所で?」
「魔神様。私の事は是非、アレスとお呼び下さい。この者はマロン、私の養女になります」
「アレス……名前あったんだな。んで養女……養女!?」
「マロンです…獲物奪った」
「こらマロン、魔神様に失礼だろ。アレを仕留め切れなかったのは、誰だ?」
「私です…御免なさい」
「あの魔王弱らせたの、この子なのか?」
「そうである。アレス殿が鍛えた様でな……中々良い動きであったぞ」
村長が褒める程か…凄い子が居たもんだ。
村長に影…アレスさんに、その弟子でもあり養女でもあるマロン。後はドゥシャさんが鍛えに鍛えた部隊が沢山……戦力過多だな。
「こんだけ揃ってれば帝国行けんじゃん。取り敢えず、俺が寝ている間に何か有ればよろ!」
「むっ、ミルン君達はどうしたのかね? 姿が見えぬ様だが」
「あーそれが有ったか……呼んでおかないと、後が怖いな」
「呼ぶ? 何処かに居るのかね」
説明が面倒だ。
さっさと呼んで、遊ばせとくかね。
えっと、イメージイメージ……良しっ、『緑化魔法』でいらっしゃーい!!
ボコッ──「ムゴムゴむー!?」
ボコッ──「むちゅむちゅ……?」
ボコッ──「ぷはっ、何だよ急にっ」
ボコッ──「のぢゃっ!? トイレ中ぢゃ!」
ボコッ──「なんやっ、臭そうて堪らんっ」
「良し! 完璧に……うん?何か人数多くね?」
肉を片手に爆食いしてるミルンと、何か変なモノむちゅむちゅしてるミユン。状況を理解していないアトゥナに、M字で穴に挟まってる黒姫。あとは……リティナやアトゥナとよく似た姿の、鼻を押さえてる魔王ダラクと……うん。
「寝るか……」
「ミルンのお肉が無いの!」
「パパ! 夕飯時に呼ぶのは酷いの!」
「ここ何処……流のおっさんじゃん」
「引っ込んでしもうたのぢゃ!? 便秘は嫌なのぢゃ!」
「臭っ、化物の汚物臭やんっ!」
一人余計なモノが来ちゃったけど、寝て起きてから考えよ。
「流君……これは一体……」
「流石魔神様。まさか強制転移を習得していたとは」
「穴からいっぱい出て来た……何で?」
何でだろうねーマロン。
アレか……黒姫の奴がずっとダラクを監視してて、緑化魔法の根っこに絡まったんだな。
「村長……後は宜しく……」
「待てっ、待ちたまえ流君!? 私に押し付けるなぁあああっ!!」
空間収納からテントを取り出して、もそもそと中へ入って閉めてから、布団を取り出しお休みなさーい。
『流君っ! 開けたまえ流君っ!』
『ヘラクレス、魔神様には少し休んで貰え。我等の為に急いだのだろうし、睡眠を取られていないのでは無いか?』
『ぬぅ……あの者は誰なのか、聞きたいのだが』
『魔神様の下僕ですか?』
一名を除き、家族だよぉぉぉ…すぅすぅ。
◇ ◇ ◇
「仕方あるまいっ。歩兵部隊っ! 砦の中に居る馬鹿どもを外に出せ! 補給部隊は夕食の準備を! 航空部隊は班を分け、交代で周囲の監視を行え! 機動部隊も同じく班を分け、航空部隊と連携して周囲を警戒! オーガガールズ! 砦内の兵を出す手伝いを頼む! かかれっ!」
「「「了解しました!!」」」
「ワカリマシター。ヒトリフタリ、モラッテイイデスカー?」
「……砦内の者で有れば構わぬが、殺してはならぬぞ」
「ハーイ。ミンナデマワスダケデ、コロサナイカラ、アンシンシテクダサーイ」
うむっ……男としては死ぬ可能性があるな。
「村長ご飯!」
「まだ夕飯の途中なの!」
「分かっておる二人共。そうであるな……どうせならば、補給部隊の調理を手伝ってはくれぬか?」
「分かったの! いっぱい作ります!」
「摘み食いし放題なの。ミルンお姉ちゃんを見張ります!」
助かるのである。
ミルン君を見張ってないと、数千人分もの食料が食い尽くされそうで、恐ろしいのである。
「俺は何をすれば良い? 流のおっさん寝ちゃったし、暇なのもアレだし……」
「ならばアトゥナは、あの小屋に居るリティナ殿の手伝いを頼む」
「うぇぇぇ、あいつ居るのかよ……仕方無いかぁ。尻守っとこ……」
尻を守る? 何かあったのだろうか。
後は……此奴らか。
「のぢゃぁぁぁっ、出ぬのぢゃぁぁぁっ」
「やめぃ化物っ、穴が狭くてでれへんしっ、臭そぅて堪らんっ」
未だ穴の中ですっぽり嵌り、何をしているのか見て分かるが……流石魔龍であるな。周りを気にせず大勢に囲まれた状態で、脱糞中とは。
「そこの筋肉はんっ! 早よウチを引き抜いてくれへんか! この化物から離れたいねんよ!」
「ヘラクレスっ、此奴は魔王なのぢゃ! 絶対に手を貸すでないぞ! ふんっっっ、出るのぢゃぁぁぁっ!」
「何でウチのスキルより臭いねんこん化物っ!」
うむ……此奴らは放置して良いな。
黒姫殿ならば、魔王を抑えるのなぞ簡単であろうて。
「……確かに臭いのであるっ!?」
黒姫=魔龍=低羞恥心
魔龍の糞尿>腐スキル
最近の文章構成と、一章の構成を比べてみたら……
多少は良くなってるの?
分からぬ……
次回からは! 呼び出される前の、和土国残留組のお話。少しだけだけどね。




