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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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お前は一体何者だ.2



 北の魔王『リサーチャー・ラブメント』は、研究者である。


 人であった彼は、魔物を捕まえ、血を抜き取り、頭部を開き、腹を裂き、血管の繋がり方や、その特性。魔石の位置や、その効果等、食べる為では無く、ただ知りたいと言う欲望だけで動く、所謂変態であった。


 研究に明け暮れる日々の中、偶然にも手に入れた、貴重なサンプル。


 それを砕き、構造を調べようとしたが、何を持ってしても砕けず、何を思ったのか、ラブメントは、おもむろに其れを飲み込んだ。


 直ぐに内部から侵食が始まり、先ずは、胃が破裂した感覚がラブメントを襲う。


 叫ぶ事も許さない痛みの中、胃、腸、腎臓、肝臓、膵臓、肺と、次々に作り変えられて行く身体。


 そして等々、心臓の鼓動が止まった。


 しかし、ラブメントは死んでおらず、訳が分からないと言う表情のまま、自らの身体を見る。


 見た目は何も変わっていない。

 気付けば痛みは無く、身体の状態を確かめて行く。

 分かった事は、傷が直ぐに塞がる事。

 心臓の鼓動が、止まっている事。

 ラブメントは研究者である。

 気になったら止まらない。止められない。

 だからこそ、自らの胸にナイフを突き立て、無理矢理開いた。

 

 ラブメントは歓喜に震えた。

 喜びのあまり、開いた胸が治らぬ様、手でしっかりと押さえながら、その場で小踊りした程だ。


 その開いた胸に見えるのは──巨大な魔石。

 人から魔物への変化。

 ラブメントは、人では有り得ない寿命を、手に入れたのである。

 

 そうして、長き時を生きる中で実験を繰り返し、ドルジアヌ帝国に住まう者達から、北の変態と恐れられる魔王が、誕生したのであった。


 


「ふーんふん、あらぁやだわ。あの子達の反応が消えてるじゃない。モシュちゃんは何をやってるのかしらぁ……ここからじゃ見えないわね」


 せっかく私の固有スキル、『融合』で、貴重な魔物ちゃんを混ぜてあげたのにねぇ。


 空に羽虫も飛んで居るしぃ、まさかまさかの皇女ちゃん、国境越えてジアストールまで逃げちゃった?


「それはそれで、良い実験になるわぁ。あらぁん一匹残ってるわねぇ……あれはぁ、第二皇太子だったわねぇ」


 指揮を任せる為に、自我を残して使っていたけれど、最近動きが鈍いのよねぇ。


「エサが悪いのかしらぁ? 襲わせた町や村の、新鮮な『お肉』を与えていたけどもぉ、贅沢させ過ぎたかしらん。あらっ……こっち向いたのに逃げたわね」


 自我を残してるから、躾はしっかりしていたのに、嫌だわぁ。


「やっぱり、自我は要らないわねぇ。捕まえて、ゴブリンの脳と融合させようかしらぁ」


 んふっ、ゴブリンは中々面白い魔物よねぇ。

 増えるのが早くて、生命力も強い。

 人と融合させたらぁ、グールになったのは驚きだけどぉ、使い勝手は最高だわぁ。


「んふっ。お馬鹿な皇太子が、せっかく出してくれたのだもの、遊び尽くさなきゃねぇ」


 えーっとぉ、あれが国境かしら? 

 誰か居るわねぇ。二人……三人かしらん。


「ジアストールの人だったら嬉しいわぁ。解体してぇ、帝国民との違いを比べたいものねぇ」


 さっさと捕まえて、今日は帰ろうかしらん。


「んっ、二人しか居な『天使様のご指示です』いぷごぉおおお──っ!?」


 何かしらこれ……あらぁ、地面が向かってくるわぁ、変な感じねぇ。


 ドゴゴゴッ──「あばばっ!?」


 あらやだわっ、お化粧が取れちゃった。

 服も土だらけで、一体何なのよぉ。


「っ、いだいばねぇ(ペキキッ)お化粧大変なのよぉ、私のお顔。お髭が濃いんだからぁん」


「……若干の効果有り、続けます」


 何かしらこのお嬢ちゃんはぁ。

 物騒なおもちゃを、手に付けてるわぁ。


「お姉さんに何か御用かしらぁ、お嬢ちゃん」


「お姉さん? 青髭の叔父さんじゃないの?」


 ふふっ、やだわぁ。これだから餓鬼は。


「誰が叔父さんだゴルァアアアッ!生皮剥いでゴブリンの餌にすんぞ糞餓鬼ぃいいいっ!っと、危ない危ない……言葉には気を付けなさぁい、お嬢ちゃん?」


「天使様のご指示です」


 話が通じないお嬢ちゃんねぇ。

 若いお肉だし、捕まえてゴブリンの餌ねぇ。


「魔王を相手に、ど『ご指示です』こ『ご指示です』みゃじゅ『ご指示です』のぎゅっ『ご指示です』らりゅの『天使様のご指示です』みぎゃぁあああああああああああっ!!」


 何よこの餓鬼っ、動きが捕らえられない!?

 何その瞳──まさか魔眼っ!?


「天使様のご指示です」


 魔眼だとしても、その速さと力は異常よ!

 未成熟な身体でそんな動き、普通なら筋肉が壊れて、動けない筈なのに!


「天使様のご指示です。貴方を退治します」


「っ、こんなお嬢ちゃんに……魔王である私が、本気をだすなんてねっ!」


 身体のどこでも良い! 掴んだ瞬間に融合して、取り込んであげるわ!


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