表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

314/411

開戦.4



 私はファンガーデン軍に所属する、ただの一兵士だ。ドゥシャ顧問曰く、私の実力的には、王都なら騎士団員らしいのだが、一兵士の私に、そんな事信じれる訳が無い。

 だって、こんなにも沢山の実力者が居るのだから。私なんてまだまだひよっ子だろう。

 そう思う理由?

 周りを見ていればそう思うさ。

 特にあの人。

 あれだけ動き続けて来たのに、ヘラクレス総指令はピンピンしているのだから、異常の極みだろう。

 何が有ったのかって?

 行軍だよ行軍、速度がおかしかったんだ。


 ファンガーデン軍は、援軍要請を受けた次の日には、既に王都を通過しており、通常なら北の砦まで二月から三月かかるところを、一月半と言う意味の分からない期間で踏破した。


 何故その様な事が可能であったのか。

 行軍で最も重要な食事を、マッスルホースが引いている馬車の中で作り、可愛らしい鼠人達が走り回って行軍中の兵士達に配り、動きを止める事無く進み続けたからだ。


 夜間では天幕を張らず、雨が降ろうとも、風が吹こうとも、地べたにシートを敷いてそのまま眠った。


 魔物が襲って来ても意に介さず、先頭を走るヘラクレス指令の乗るマッスルホースが、嬉々として潰して行く。


 そしてなにより、物資の補給を気にせずに済む事が、その進軍速度に拍車をかけた。

 

 領主である流辺境伯様の指示により、ファンガーデンでは一日三食を食すよう徹底されている。

 それは行軍中であっても変わらず、毎日毎日千二百名もの大喰らい達が、小走りでご飯を食べている。

 巨大な馬車で運んでいるとは言え、普通であれば、食料等直ぐに尽きてしまうだろう。

 普通であれば……だが。

 

 ファンガーデンは、ミユン様のお陰もあって、他領、王都とは比較にならない程の作物の収穫量を誇っている。

 そして、隣国アルカディアスからは乾物や塩を買い付けており、それが合わさるとどうなるか。葉野菜や根物、肉類などを使った、塩漬け保存食の大量生産である。


 尽きる事の無い食料を、マッスルホースを使って遠いファンガーデンから送り続け、その管理をドゥシャ顧問が担っているが、側から見たら狂気の軍隊だろう。


 そんな軍に、私も所属しているが、はてさて、この様な事が出来る軍で、昇格出来るモノなのかね。


            ◇ ◇ ◇


 襲われそうになっていた二人を助けて直ぐ、ヘラクレスは声を上げ、各部隊に指示を伝えた。

 第一目標は、砦を囲む魔物の排除。

 何故か砦の跳ね橋は下ろされ、少なく無い数の魔物が既に、砦内部に侵入していた。


「航空部隊! 上空から敵の規模、何処まで広がっておるのかを確認! 砦周辺から離れるグールが居れば、火矢で燃やし尽くせ!」

「「「了解!」」」


「斥候部隊! 航空部隊と連携して周囲を散策! 又、国境を越えて敵の状況を確認せよ! 決して奴等に傷付けられるな!」

「「「了解!」」」


「機動部隊はこのまま待機! 敵の増援に備え、いつでも動ける準備をしておけ!」

「「「了解!」」」


「歩兵部隊オーガガールズ前へ! 奴等は下手な攻撃では動きを止めぬ! 三体一組で死角を潰し、かつ一撃で仕留めよ! 砦までの道を切り開け!!」

「ハイ! ミンナ、イキマスヨー!」

「「「ゴァアアアアアア────ッ!!」」」


「他の歩兵部隊は班ごとに行動! 救護部隊! 補給部隊に被害が及ばぬ様隊列を組み直せ! 決してグール共を近付けてはならぬぞ!」

「「「ハハッ!!」」」


 命令して直ぐ、各部隊が行動に移る。

 無駄な動きが無く、誰も我先にと突出せず、自らの役割を理解して行動する。

 

 うむっ! 流石ドゥシャ殿に鍛えられた者達だ。

 しかしこの状況、一体どうなっておるのだ。

 彼奴らは帝国の兵の装いをしておるが、先程の女性が言っていた通り、ただの魔物にしか見えぬ。

 普通の人間なら、頭に矢が刺さったままでは動けぬからな。


「帝国が魔物を使役している……しかしこの様な数の魔物、どうやって準備したのだ?」


 皇帝の長子が何かしたのであるか?

 この様な事を、出来る力が有ると言うのか。

 であるならば、内戦が既に終わっていてもおかしく無い筈……誰の仕業であろうか。


 襲って来るグールの頭を、殴り飛ばしながら考えるが、今は目の前の事をと思考を切り替えて、オーガガールズの後を追った。




 オーガガールズ達の後を追い少ししたら、航空部隊部隊の一人が降りて来た。


「報告! 現在帝国兵の姿をした魔物は、砦周辺からは動いておらず、領内に侵入した数は凡そ一万程と見受けられます!」


「一万か…それなら問題無しであるな。引き続き空から援護を頼む!」

 

「了解!」


 一万対千二百。

 普通ならば勝てぬだろうが、生憎と此方は普通の軍では無いのでな。

 そう言えば、王都を通り過ぎた辺りで合流した、アレスと言う者が見えぬな……幼子を連れておったが、一体何処に行ったのだ。


 周りを確認するがアレスの姿が見えず、代わりに斥候部隊の報告が、敵の隙間を縫う様に走って来た。


「報告致します! 国境を越えた先に魔物は居らず、指揮官と思しき者が一名のみ! 攻撃の許可を!」


 指揮官が一人だと?

 何故此方側に来て、この魔物達の指揮をとらぬのだ……帝国の長子なのか? なんとも不気味であるな。


「攻撃してはならぬ! そのまま監視を続け、何か動きがあらば報告せよ!」


「っ、了解!」


 指揮官が一人なぞ、迂闊に攻撃出来ぬ。

 流君の様な者も居るのだ……ここは先ず、ジアストール領内に攻めて来た者達を、片付けねばならぬ。


「敵の指揮官は、それからであるな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ