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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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開戦.3



 籠城戦が始まって一月半が経った。

 私は四日に一度、食事を与えられ、ゴブリンすら見向きもしない程に痩せ細っていたが、砦内の兵達も似た様な者だ。

 それは何故なのか、簡単な事である。

 キッカケは、一人の兵士が砦から落ちて、グールに喰われた。

 それに加えて、極度の空腹感。

 兵士達は、我先にと備蓄庫を荒らし、残り少ない食料を奪い合って、それらを食べ切ってしまった。

 言っても、百人程度が食料にありつけただけで、この砦には五千人程の兵士が居る。

 さて、どうなるでしょうか。

 百人程度の兵士達は、見せしめに砦の上部から落とされていった。

 五千人程の兵士達は、同じ釜の飯を食べた戦友を、友を、鬼の様な形相で、次々に落としていった。


 グール共がそれらに群がり、美味しく頂いている間に、走って逃げようとする者がいた。

 馬じゃ無いのか?

 既に兵士達の胃の中ですね。

 その光景を、壁に寄りかかりながら眺めていたその時、見てしまった。

 走って逃げようとする者の首を刎ねて行く、モシュの姿を。

 私を逃がしてくれた側仕えのモシュが、魔物になって、兵達を切り刻んでいた。


 心が折れそうだ。

 涙すら出ない程に疲れ果てた体。

 それでも、帝国の危機をどうにかすべく、無理に無理を重ねて、耐えて耐えて耐えて、歯を食いしばって、ここまでやって来たのだ。

 それが何だ?

 私は毎日飢えの中暴力を受け、回復薬を吐いても飲まされ、兵士達に犯されそうになり、それでもっ、それでも頑張って来たのに、この仕打ちは無いだろう。


 壁を背に、うずくまった。

 何も考えたく無かった。

 そんな時、急に何者かに捕まれ、そのままずるずると、砦の門まで引き摺られて行った。

 誰なのかと顔を見ると、多少細くなった、あの屑貴族だった。


『貴様さえっ、貴様さえ来なければっ。貴様を差し出せばっ、我等は助かるのだっ』


 はっははっ。

 少しだけ、ほんの少しだけ笑えた。


 何と愚かな。

 私を差し出しても、相手は魔物だ。私諸共、お前も喰われて死ぬだろうにな。

 屑貴族は、門の端にある丸いモノを手に持つと、凄い形相で踏ん張りながらそれを回した。


 ゴゴゴッ────『くはっ、はっはっ……』

 門がゆっくりと開いていき、堀に被せる様に、その門が道となる。


『来いっ、奴らが侵入する前にっ、貴様を引き渡すっ』


 息を荒げながら、私を引き摺る屑貴族。

 さて、最後の問題だ。

 多少痩せているが肉質の良い屑貴族と、痩せ細で喰う肉が無い私、先に狙われるのはどっちだと思う。

 答え、『いぎゃぁあああっ! 待てっ待てっ、待ってぇえええええええええっ!』

 グールが突撃して来て、屑貴族が私を盾にする前に、グールの山に持って行かれましたね。

 流石に近いから、色々と飛び散っているのが良く見える。

 吐くモノが胃に無くて、良かったと思うわ。

 普通に気持ち悪いものね。

 力無く座り込んで、その光景を眺めていたら、一体のグールがコチラに歩いて来る。

 帝国の革鎧を付けているが、目は窪み、口から涎を垂らしながら、ゆっくりと、ゆっくりと歩いて来る。


 とうとう私も終わりか。

 喰われて肉片と成るか、はたまた喰い残しでグールに成るか、どちらかしらね。


 グールは座り込んでいた私の頭を掴み、これでもかと口を大きく開けて、そのまま私を噛み砕こうとして来たので、私は目を閉じた。

 せめて少しでも、帝国に住まう民達の痛みを感じて死のう。

 そう思った。

 そう思ったのに、一向に痛みが来ない。

 痛み無く死んだのだろうか。

 既にグールに成ったのだろうか。

 私はゆっくりと目を開けた。


『ケ…ネ…サマ……』


 私は目を疑った。

 私の頭を掴んでいたグールが、モシュに頭を潰されていたからだ。


「モシュ……っ」


「ケネラ…サマッ…ハシッて……走って!!」


 モシュは涙を流しながら、グールの群れに向かって走って行く。

 モシュが作り出した、唯一の道。

 身体が勝手に動き、そのまま走り出した。

 モシュの後を必死で走り、決して止まらぬ様に、決して転ばぬ様に。


 グール達は、モシュを敵だと認識したのか、これまでに無い機敏な動きで、モシュに襲いかかるも、モシュはそれらを尽く、切り刻んで行く。

 しかし──グール達の数は多く、モシュの動きも、少しずつ、少しずつ鈍くなって行った。


 そしてとうとう、モシュの腕にグールが噛み付いた。それに続くかの様に、足、肩、腹、頭へと、グール達が群がって行く。


 それでもモシュは止まらずに、グール達を潰して行く。

 そして、グールの群れが途切れている場所まで後少しとなった時、モシュが急に歩みを止め、私の方を向くと──『飛びなさいっ!』

 

 私を逃すために、戦ってくれたモシュ。

 魔物と成りながらも、その本能に抗い、こうしてまた、私を救おうとしてくれる。


「────っ嫌だ!!」


 私は残る力を振り絞り、そのままモシュを抱き抱えて、魔法を発動した。


『ケネラ様っ!?』


 私の魔法は、体重を一定時間消す魔法。

 しかしその効果は、私だけに限られ、他の者には作用しない。

 そんな事は分かっている。

 幾度も練習して、分かり切っている。

 それでも今だけはっ、名も知らぬ魔法に奇跡をっ! 今度こそっ、彼女と共に!


 ズザアァァァッ────「…………ははっ」

 奇跡は起きなかった。

 モシュに渾身のタックルを喰らわせ、そのまま二人して、地面に倒れただけであった。

 グール達はその行動にビックリしたのか、一瞬動きを止めたが、直ぐに動き出し、私達に群がって来た。


『ケネラ様……お助け出来ずっ』

「良いのよモシュ……有難う、お母様……」


 せめてもの願いを。

 神様が居るのなら、どうかあの愚かな二人に、私達以上の苦しみをお与え下さい。

 どうか…どうか…お願い致します。

 今度こそ、終わりだけど、お母様と一緒なら悲しく無いわ。


「そこを退けぇええええええ────っ!!」


 私達は終わったと、そう思っていた。

 だけども、その猛々しい声と共に、群がっていたグール共が弾け飛び、周囲に肉片を撒き散らした。


 その男は、かのアッパー辺境伯よりも背が高く、鎧の様な肉体を持ち、短髪で刈り上げられた髪に、日に焼けた肌。それに、何故か笑顔で白い歯を見せ、その拳でグール共の頭を潰して行く。


「中々数が減らぬな! そこの者! 大丈夫であるか!」


 口を開こうとするが、私はどうやら、声を出す力も残って居ない様だ。


「ふむ…その痩せた体……っ、救護隊!! 急ぎこの者達を運ぶのだ!!」


「了解致しました! 担架を持て!」

「ほい準備完了っ、上げるぞ!」

「「一、ニ、三っ!」」

「こっちの人は……魔物? まぁ良いか」

「この二人何なんだろっ上げるぞ!」

「「一、ニ、三っ!」」


 何だこの者達は。

 見た事無い道具だが、何処の国の者だ?


「ここの者達は何なのだ? 襲って来るならば潰すしか無いが……」


『ぐーるっ…きズッ、オウ…ナ……』


「お主は……ふむ、リティナ殿に任せるしかあるまいな。助言感謝する! 運べ!」

「「了解!」」

「「こっちの魔物さんは、リティナ様へだな」」


 モシュ…私達、助かったのかな。

 リティナ……聞いた事が有る。

 ジアストールで聖女と呼ばれ、その手は触れるだけで、どんな傷も癒すと云う、規格外の力を有する者。

 それならばどうか、モシュを助けてあげて。




 砦の兵士<グールの頭

 グールの頭<アッパーの大剣

 アッパーの大剣<ヘラクレスパンチ

 

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