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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

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開戦.2



 アッパー辺境伯が傷を負い、意識が戻らぬまま一月が経とうとしていた。

 未だ帝国からの進行は収まらず、砦は完全封鎖され、籠城戦の真っ只中にある。

 

「問題は備蓄よね……水は、井戸が有るから良いとしても、食料が無くなって来ている」


 敵国の皇女で、本来で有れば監禁されている筈が、幾度ものグールの襲撃により兵達は疲弊し、私は備蓄の確認要員にさせられた。


「どうですかなぁケネラ殿。兵達の食料は、後どれ程もちますかなぁ(もぐもぐ)」


「貴方が今食べている干し肉を引くと、もって半月と言ったところでしょうか。勿論、一日一食とすれば、の話ですが……」


「それはそれは。んぐ…ではケネラ様の、本日の分は無しで御座いますね。今し方食べておられた様ですし。では私の分を頂くと致しましょうか。ふひっひっひっ」


 今備蓄庫から出て行った者が、私をわざわざ部屋から出し、備蓄管理の仕事を押し付けた屑である。

 どうやらアッパー辺境伯傘下の貴族の様で、意識が戻らないアッパー辺境伯に代わり、あの屑がこの砦の指揮をとっている。

 確か名前は──『オーグド・コーガン・ディブシ』と言う、オークの様な見た目の貴族だ。


「よくあの様な者が貴族で居られるわね。帝国ならばあの様な者、即最前線で肉壁よ……いや、帝国も似た様なモノか」


 あの兄とあの弟で、最後に私ですからね。

 一貴族と比べられない地位の者が、今回の内戦を起こし、私がこの砦に来た事によって、他国との戦としてしまった。

 未だ止む事の無い、兵達の戦う声。

 砦の地下深くまで響いて来る。

 ある者は石を投げ、ある者は弓を射て、ある者は火を放ち、砦を囲む様に蠢くグール共を、なんとか押し留めている。


「唯一の救いは、グール共が先へ進まない事よね」


 グールの習性なのだろうか。

 グール共は、まるで灯りに群がる虫の様に、砦の周りから離れない。

 アッパー辺境伯が治療室に運ばれて直ぐ、馬に跨り一人だけ出て行ったが、あの者は無事なのだろうか。


「呆けている場合では無いな、干し肉を配らないと」


 干し肉の入った木箱を持ち、ふらつきながらも、何とか階段を上がって行く。

 正直に言いたい、お腹が空いた。

 あの屑貴族の所為で、私はここ数日水しか飲んでいない。

 私の分を、あの屑が食べたからだ。

 隠れて食べる?

 そんな事、死んでもお断りよ。

 この木箱から匂って来る、干し肉の香りの所為で、さっきからお腹が鳴りっぱなしだけど、絶対に手を付けない。


「あの様なっ、屑にっ、負けたくないものねっ」


 因みに、今私が運んでいる木箱も、本来なら大の男が、二人がかりで運ぶ代物だ。

 それでも、階段を一歩一歩進み、砦の兵達が休んでいる部屋へと運ぶ。

 帝国の皇女は鍛えているのだ。

 でなければ、既にあの愚か者共に捕まって、処刑されていただろう。


「これもっ、モシュのお陰ねっ。はぁ……モシュ、どうか無事で居て……よいしょっ!」


 階段を上りきり、それを部屋へと運をを五往復。

 そこから兵達に配給を行う。

 勿論、配給係は私だけ。

 元居た食事係の人も、兵士として動いているらしい……らしい。


「お休みの所すみません! 本日の配給を開始しますわ!」


 何度も繰り返される、地獄が始まった。




 さて問題です。

 今攻めて来ているのは、どこの国でしょう。

 答え、ドルジアヌ帝国。

 はい、正解です。


 では次の問題です。

 その攻めて来ている国の皇女が、配給係をしております。どうなるでしょう。

 答え、牢屋に閉じ込められる。

 ぶっぶー不正解です。


 では次の問題です。

 兵達は連日連夜の戦いで、苛々しています。

 そんな中、敵国の皇女が目の前に居ます。

 さて、どうするでしょう。

 答え、畏まって対応する。

 ぶっぶー不正解です。


 答え合わせを致しましょう。

 こう成る訳ですわね。


『おらぁ! ははは見てみろよ、腹抱えて丸まりやがった』

『どうせ隠れて、俺達の飯を食ってんだろ。ちゃんと吐き出させてやれよ』

『おいコラ寝るな!ったく、お前ら! 腕持って立たせろ!』

『おい! 次俺だからな! コイツの所為であんな化物共が来たんだろっと──吐かねえぞコイツ!』

『パンチに腰が入って無いんだよ! 手本見せてやるから代われ代われ──ふんっ!!』

『うぇっ、水吹きやがった』


 女兵士が居る為か、穢される事は無いが、毎日毎日飽きない奴等だ。

 顔や腹を執拗に狙われ、ただひたすらに殴られる。

 正直、今の自分の顔を見たくは無い。


『これこれ君達ぃ、暴力はいかんな暴力はぁ』

『コーガン様、これは暴力では有りませぬ。この者が備蓄物に手を付けた為、我等で指導しておりました』

『ほぅほぉ、ならば問題あるまいなぁ。帝国から逃げて来た愚かな娘とは言え、一応は皇女様であらせられるお方。ちゃんと手当てはするのだぞぉ、ぶひっぶひっひっひっ』

『勿論ですとも。回復薬は沢山有りますので、しっかりと飲ませます』


 そのやりとりを聞いた後、ボヤける視界の中で、回復薬を飲まされ続け、吐けば殴られ、また飲まされ、それを延々と繰り返される。

 それでも私は、正気を保ち続けた。




 オーグド一家設定集

 オーグド・ブリニ(父 豚野郎)=逃亡

 オーグド・マソリン(母 豚野郎?)=逃亡

 オーグド・ディムニ(豚野郎)=牢屋で脱糞中


 オーグド・コーガン・ディブシ(長男 豚野郎)

 ブリニの親戚=降格

 オーグド・キャライン・ディブシ(妹 常識人)

 オーグド・ケッツ・ディブシ(父 豚野郎)

 オーグド・サララ・ディブシ(母 女王様)


 オーグド・アルマイン(突然変異のイケメン)

 ブリニの親戚

 オーグド・デルマエニ(父 豚野郎)

 オーグド・サバサ(母 女王様)


 

 

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