表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/417

北の国からいらっしゃい.2



 帝国が攻めて来た。

 身内どうしで骨肉の争いを続けて居れば良いものを、ジアストール国に戦を仕掛けてきおった。

 その所為で急遽、城内に居る各大臣級を招集し、円卓を囲んであれやこれやの大騒ぎをしておるわ。

 

「帝国めがっ、何故今攻めて来る!」

「王都の兵だけでは足りませぬぞ。至急他領から招集をかけるべきでは?」

「ナロズ卿! それでは遅過ぎますぞ!」

「左様! 少なくとも軍の編成と行軍日数を考えればっ、最低でも三月半はかかりましょうぞ!」


 確かにのぅ。

 王都から北の砦に向かうとしたら、騎馬での行軍だけでも二月はかかる。

 北の砦から王都の間にも、オスネ子爵やミネズ男爵が治める町や村があったにも関わらず、ローキとやらは王都へ援軍要請に来た。

 と言う事はじゃ……貴族共の足の引っ張り合いで、アッパー辺境伯が窮地に立たされておると言う事じゃな。


「ファンガーデンに援軍要請すべきでは?」

「っ、ラナ殿それは……」

「ぬぅ……」

「魔王……」

「それしか…いやっ、しかし……」


 くははっ、ラナの一言で、騒いでおった奴等が黙りおったわ。


「幸い流さんは他国に行ってますので、援軍要請を受けるのは、代表代理のヘラクレス様です。かの御仁であれば信用出来ますし、ファンガーデンからであれば、直ぐに兵を招集出来ます」

「しかし……魔王に知られれば……」

「そうですぞ! 下手に借りを作ってしまうとっ、どの様な報酬を要求されるか!」

「やはりここは、王都の軍を向かわせて様子を見ては如何か……」


 様子を見るか……確かに、戦況が分からぬままじゃと何も出来ぬのぅ。仕方無い、一人だけ此奴らの前に出すか。

 本来ならばドゥシャの役目だったのじゃが、彼奴を送ったのは儂じゃしの……帝国の内情を調べておった影ならば、表舞台でも役に立つじゃろ。


「──影、来るのじゃ」


 その影を思い浮かべて呼んだ。

 勿論、円卓でガヤガヤと問答を繰り返している者達には、聞こえぬように。


「…………来ぬの」


 いつもなら唐突に現れるのに、呼んだ影から反応が無い。


「──影、来るのじゃ」


 もう一度呼んでみた。

 二度呼ぶ事なぞ、産まれて初めての出来事であり、少しだけ不安になってしまう。

 そう言えばあの影、小さい子供を保護したと言っておったな……儂、無視されとる?


「うむぅ、影やーい」


 呼び方を変えてみた。

 じゃが……やはり来ぬの。王都に居る筈なのに、何故さっさと来ぬのじゃ。


「誰か城下に向かわせ──『何の様だ女王』っ、背後から急に現れるで無いわ!!」


「さっさと用件を言え女王」


 物言い! 此奴の物言い! ドゥシャの教育受けておるのじゃろ! 

 どうなっとるんじゃ!?


「げふんっ、お主を表舞台に出す。今日からお主は、アレスと名乗るが良い」


「丁重に断る」


 ふぇ……此奴何…断りおった?


「これは命令じゃぞ、何故断るのじゃ……」


「表舞台に出てしまったら、アイツの教育が出来ないからだ。あのまま雲に入れてしまったら、直ぐ死んでしまうからな」


 アイツ……保護した子供の事じゃな。

 影自ら鍛えるとは、そっちの方が致死率高いと思うのじゃが。


「これは王命じゃ、断る事は許さぬ。帝国が攻めて来ておるから、さっさと情報を彼奴らに伝えよ」


「それを先に言え。私は今日からアレスと名乗れば良いんだな? 教育中の娘は私の養子にするが良いか?」


 急に何じゃこの影……あぁ、そう言えば此奴ドゥシャに、帝国の長男を暗殺させろと進言した影じゃったか……暗殺を許可しとけば良かったわ。


「構わぬ……好きにせよ。お主の立場はドゥシャの下位ではあるが、近衛副隊長兼子爵級の待遇としてやる故、さっさと向こうで説明せい」


「分かった」


 そう言うと、元影となったアレスは、円卓へと向かって行った。

 ふぅ…地味に疲れたの。

 じゃが、実際に帝国を探っていた影ならば、地理に詳しく、戦況把握にも役立つであろう。


「貴様ら、無駄な問答をせずさっさと行動しろ」


「なっ、誰だ貴様!」

「いつ入って来た!? 兵は何をしておる!」

「陛下! お早く退室を!」

「衛兵! 衛兵っ、誰も来ぬだと!?」

「っ、皆さんこの方は陛下の側近です!」


 うんうん、初っ端から印象最悪じゃな。

 ラナだけは驚かなかったが、影の存在を薄々では有るが、勘付いておったのやもしれぬな。


「さっさとあの朕野郎の首を狩りに行くぞ。ファンガーデンに至急早馬を送って、ヘラクレスを寄こす様伝えろ」


 この元影……口悪く無いかの。

 ドゥシャの教育の所為じゃな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ