噂をすれば唐突に
黒姫がやらかしてから数日が経ち、水路作りも順調に進み、残るは雨などで増水した時の為の堤防作りどなっている。
水路作りは至って簡単だった。
俺が空間収納で地面をくり抜き、和土国の職人達が穴の両側面を崩れない様に石や砂利等で補強して、それを延々と伸ばして行き、後は川と水路を隔てた土をくり抜けば、水路となる。
唯一の問題が、増水時の水害対策。
流石に異世界でダムを造るには、コンクリや鉄骨、機材等、何もかもが足りないし、なりより……造り方が分からない。
と言う事で、川と水路の間に開閉式の水門を拵えて、増水時の水の流水を減らすと共に、水路の両端に盛り土をして石を積み、簡易的な堤防を作っています。
「こんな時に、コンクリがあればなぁ」
「パパ、コンクリってなあに?」
そういや……コンクリって何で作られてるんだっけ……土木建築専門家じゃ無いから分からんな。
「パパ、コンクリってなあに?」
ミユンが二度聞きしてくる……どう答えるべきだろうか。
「……いつか来るであろう、未来の素材……だろうか」
「曖昧なの! 物凄く気になるの!」
和土国に漆喰なるモノがあったから、マジでいつか作られるんじゃないかな。問題は石油製品だろうけど……どうだろうか……もし異世界に石油があって、活用方法が分かれば、一気に時代が進むんじゃないか?
「パパ! また別世界に行かないの! 土を出して下さいな!」
「へいへいミユンの姐御、空間収納ほいっと」
因みに俺は、四六時中ミルンかミユンに文字通り張り付かれ、この様な作業中であっても、ミユンが肩の上に乗ったままなんです。
黒姫にはミルンが齧り付いており、お琴のお稽古部屋へ連れて行っていた。
黒姫……酒呑めないからって、物凄く不貞腐れて居たからなぁ。
「野郎ども! 作業開始なの!」
「「「へいっ! ミユンの姐御!」」」
ミユンの人気は相変わらずだ。
妖精は特定のスキル持ちにしか見えないが、精霊で、尚且つ実体が有るミユンならば、見放題崇め放題と言う、和土国民からしたら神様的な存在からの指示指導。
皆んなニコニコ笑顔でミユンに従ってて、正直言って怖いです。
洗脳? してませんって。
皆さん傘音技信奉者だから、傘音技が信じている精霊ミユンも、信奉の対象なんだろうさ。
「精が出ますわね流様、ミユン様」
「また見に来たのかよ、まぁこんな感じだ。後二、三日もすれば『パパ! 水路は明日で終わらせて、明後日からは畑を見るの!』……だそうだ傘音技」
ミユンは早く土を弄りたいんだな……せっかくのんびりやってるのに。
そういや、東の国々って案外平和なのな。
未だ戦続きの国々ですって、ドゥシャさんから聞いていたけど、戦の気配なんて無いし、平和そのものじゃん。
あー和土国来る前の和州だっけ……あそこは何か、物々しい感じだったなぁ。
魔王に襲われた生き残りが逃げた村? だったっけ……傘音技に言ったかな?
「なぁ傘音技、和州国って知ってるか?」
「存じておりますわ。我が国と国境を交える、愚か者の巣窟に御座いますね」
辛口だなぁ……まぁ、ケモ耳達を奴隷扱いしている国だし、分からんでも無いが。
「和土国に来る前、間違って和州国の村に行っちゃってな……何か村一つが、魔王に潰されたって言ってた奴が居たのよ」
「っ、左様ですか……」
何だ……傘音技の顔色が変わった?
「魔王ってさ、そんな易々と獲物を逃すのかねって思ったな」
「…………を……」
んっ? 何か言ったか?
「速やかに戦の準備をっ! 黒子!!」
「ははっ!」
「和土国国境沿いに陣を……いえ、近隣の村々へこの町に避難する様伝令を! 急ぎなさい!」
「御意っ!!」
何事だよ……ミユンも不思議そうに見てるじゃん。
「どうした傘音技? 何でそんな焦ってんの?」
「汗だらだらなの、お着物が濡れ濡れ……」
「流様が来られる前と、滞在された日数、国境からの連絡が無い事を考えれば……既に壊滅か、良くて応戦中と言ったところでしょうか……」
「和州国が攻めて来るのか?」
「それならばどれ程良いか……和州国程度なら、如何様にも対処出来ますので」
和州国って弱いのか?
和土国の兵も……結構弱かったけど。
和州国じゃ無いとしたら……まさか魔王?
「えっ、魔王来るの? 何で?」
「流様が仰られていた通り、魔王が村を襲ったなら逃げ出せる者など居りません。もし逃げ出せた者が居るのなら……それは、敢えて逃したと捉えるべきですわ」
敢えて逃した?
何でそんな面倒臭い事を……遊びか?
「東の魔王と言われる六体の内、そんな事をする魔王といったら……っ、彼女でしょうね……」
「彼女? 知ってる魔王なのか?」
「知ってますわ……この大地を、草木も生えぬ地と変えた、厄介な魔王ですもの」
あぁ……やっぱりこの土地、そう言う事だったのね。どうりで、雨降る土地なのに変だなと思ってたんだよ。
「パパ……あそこの雲さん変な感じなの」
「どうしたミユン、雲が変?」
ふむ、方角的に……国境越えた辺りかな。
確かに、普通の雲より若干紫っぽい色味しているし、何だアレ……不味くね?
「流様!ミユン様! 急ぎ城までお戻りを!」
「おっおう、分かった」
「野郎ども! 撤収なの!」
「「「分かりやした姐御!」」」
異世界とは、長らく休まず投稿してきましたが、三日、四日程、更新をストップします!!
読んで頂いている皆様! 何卒! 今後も続けて行きますので! 許して下されぇ!!