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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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間話 酒は呑んでも呑まれるな.1



 ミユンに怒られ少し凹んだ夜、今度こそはと抜き足差し足忍足で、ギシギシと音を立てる床にビクビクしながら城の通用門まで到着。

 左右確認、見張り無し。

 後方確認、ミルンやミユンの気配無し。

 知覚を使うと、どうやってかミルンとミユンは察知する様で、今回は余計な事をせず、こっそりと行きます。

 だってあの灯り、絶対色街エリアだろ。

 昼はただの閑散とした長屋通りだったのに、夜になると、その場所だけが無駄に明るいんだぜ。

 ファンガーデンだと、『流入店お断り』って言うミルンやドゥシャさんの妨害が有るけど、ここは他国っ……行かない訳にはいくまいて。


「ふぅ……追跡無しだな」


 何で城を出るだけでこんなに疲れるのか。

 いかんいかん、こんな場所で突っ立ってたら見つかってしまうぞ。 

 確か──前に食べた甘味処を曲がった、その先の通りだったな……狐耳のお姉さんは居るのだろうか。

 俺の勝手なイメージだけど、異世界色街=狐のお姉さんって感じなんだよなぁ。

 ファンガーデンにも沢山居るけど、着物姿じゃ無いし、洋装スタイルで胸当て装備だから、何か違うんだよ。

 尻尾は艶々で良いんだけど、絶対触らせてくれないし……ここか。


「はぁぁぁすっげ…………良い匂い」


 等間隔で設置された灯籠が通りを照らし、格子の中からも行灯だろうか。まるで虫を誘うかの様にゆらゆらと揺れ、ついつい足を運びそうになる。が、先ずは一通り店先の観察だ。

 店の清潔さ、女の子の表情、歩く男共の噂話等、それらを吟味して、店を決める!

 不衛生な店は話にならないし、女の子の表情でその店の格が分かるし、何よりこんな場所の男共の噂話には嘘が無い!

 

「さてさて、どこが良いかなぁ」


 格子窓の内側には、多種多様なケモ耳達が座り、肌を出してこちらを誘惑して来る者、弦楽器で興味を引く者、やる気なくだらだらしている者、目を虚に向けて来る者、ぷにっとのぢゃのぢゃしている者等、必死になって客を呼び込む者と、そうで無い者の差がハッキリしている。


 ここに入る者の理由は様々だろう。

 貧困から借金のカタに親に売らた、身寄りを無くして生きる為にやむ得ず、騙されて、多くの女性が、暗い過去を背負っているのだろう。

 中には好き好んで──と、ぶっ飛んだ理由の者の居るだろうが、格子窓の内側を見る限りでは少数だろう。


 俺は一度通りから離れ、近くの木箱に座り、空間収納から茶を出して、一休み。そして、来た道を引き返し、再度店先を確認。


 色っぽいケモ耳、弦楽器が上手いケモ耳、だらだらしている人、死んだ目のケモ耳、ぷにっとのぢゃのぢゃしてる黒姫……ぷにっとのぢゃのぢゃしてる黒姫……黒姫。


「……お前何してるの?」

「のぢゃっ!? 流なのぢゃ! 助けてたもう助けてたもうながれぇええええっ!!」

「……姿見ないと思ったら、まさか遊女に就職とはな。頑張って生きろよ……黒姫」

「行こうとするななのぢゃっ!? 我もよう分からぬうちに此処に居るのぢゃぁあああ!!」


 分からない内にって何だよ。

 黒姫なら簡単に出れるだろうに……何で違和感なくのぢゃのぢゃしてんだ?


「おっ、どうだい兄さん、誰かいい子でも見つけたかい?」

「客引きか? なぁあんた、このぷにぷにしてる奴、何でここに居るんだ?」

「兄さんあんた……こんな餓鬼が良いんですかい?」

「我は餓鬼では無いのぢゃっ!」

「黒姫は黙ってなさいな。で? 何でここに居るんだ?」

「兄さんその餓鬼の知り合いですかい? どうしやしょうかねぇ……本当は言っちゃ不味いんですが、ちょっとこっちに──」


 何だよ裏路地に来いって……襲って来たらセーフアースに送るからな。





 先ず最初に断言しておこう。

 黒姫は『美女』である。

 一日の大半を、『ぷにっと黒姫のぢゃ子バージョン』で過ごしているから分かり辛いが、大人バージョンはガチの美女である。

 頭の角を除けば、黒髪ロングの長身で、小顔の端正な顔立ち、目は凛々しくも妖艶、立派な御山とくびれた腰に大きめの尻と、すらりと長い御御足。

 多少歳は上で、性格に難ありだが、中身を知らなければ文句の無い、完璧な女性だ。

 そんな見てくれの黒姫がだ、居酒屋で酒を呑みまくり、酔った勢いで酒蔵に突撃して、片っ端から呑みまくった挙句、馬鹿みたいな姿で寝ていたらどうなるか。

 寝ている間に身包み剥がされ、見た目の良さから、そのままここに売り飛ばされたと。


「へい。しかも、姿が変わったと思ったらあんな餓鬼に……客もつかねぇし、店主も頭を抱えてんでさぁ。兄さん身なり良いですし、買ってくれんなら有りがてぇですがね」


 あいつ何やってんの……と言うか、攫われて売られただけじゃん。

 他国からの客人を誘拐して、花街に落とすって……大問題だなぁ。


「なぁ、客引きの人……間違っても黒姫に客の相手をさせるなよ?」

「はぁ……? 兄さんが買ってくれるんで?」

「違う……あいつが暴れたら……和土国滅ぶぞ?」

「ははっ、兄さん冗談いわねぇで下せぇ」

「頼むぞっ、俺は急いで傘音技に相談して来るから、黒姫の機嫌を損ねるなよ……」

「姫様? 何で姫様に……本気ですかい?」

「頼むぞ本気で!」

「えっ……本気…で……」



 本気も本気! 全力で城まで走りました!

 黒姫がまだ大人しい内に、早く解放しないと、ガチで滅ぶよ和土国がっ!



「俺……花街楽しみにしてたのになぁ……」



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