荒地緑化計画.2
草を刈り刈り……「空間収納!」
草を刈り刈り……「空間収納!」
草を刈り刈り……「空間収納!」
何だろう……草刈機になった気分だ。
ここ数日の間、緑化魔法で生い茂った雑草達を刈り刈りしてるんだけど、体力は大丈夫だがメンタルがやばい。
交易路を作っていた時よりかは遥かにマシだけど、ジアストールと違ってサボれないんだ。
だって後ろで、ミユン大先生が目を光らせてるからね。
「さっさと土を掘るの、ミユンの膝までの高さなの。そこっ! ぼさっとしてないで土を耕すの! 並行して進めないと、季節が変わったら実らないの!」
「「「へいっ! 姐御っ!」」」
うん、お前らカタギじゃ無いよね。
ミユンも何か、お着物が濃い緑に毒々しい花の柄で、結構派手になってるよ。
「パパっ! 早く作業を終わらせるの!」
「……りょーかいっ、空間収納!」
今逆らったら埋められそうな雰囲気だ。
はぁ……、夜に城下を散策しようとしたら、ミルンに見つかって行けなかったし、風呂に入ってたら傘音技が突入して来て、ミユンと睨めっこしてたし……おっさんでも溜まるんだぞ。
「今日はこんなもんか……次は水路を引かにゃならんな」
因みにミルンとアトゥナは、影さん護衛の下でお琴を習っている最中だ。あの宴の席で俺が感動していたのを見て、自分もやってみようと思ったらしい。
黒姫は……酒屋で呑んだくれている……アイツだけ遊んでるんだよなぁ。
「帰ったら……影さん達の中に放り込むからな」
兎にも角にも水路だ水路、確か川が向こうにあるんだよな……『知覚』っと、結構遠いぞ。今有る畑から拡張するか? いや、何か起きた時のために分けとくか。
どうせなら現代風に、人口川作りだな。
近くに川を通しておけば、水に困ることも無いだろ。
「おーいミユーンさんやーい! ちょっと川の方へ行って来るぞー! 『了解なのー!』うしっ、ちょっと釣りでもして、リフレッシュしますかね」
空間収納で雑草を刈りながら、川へと向かいます。リフレッシュタイムが待っているからな、さっき迄苦に感じていた草刈りも、なんだか楽しく思えてくるぞ。
「けど……草で先が見えないんだよなぁ。知覚有るから迷わないけど、こんな場所で奇襲受けたら普通に終わりだな……見張りかなんか知らんけど、出て来ないと死んじゃうぞー?」
────ガサッガサガサッ────
「やはり通じませんか……一体どの様な術なのか、興味が御座いますね」
影さんにアイアンクローされてた黒子さんか、何の様なのかね。
「それは秘密だな、バレて弱点知られたら終わるし。それで、今日は何の様だ?」
「……ただの休暇で御座います」
「こそこそと、俺の後を付いて来るのが休暇か」
「左様で御座います。私は釣りが趣味なので、ご一緒しようかと思いまして」
俺の独り言をバッチリ聞いてんじゃん。
知覚をデフォにしておくか? 気を張るから地味に疲れるし、作業中だけにしておくか。
◇ ◇ ◇
のんびりと草刈りしながら歩いて、大体一時間程の距離にある、見た感じ一級河川並みの大きな川で、何故か黒子と釣りをしています。
大きな岩の上に二人で座り、なんだろう……デートかな? 違うよね? だって黒子なんだぜ、顔も知らねぇよ。
「……中々釣れないものですね」
「そういうものだろ。こういう時にムグムグ…干し芋食べて、茶を啜って…ずずっ、のんびりするのも悪く無いしな」
「……私にはないのですか?」
「釣り道具以外何も無いのかよ、ほれっ」
和土国産の干し芋は中々美味い。
土壌汚染が無いところを上手く利用して、米、芋、葉野菜や、竹林から筍、小さな森では椎茸を栽培しており、町中では味噌蔵、醤油蔵と調味料も素晴らしい。
少し行けば岩塩が取れるみたいだから、もしかしたら、貴重な資源の奪い合いで、戦が起きているのかも知れないな。
「……やはり味が落ちていますね。小さい頃は、もっと甘かった」
「これでも十分甘いけど、ムグっ、土地の栄養が足りなくなってんだろな」
作物によっては、土を数年休ませないと酷い事になるけど、国土が小さいと休ませられないだろうな。だからこそ、傘音技の親父さんは農業に力を入れたかったんだろうけど、戦が続いていたらそれも難しいか。
「不毛な戦なんて、さっさと止めればいいのに」
「まお…流様がそれを仰られますか……」
「何か勘違いしてないか? 俺はやられたらやり返す派だけど、死ね死ねヒャッハーッ! みたいな戦闘狂じゃ無いぞ。そっとしておけば、無害なただの人……人?」
「何故そこで首を傾げるのですか」
「人……なぁ、魚食い付いてるぞ」
「話をっ、ふっ──(パシャァッ)一匹目ですね」
「良いな、鮎っぽい魚か……塩焼きだな」
「これは私の魚ですので、ご自身でお釣り下さい」
ケチな黒子だ……仕方無い、釣りに集中しますかねっ! 大量ゲットしてやるぜ!
「流様……もう帰りませんと……」
「まだだっ! まだ一匹もっっっ、あと少し! あと少し待ってくれっ!!」
釣りに夢中になり過ぎて、水路作りを忘れていました……ミユンにしこたま怒られたよ。