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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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荒地緑化計画.1




 傘音技珠代の要請を快く受けた俺達は、和土国領内にある耕作予定地を見に来たんだけど、何と言うか、カサカサお肌に厚化粧をして、それがヒビ割れたかの様な状態の大地だ。

 分かりやすく言うと……枯れた大地だな。


「戦の爪痕って言ってもな、これは酷く無いか?」


 死体が積み重なると、腐り果て疫病の素となり、それが大地に吸い込まれ、地下水に染み込み、厄介な連鎖の始まりとなる。

 汚染された水を汲み、それを大地に撒くと作物が育たず土壌が汚染され、それがそのまま地下水に影響を及ぼすと言った、地獄の連鎖。

 

「酷いお土なの! 雑草さんもいないの!」

「だよなぁ……これをどうするか」

「穴を掘っても楽しく無いの、虫さん干からびてたの」

「これミルン、この土をあまり触るで無いのぢゃ、何やら変な感じがするしのぅ」


 変な感じかぁ……確かに、こんなの乾燥地帯に見られる光景だわな。雨は降ってそうなんだけど、それ程大地が弱ってるのかね。


「どうでしょう、何か改善出来る手立ては御座いますか?」

「土を元気にしなきゃだけど、何で傘音技は付いて来たんだ? 代表なんだから普通留守番するだろうに」

「代表だからこそ、この目で確認せねばなりませんの。今までもずっと、そうして来ましたから」


 へぇ、立派なもんだ。

 ルシィなら、気になる事以外スルーするのに、しっかり国のトップしてんだなぁ。


「どうだミユン、どうにかなりそうか?」

「ミユンなら簡単なの! こんなのパパ一人でも十分癒せるの!」


 俺がか? どうやって……緑化魔法の正規の仕様か! そういや一回も普通に使ってないな緑化魔法……試すには丁度良いか。


「流様は大地を癒せるのですか!?」

「パパは世界樹の守護者なの。それに、精霊神の力も有した魔神様なの。パパが無理なら、ミユンにも無理です」

「そうなのか? そんじゃ、一日一回の緑化魔法っ試してみますかねっと──『緑化っ!』」


 おぉっ、いつもと違う感覚だなっ、これが普通の魔法の感覚なのか。奥歯に挟まった食べカスが、スルッと取れる感じだ。


「……何も起きないぞ?」

「パパの魔法って、範囲は無いの?」

「そんな事はない、半径十キロって言う縛りが有るぞ?」

「ならもう少し待つの、きっと奥から効果が出てると思うの」


 奥から……十キロ先か?

 あぁ、何か奥がわさわさしてるな。


「流様……何か不味い気がするのですが……」

「そうか? 何かわさわさ来てる感じだけど」

「パパの魔法が強すぎて、大地がビックリしてるの。あの感じだと……パパの身長より大きい草なの」


 へぇ……そりゃぁ不味いな。


「一旦馬車まで退避しとくか」

「それが良いの、あの勢いだとあんな感じでお空に飛ぶの」


 あんな感じ?

 あれっ、黒姫とミユンどこ行った?


「草の所まで行くの──!」

「遅いのじゃミルン! 我が先につぎゅっ────!?」


 おぉー草が急に生えて、黒姫の顎を撃ち抜いたぞ。前傾姿勢だったからモロに入ったし、草って纏まると凄いんだなぁ。


「黒姫飛んだの……草の呪いなの!」


 ズシャアァァァッ──『ぐふぇっ……』

 草に負けるのぢゃ子って、しかも駆けっこで大人の姿になるなよな。


「ミル──ン! 黒姫担いで馬車までダッシュしなさいな──! 一旦避難だぞ──!」


「分かったの──っ! 黒姫の足持ってっ、走るの──!!」

「なんじゃっ今の衝撃わっ──!? ミルン何をして(ゴッ)のぐっ、止まらぬかミル(ゴッ)ぬわっっっ、何故引き摺るのじゃぁあああっ!」


 大人姿の黒姫デカいからな、ミルンじゃ担げなかったか。


「ほいほい退避退避、影さんとアトゥナがいる馬車まで急げ──」

「……流様は急がないのですね」

「俺、走りだけは速いからな。あそこの馬車までなら一瞬でつくぞ?」

「本当に……流様は理不尽の塊の様な存在ですわね」

 

 失礼だな、理不尽なのは俺じゃ無くて、あそこで引き摺られてる黒姫みたいな奴の事を指すんだぞ。


            ◇ ◇ ◇


 はい、緑地化成功しましたっ、拍手!


「ずずっ…なぁ流のおっさん……」


 いやぁ、気持ち良い緑が溢れる場所! 清々しいぜっ! お茶も美味いっ!


「アトゥナ殿、察してやるで御座るよ」

「でもさぁ……これ……」


 緑豊かな草原かな?

 周り草で見えないけどねーはっはっはっ。


「お馬さん美味しそうに草食べてるの、ミルンはお馬さんを美味しく食べたいの……じゅるりっ『ヒヒッ!?』」

「ミルンお姉ちゃん駄目なの。ここのお馬さんは痩せてるから、美味しくないの『ブルゥッ』」


 さてっ! これなら土壌も良くなって、畑を作れば豊作間違い無しだろ!


「これは……雑草ですわね……」

「家畜の餌にはなるが、これでは耕すのも一苦労なのぢゃ」


 良しっ、仕事も済んだし報酬貰って帰るか!


「と言う事で、報酬貰ったら帰るわ。雑草狩り頑張れよ! 傘音技っ!」

「この巨大な雑草をどうしろと言うのですか!?」

 

 ですよね──、家畜の餌にするにしても、俺の身長の二倍は有る雑草だから、運ぶのも一苦労だろうな。


「えー、駄目か?」

「駄目っ、では無いですが! 流石にこのまま放置は酷くありませんか流様!」


 でもぉ、ちゃんと土壌は良くなったぞ?

 ちょっと長い雑草が、半径十キロの円形に広がってるだけだし、後は俺達じゃ無くても出来るだろ?


「パパ! これじゃあ作物育たないの! やると決めたら最後までやるの!」

「ミユン偉いの! 雑草刈り刈りならミルンにお任せ! 魔法で切るの!」


 ミルンとミユンはヤル気全開だなぁ。


「仕方無いか……傘音技、数日はかかるだろうから、泊まらせて貰うぞ」

「それは勿論、大歓迎に御座いますわ! 皆様が飽きぬ様、贅を尽くした御馳走を毎日用意致します!」


 だから顔近いって、何か(パァアアア)って後光がさすかの様な笑顔だけど、眼の奥がドス黒いんだよ。


「しっかりとお持てなし致しますわ……ボソッ」

「今何か言ったか傘音技?」


「お父さんに夜這いかけたらお胸千切る」

「パパの横には私が居るの、来たら埋める」

「ほほほっ、そっその様な事は致しませんよミルン様、ミユン様っ」


 いつの間にか二人が傘音技挟んでるよ。

 夜這いに来られても、マジで二人が止めるからな……夜にこっそりと城下散策して、店を探してみるか。

 俺だって男なんだ、仕方無いだろ。


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