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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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宴会珍会歓迎会.1




 和土国の兵達を玉潰し、生埋め、強制脱毛をしている最中、和土国の暗部と思われる黒子が出迎えに来た。

 その後ろを某RPGの如く付いて行き、本丸に聳え立つお城に案内されると思っていたら、何と罠有り隠し通路に案内され、そこからお城に向かった。

 普通逆じゃね、と思わなくも無かったが、どうやら正門には、知られたく無い罠か仕組みが有る様で、そのまま何事も無く出入口に到着し、ゆっくりとその扉が開かれる。

 

     ────ガコッギィィィッ────


「それでは皆様、どうぞお上がり下さい」


 その先に広がっていたのは────


「「「ようこそおいで下さいました魔王御一行様! 和土国の宴、是非御堪能下さい!!」」」


────だだっ広い大部屋に、まるで花街の高級店の如く佇む着物の女性達と、畳の上にはこれまた漆塗りの様な長テーブルに、色とりどりの食材が並んでいた。


 これは正に、無礼講の宴の席っ!

 何をしても笑顔で許される、最高の宴っ!

 上座の席は空席で、しっかりと六席有る。

 一席は傘音技が座ると考えても、しっかりとアトゥナの席が用意されているのは有難い。


「ささっ、皆様此方へどうぞ──」


 おぉっ、これぞ女将って感じの凛とした雰囲気に低姿勢の物腰っ、気分出て来たぁっ!


「お父さんのお顔酷い!?」

「パパっ! 正気に戻るの!」

「俺は正気だぞ二人共っ! こんな宴っ、日本で一度も味わった事無いからな! 楽しむぞ!」

「流のおっさん……はしゃぎ過ぎだろ……」

「そう言うで無いのぢゃ。流にも何か、思うところが有るのぢゃろうて」





 上座に座ると、直ぐに右後ろからそっと──『どうも、奈菜々と申しますぅ。先ずは一献、ささっ、どうぞー』

 こんなん初めて言われたわ。

 地味に嬉しいな。

 小さなお猪口に並々とお酒が注がれて、間違い無く清酒……泣きそうだ。


「──ととっ、溢れる(グィッ)っと……旨いな」


 旨すぎて、どんな言葉でこの感情を表すのかが分からない。


「甘いの! お酒じゃ無い?」

『可愛い御嬢様っ、それは甘酒と申しまして、御嬢様でも大丈夫な飲み物で御座いますよ……はぁ…はぁ…愛でたい……』


 何か……ミルンが速攻で着物美女の心を鷲掴みにしたぞ。可愛いだろミルンは、自慢の娘なんです。


「んぐっんぐっ、甘々、丁寧な作りなの」

『有難うございますっ!? このお羽根……まさか妖精様……』


 ミユンは逆に、着物美女が萎縮したな。

 ミユンは妖精じゃ無いんだけど……傘音技来たら教えるし、後で良いか。


「んくぅ〜っ、これは中々のお酒じゃ! ほれっ! もっと注がぬかや!」

『はっ、はいですぅ! どっどっどうぞ!』


 黒姫は……大人バージョン? 何かそれよりも幼く(御山が小さく)感じるから違うな。

 どうやら新人っぽい子が担当の様だけど、アレで黒姫は懐が深いから、問題無いな。


「あっどうも……」

『安心する、私も悪魔族。カツラかぶってるだけだから、そんなに構なくても大丈夫……』


 ほぅ、アトゥナの側には同族か……やっぱり顔似てるのな、種族特性か?


      ────パンッパンッ────


 ん? 何か始まるのか、女将が合図だしたけど。傘音技まだ来てないし……何だ?


「さぁ皆様、和土国が誇る舞踊、是非御堪能下さいませ!」


 ス──ッと奥の襖が開き、そこから続々と、芸者達が摺り足で進んで来る。一切のブレが無いその動きは、素人目で見てもちょっと怖い。


 日本のカラクリ人形みたいな動きだよなぁ。

 リアル横移動見てるみたいな感じ。


 そこからはもう、何か凄かった。

 異世界に来て、初めて弦楽器を聴いた。

 その独特な音色の中で、優雅に舞う芸者達。

 その中で一番に目を惹くのは、中心にて扇を持ち、まるで──今正に敵を切り裂かんと言わんばかりの、体の運びや扇の動きをしている芸者。

 ゆっくりとした滑らかな動きでありながら、何故か目で追おうとすると、一瞬だけど見失う動き。

 なによりその美しさ。

 傾国の美女とは、正にあの芸者の事を指すのだろう。

 腰まである長く、艶やかな黒髪をなびかせ、凛とした眉に、目尻と口には紅を引いて、元々が色白なのか肌の色に違和感が無い。

 着物の締め付けにも負けぬ立派な御山が聳え立ち、そこから下ると、更に立派な桃の形がくっきりと浮かんでいる。

 その芸者がゆっくりと、ゆっくりとこっちに歩いて来る。


 俺は息を呑んだ。

 心の臓がバクバク音を立てている。

 これは何だ……身体が熱い。


 芸者はゆっくりと近付いて来て、腰を低くし、俺の顔を見て笑みを作った。

 そして、俺の顔を両手で掴み引き付け、自らの唇とかさ『戯れにも程が有るのじゃ、酒に何を混ぜた?』ねかけたその時、黒姫がその芸者の頭を掴んで止めた。


「おっ……何だ今の……」

「流……お主、一服盛られたのぅ。魔神と言えども特定の薬は効く様じゃな」


 一服盛られた……だから息子がやたら主張して来るのか!?


「あっぶねぇ……何の薬だ? 媚薬か?」

「さての、それは此奴ギリギリッに聞くとしようかのぅ」

「割れるっ、頭割れちゃうっ、ちょっとしたお茶目じゃない痛痛痛っ!?」

「「「姫様っ! 離すのだお客人!」」」


「近付いたら潰すのっ」

「パパの唇は安く無い…動いたら魔物のご飯っ」


 ミルンとミユン、臨戦態勢じゃん。

 それにこの芸者達、今姫様って言ったのか? この黒姫に頭潰されそうになっている、物凄い美女さんを?

 マジかぁ…………良しっ!


「……黒姫、そのまま掴んでいろ」

「分かったのじゃギリギリギリッ

「ちょっとっ、本当に頭割れちゃうっ!」

 

 ふぅ……じゃあコイツが傘音技か。

 牢屋にぶち込まれ、兵達に襲われ、ようやく宴でわっしょいの気分だったのに、一服盛られたと言う訳だな。


「あっ、しゅっ守護者様!? 何を────」

「……手をわきわきっ、お望み通りにしてやるわぁああああああっ!!」


 部下共の前で──醜態晒して後世に伝えられるが良いっ!!


「いやぁああああああああ────!?」



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