和土国流のおもてなし?.1
はいこんにちは、小々波流です。
毎度毎度、どこに行っても、必ずと言って良いほどに決まった場所に入る、小々波流です。
「お父さんが、現実から目を逸らしてるの」
右を向くと石壁で、左を向いても石壁で、後ろを向いても石壁と言う不思議なお部屋だね。
「大丈夫なのミルンお姉ちゃん、直ぐ元に戻るの」
前を向くと立派な鉄格子があって、向かいの部屋にはミルンとミユンが居て、二人してこっちを見て来るんだ。
「床が冷たいのぢゃ……暇なのぢゃっ」
ぷにっと黒姫はどうやら右のお部屋にいる様で、冷たい床に腹を立てているな。
「御免……俺の所為で……」
アトゥナは左のお部屋か。ミルン、ミユンを除いたら、一人一部屋で中々の好待遇だ。
トイレ付き(穴)、シャワー無しだが、朝昼晩と三食付きの簡易ホテル! 勿論出入りは不可の手枷付き!
「せっかくの着物が汚れたの……あの門番、次会ったら股間を潰すの」
「ミルンお姉ちゃん、潰した後に土に埋めるの」
しかも今回は俺だけじゃ無い!
全員漏れなく牢屋でまったりタイムだ!
「いつも一人だったからなぁ。ラクレル村や、王都の牢屋が懐かしく感じるぞ……」
「流、お主何回牢屋に入ってるのぢゃ!? びっくりするのぢゃ!」
「何で領主様が牢屋に入ってんだよ……今もだけど」
それはな、色々あったんだよ…色々な。
にしてもまさか、他国に来た日に牢屋にインされるとは……今回は普通に挨拶しただけなのに、そんなにアトゥナが怖いかね……。
あの時、アトゥナのカツラがズレて無かったらなぁ────
「立派な門構えだな、正に〇〇城だ!」
「お父さん、どうやって攻める?」
「ミルンお姉ちゃんが攻める気満々なの……」
さてさて、どう攻めるか……じゃ無くて、どうやって傘音技に会うかだな。取り敢えずあそこの門番に聞いてみるか
「すみませーん、傘音技さん居ますか?」
「そこで止まれ! 何奴だお主っ、姫は貴様等の様な者とはお会いせぬ! 早々に立ち去られぃ!」
何か捲し立ててくるなこの門番。
何者だと聞いておきながら、何で確認せずに立ち去れって言うんだよ……馬鹿なのか?
「西のジアストールから来た小々波と言う者なんだが、傘音技珠代の招待でここまで来た。これが招待状だ」
「何だと……確認させる! おい! 誰かこの文を代官に届けよ!」
「ははっ、直ぐに!」
姫様にじゃ無いのかよ。あと、俺今ちゃんとブローチ付けてるよな……意味無いじゃん。
「なあ門番さん、この妖精のブローチ意味無いのか?」
「何だそれは! 確かに我が国の模様だが、それだけでは中に入れられん!」
マジで意味無かった……帰ろうかな。
帰るだけなら直ぐ出来るし、町で米でも買い占めてからでも良いか?
「来た意味無いの……ご飯楽しみだったのに」
「こんなお国居る意味無いの、帰って畑を弄りたい」
ほら、二人が残念そうにしちゃったじゃん。
傘音技の奴、何がいつ来ても良いだよ、どう見てもアウトだろこれ。
「まだ中に入れぬのかや、一休みしたいのぢゃ」
「俺の肩の上で休んでるじゃ無いですか……」
俺も畳の上で一休みしたいぞ。
あっ、アトゥナの奴、さっきの駕籠揺れでカツラズレてるじゃん。
「なぁアトゥナ、カツ────」
「そこの女っ! その髪の色、その眼、貴様悪魔族かっ! 悪魔族が何様だ! まさか──っこの城に攻め入る気か!? 出会え出会えぇえええ──っ! 此奴らをひっ捕えよ!」
「「「ははっ!!」」」
やっぱり捲し立てて喋る奴だな。しかも、何かわらわらと出て来たぞ……これはアレだ、いつものパターンだ。
「お父さん、こいつら潰す?」
「この程度なら一瞬なの、殺る?」
「まぁまぁ、ここは大人しく捕まろう。間違い無くいつもの場所だろうし、楽しもうぜ」
「流が冷静なのぢゃ!?」
「何だよっ、俺何もしてないだろ!」
────こんな感じで来ました牢屋っと。
何だろう……このままだと、各国の牢屋コンシェルジュに成れそうな感じだよな、不名誉な資格だけど。
「それで流や、この状況どうするのぢゃ」
「そうだよなぁ……ぶっちゃけ会う気も失せたし、このまま帰るのも有りかな」
「潰して帰らないの? いつものお父さんなら、ヤられたら地獄に落とし返してるの」
そうなんだけど、流石にこの城は壊したく無いし、他国だから穏便に帰りたい。なんだったら、米だけ掻っ攫って帰りたい。
「パパのお顔が盗賊のソレなの」
「悪いお顔してる……」
「違うぞ二人共、これは楽しんでる顔だ」
だってわざわざ遠くから来たのに、早々に牢屋に御招待って何だよ……せめて待合室とかにしろよ。
「貴様等……我等が見張っている前でその態度っ、馬鹿なのか!? 貴様等は馬鹿なのか!?」
そういや見張りが二人居たな。
だって見張り何て意味無いんだぞ?
「ほっ(バキッ)柔い手枷じゃのぅ」
「もちゅもちゅ……取れたの!」
「ふぬっ(バキャッ)粉々にした!」
「ほい『空間収納』で取って出してポイだ」
「「「えっ……」」」
何でアトゥナまで驚いてるんだよ、こんなん拘束の内にも入らないぞ。手枷をするなら前じゃ無くて後ろ手にして、出来るなら指錠もした方が良いな。
「さて皆んな、傘音技探しと行こうか……」
「落とし前つけさせるの!」
「埋めて行くの!」
「物騒なのじゃ……早よ休みたいわ」