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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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古き良き和土国.7



『有難う御座いました若様、今後ともご贔屓に!』と、店主や番頭さんに見送られ呉服屋を後にした俺達は、和土国代表の傘音技を探して町をぷらぷらと散策していた。


「大体見回ったな……やっぱりあそこか?」

「お父さん、あのお城攻めるの?」

「ミルンお姉ちゃん物騒なの、攻めるじゃ無くて遊びに行くの」


 うん、遊びには間違って無いんだけどね。

 和土国って凄いよな。釘打ちしない木造家屋もそうだけど、あのお城がヤバい。


「ジアストールはお城って感じだけど、あそこのは『〇〇城』って感じだな」

「何が違うのか分からぬのぢゃ」

「俺にもさっぱりだぞ。流のおっさん、何でそんなに楽しそうなんだ?」


 くっ、この浪漫が分からないとは……だってあの見た目格好良いじゃん。洋風のは綺麗だ豪奢だと感じるけど、和風のは何か格好良いって感じがするんだ。

 しかもあの屋根にある飾りって、(しゃちほこ)じゃ無くて龍に見えるんだよ。そこのアトゥナの上でぷにっとしているドラゴンじゃ無くて、ちゃんとした龍な。


「……今なんか、貶された様な気がするのぢゃ」

「気のせいだ、ぷにっと黒姫」

「俺……いつ迄黒姫さん肩車するんだろぅ」

「アトゥナ……永遠にだ」

「えっ、それは嫌なんだけど……」

「嫌とはなんぢゃ小娘、我を運べる事を幸運だと思うのぢゃっ」


 幸運じゃ無いだろ、どちらかと言えば罰ゲームなんじゃないか?


「結構遠いな……走ったら直ぐ着きそうだけど」

「お父さん、あれなあに?」

「んっ、どれだミル──駕籠有るのかよ……アレに乗って行くか!」

「楽しそうなの! ムキムキした褌が居るの!」

「ミルンお姉ちゃん! あれはただの変質者なの! 騙されちゃ駄目です!」


 ミユンさん、変質者じゃ無いぞ。あの人達は駕籠舁(かごかき)で、大変有り難い存在だからな。あの人達居なきゃ、駕籠がただの入物になっちゃうぞ。


 と言う事で人生初の駕籠体験だ。

 暇そうにしてるし、三組居るから全員乗れるだろ。


「よっ、駕籠舁(かごかき)の兄さん、あそこの城までお願いしても良いか?」

「いらっしゃい! 大丈夫でさぁっ、見ての通り暇してるからな! お前らっ! お客人を運ぶ準備だぁあああっ!」

「「「へい兄貴っ!!」」」


 うわぁ……暑苦しい。


「暑苦しくて気持ち悪いの、ぬめってしてそう」

「ミルンお姉ちゃんに同意します」

「気持ち悪い奴等なのぢゃ」

「俺は気にしないけど……御免、やっぱ無理」


 お前等……もうちょっとオブラートに包んで投げてやれよ、駕籠舁(かごかき)の兄さん達テンション下がってんじゃん。


「……良いんでさぁお客人、俺等は所詮、筋肉しか取り柄の無ぇ男衆ですから……」

「「「兄貴っ、泣かねぇでくだせぇ!!」」」

「……うん、さっさと乗せてくれ」


 さてさて、駕籠の乗り心地はどんなもんかなぁっと……何か歩く人達の目が……可哀想な人を見る目? 何でだ?


「それじゃ行きやすぜっ! しっかり紐を握っとって下さいや!」


 まぁ良いか、俺は楽しむだけだからな。





 そう思っていた時期もありました。

 うん、駕籠が廃れた意味が良く分かったよ。

 そういやさっき、牛っぽい魔物が人乗せた台車引いて歩いていたわ、二足歩行で。


「「「えっほっ! えっほっ! えっほっ!」」」


 そりゃあそうだよね、運べる人数多いし、その分稼ぎ易いし、何より人力じゃ無いから楽だよね。


「「「ほいさっ! えっほっ! ほいさっ!」」」


 そして何より「うぷっ、気持ち悪っ」揺れ過ぎるんだよコイツらっ!?


「「「えっほっ! ほいさっ! えっほっ!」」」


「おどぅざん…よっだ…」

「ぎもぢわどぅいの……はぐの……」

「我慢だ…二人共……お金払っちゃったから…降りたら勿体無い…うぷっ!?」


「「「もう直ぐ着きやすんで! えっほっほっ!」」」


 声を揃えて言うなよ頭に響くっ、別の駕籠に乗ってる二人は大丈夫かなっ、マジで二度と乗るかこんなもんっ!


            ◇ ◇ ◇


「また利用してくれやお客人! それじゃあ失礼しやすわっ! 行くぞお前らっ!」

「「「へい兄貴っ!!」」」


 そう言い残して、駕籠舁(かごかき)の兄さんは去って行った。城近くの道沿いに有る長椅子に俺達を放り投げてな!


「あぁ……まだ頭が揺れてる…大丈夫かミルン、ミユン」

「あと…少しで…吐いてたの……地面大好き…」

「ミルン…お姉ちゃん…に……同意なの……」


 二人共椅子の上で死んでるな……そういや黒姫とアトゥナは大丈夫っ、じゃ無かったな。


「俺…もうあれ見たく無い……」

「この世からっぷ…消すのぢゃぁっぷっ……」


 いやいや、もしかしたらアレは只のモグリだったんじゃ無いか……プロなら揺れ無く移動出来たりとか……もう乗りたく無いから良いか、考えるのやめよう。


「城門は……あそこだな、少し休憩してから行くか」


 今立ったら、ふらついて危ないからな。

 茶でも飲んで、込み上げて来た胃酸を落とすとしますか。


「ミルンにも…下さいな……」

「ミユンも……飲みたいっ」

「分かってるよ、今用意するからな」


 さっき立ち寄った甘味処で、茶葉が売っていたから買っておいて正解だったな。緑茶だから口の中がスッキリするし、飲み易いんだよ。

 お湯は流石に無理だから、ぬるいお水で何とかするしか無いか……もう良いかな?


「ずずっ……ふぅ、これで妥協するしか無いか。ほれ二人共、ちゃんと座って飲みなさいな」

「貰うの……んくっんくっ、ぷはぁっ! スッキリしました!」

「ずずっ、ミルンお姉ちゃん回復早いの……」


 流石ケモ耳ミルン、揺れ耐性も強いのかな?


「ほれ黒姫、アトゥナも飲みなさいな、スッキリするぞ」

「貰うのぢゃ…ずずっ、美味いのぢゃぁ……」

「流のおっさん、有難う……ずっ…黒姫さんの反応って、何か……おばちゃんみたいだな」


 そりゃあ年齢不詳ののぢゃ子だからな、今居る誰よりも御高齢だし、下手したらリシュエルより……実際何歳なのやら。


「さてさて、頭もスッキリしたし、少ししたら城門へ行くとしますか」

「ミルンは元気です! 直ぐ行けるの!」


 ミルンさんや、他は皆んな死に体だから、もう少し待ってあげようね。



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