古き良き和土国.4
さてさて、和土国の通貨を調べ無いとな。
ぼられるのは嫌だけど、酒器割っちゃたし、勉強代で多少抜かれる覚悟はしないといけない。
「そんじゃ、その金二キロの塊を幾らで買う?」
この質屋の店主、金塊見た時は驚いて口を滑らせたけど、直ぐにこっちを観察し始めたな。
「……おめえさんら、その服装……この国の者じゃねえな、何処から来やがった」
そりゃこの見た目だと分かるわな。
今の俺達の姿、どっちかと言うと洋装だし、この和土国の着物っぽい服と違うもん。
「西のジアストールからだ。和土国の代表、傘音技に食事会に誘われてな、ついでに観光しようと思っても先立つモノが無いから、こうして質に入れに来たんだ」
ここは嘘を吐かずに正直に答える。
この服装で下手に嘘吐くと、後々面倒になりそうだし、傘音技の名前で反応見たいからな。
「傘っ、姫様の客人か……それにしてはお付きの者が少ねえが……」
「お付きの者はアトゥナだけだな、この小さい三人集は俺の家族だ」
「お付きの者が一人──っ魔っ!? いや、すまねぇ何でもねぇ」
おぉっ、アトゥナを見て一瞬逃げ腰になったけど持ち直したな、流石商売人。
「ふぅ……なんであんたらが、悪魔族を連れてるのかは聞かねぇ。そうだな……この金塊だと、金板五十枚の価値があるから、金板四十枚でどうだ?」
金板四十枚か……価値が分からん。
「お父さん、それで良いと思うの。この人嘘を吐いて無いの」
「アトゥナにビビってるの、漏れたら掬います」
ミルンさんや、何を掬うって?
おっさんも不安になって股を気にし始めただろ、見てて恥ずかしくなるわ。
「漏れる前に我の角で栓をすれば良いのぢゃ、串刺しの刑なのぢゃ」
黒姫、それはただの拷問だ。
お前の角、ドリルみたいになってるから、栓どころか掘削して血みどろになるぞ。
「座薬の記憶がっ、俺は二度と御免だ!」
座薬がトラウマになってるじゃん、風邪をひかなきゃ良いだけだぞアトゥナさん。
「おめえさんら……旅芸人か何かか?」
「そんな訳あるか! なんか……面倒臭くなって来たし金板四十枚で良いや。あぁ、金板は三十九枚で、一枚は細かいので頼む」
「はいよ、じゃあ金板三十九枚、半板九枚、銀板九枚、銅板九枚、石板十枚だな」
ほうほう、これをジアストールの貨幣に照らし合わせると──金貨が十万だったから、金板と同価値と仮定して、半板一万、銀板千、銅板百、石板十の値か……分かりやすいな。
「ほらよっ、袋の中に入れてるから、ちゃんと確認してくれ」
空間収納あるから袋要らないんだけど、巾着袋じゃん。どれどれ中身は──金貨じゃん、板の要素が一つも無い!?
「板じゃ無いのかよ!? 金貨じゃん!ただの金貨じゃん!」
「お父さんが急に怒ったの!?」
「パパっ、少し抑えるの! どうしたの?」
だって金板って言ってたのに金貨だぞ! 小判とか想像して少し楽しみだったのにっ! 少し平べったいだけの丸い硬貨だっ! 硬貨を持つ手がわなわなするぞぉっ!
「それで怒るって変わった奴だな。金板って言うのは昔の名残みてぇなもんだ、今は金貨って言う奴の方が多いけどな」
最初から金貨って言えよ、期待して損した気分だぞっ。
「流は相変わらずの変人なのぢゃ、貨幣などは時代が過ぎれば勝手に変わるのぢゃ」
「流のおっさん……変なところで怒るよなぁ」
くっ、女子女児合わせて四人だと俺の味方が居ないっ、俺は小判が見たかったんだ……外の風景が御侍の時代の物だもの。
「あぁ……無駄に疲れた……何か食べに行くか。質屋のおっさん、また何か有れば来るわー」
「おうよ、何か良い物あれば来てくれや、毎度っ!」
毎度って言うの久々に聞いたな、やっぱりこの国、異世界人関わってるんじゃね。
「甘味が良いの! さっきから匂いする!」
「流石なのミルンお姉ちゃん!」
「小腹が空いたし食べるのぢゃ」
「食い気凄いな、俺も食べて良いのか?」
「アトゥナも食べて良いぞ、除け者に何てする訳無いだろ。ミルンっ、その嗅覚で俺達を案内してくれっ」
「了解お父さん! また肩に乗ります!」
よじよじと俺の肩へセットインっ、ミルン!
そういや、結局黒姫の奴アトゥナから降りて無いな、アトゥナの腰大丈夫か?
「ほれっ、ちゃんと歩くのぢゃ」
「……分かってるよっ」
黒姫の乗り物になってるじゃん、肩車って結構、足腰に来るからなぁ。早く茶屋か何処かで休ませよう。




